第17話嫉妬②
久しぶりに輝は朝の生徒会へ柊と入っていく。
柊と会えなかった時は、中庭か図書室で時間を潰していた。
委員会も週に1回あるくらいだし、それがないと柊と話す機会もなかった。
学年も違うし、当たり前のことなのだが、久しぶりに話せた柊はのと時間が、嬉しくて胸の奥から温かさがじわじわと広がっていく。
相変わらず、生徒会室に入れば換気をして、椅子に座れば本を開く。
輝がその姿をなんとなく、見たり顔を伏せたりしていると、
「輝は、なんか趣味ないの?」
本を読んでるかと思えば、いきなり話しかけられた。
「趣味?何突然」
普通の会話なのに、いきなり鼓動が高鳴った。
「別に、いつも俺は本読んだしてるけど、輝って何もしないから」
「んー、音楽聞くのは好きだよ。あとは、映画も観に行ったりするし…」
「へー、映画って何観るの?」
輝は少し頬を赤らめて、誤魔化すように言った。
「洋画とか…」
「なに?洋画っていうだけで顔赤くしてるの?もしかして、観るジャンルが…」
「わぁぁぁ」
あたふたする輝に、柊は意地悪な笑顔を浮かべていた。
きっと、輝の反応を読んだのだろう。
誤魔化してもいずれバレるだろうし、それに、隠すことでもない。
「べっ別に恥ずかしくなんてないけど、恋愛モノが好きなんだよ」
言ってしまった。
恥ずかしくて目を瞑って下を向く。どうせ、笑って似合わないとか言うに決まってる。
柊はすぐにからかってくるから、そう思っていた。
「へぇ、俺も読む小説恋愛モノが多いから、そんな恥ずかしがるものでもないよ」
意外な柊の反応に、輝は顔を上げた。
柊は優しく微笑みながら本を読んでいた。
本当に綺麗な奴…
そう思ってしまった後に、頭を横に振った。
自分は何を考えているんだ。無理矢理生徒会に入れた天使のような見た目の小悪魔なのに、ふとした瞬間、その顔に見惚れてしまう。
「ねえ、輝。今度の日曜日空いてる?」
「あ、ああ。まあ、映画見にいく予定だったけど、なんで?」
「今[君への願い]って、エドワードの小説読んでるんだけど…」
「エドワードって、エドワード・リトルの?日曜日公開でそれ見に行こうと思ってた」
輝が興奮気味に話すと、柊は少し笑った。
「じゃあ、一緒に観にいこうよ。いい話だし、久しぶりに映画観たいって思える内容なんだよ」
「うん、いいよ。なんだ、天川先輩もそれ読んでたんだ。まあ、俺は小説読まないけど、あらすじで凄く気になってさ…」
夢中で楽しそうに話す輝をみて、柊は自然と微笑んでいた。
輝といる時は、愛想笑いではなく、自然と表情が綻ぶ。
やっぱり、可愛い奴だな。
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