第16話嫉妬①
久しぶりに、あの頃の夢を見た。
初めて素也と身体を重ねたあの日…
身も心もボロボロだった自分には、支えてくれる誰かが必要だった。
素也は、純粋で優しくて、本当に守ってくれる最高のパートナーになっていった。
付き合うなんて口約束はしたことがなかったが、自然と付き合っている気分にはなった。
柊が女の子に告白されれば、素也は不機嫌になる。それを面白かってからかうと、喧嘩になってしまうから、根気よく宥めるという技を身につけた。
穏便に時が過ぎればいい。
何もないことが一番だと、柊はおもっていた。
二人でいることも、中3になると素也が部活卒業と共に、増えていった。
共に受験勉強に励み、県立の高校へ一緒に進むことになった。
そして、今に至るのだ。
「なんで、今さら…」
夢を深く考えても仕方がないことだ。
柊は気持ちを入れ替えて、学校へとむかう。
その時ふと、輝の顔が浮かんだ。
自分に初めてあんな暴言を吐いてくる後輩。
でも、言われたことはちゃんとこなしてくれる、不良なのか真面目なのかわからない後輩。
今日は会えるかな…
最近、素也がバスケの最後の試合のため、誰よりも早く学校で練習したいと言って一本早めていた。合わせて一緒に行っていたが、特にやることもないし、柊的には無意味だった。
だから、今日はなんとなくいつもの時間に戻したくて、昨日素也にいつもの時間に学校へ行くことを告げていた。
そんなことを考えながら電車に乗ると、案の定、目を閉じてイヤフォンをしている輝が座っていた。
「輝、おはよう」
柊は輝の前に立ち、鞄を彼の膝に置いた。
その声と行動に、輝は目を覚まして柊を見た。
「天川先輩、おはようございます。てか、鞄重!!何が入ってるんだよ」
「教科書に決まってるでしょ」
そう、笑顔でいいながら、持ち手は掴んでいながら、鞄の重みはそのまま輝の膝にのしかかる。
「あれ?今日はあの先輩と一緒じゃないの?」
「ああ、素也?今日は一本早く行ったから」
輝は柊と二人だというこの状況に安堵した。
輝はなんとなく素也が苦手だと感じていた。生意気な後輩である自覚はあるが、何故か、あまり関わりたくないと思っていた。
「先輩たちっていつも一緒に行ってるの?」
「まあ、家近いしね。自然とそうなるよ」
柊はなんとなく、素也との関係を輝には知られたくないと思ってしまった。
輝も聞いといて「ふぅーん」の一言で終わらせてしまった。
きっと、何も考えてないだろうけど、輝が何を考えているのか知りたくなった。
柊と輝はそのまま学校で話しながら向かった。
徐々に気まずさもなくなり、自然に話せるようになった。
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