第14話柊と素也②
素也と素也の母親のが挨拶しにいくと、柊の父は笑顔を作って丁寧に挨拶をした。
柊も父親に習って笑顔を作る。
しかし、その笑顔が下手くそすぎて、素也はそんな柊の表情をみて泣けてきた。
「天川さん、この度はなんと申したらいいのか…いつも、小さい頃から仲良くさせてもらいまして、息子もケーキを作ってもらって一緒に食べたって…嬉しそうに帰ってきたり…」
素也の母親は泣きながら、思い出話を話した。それに笑顔で丁寧に相槌を打つ。
「お忙しい中、本当にありがとうございました名護さん、素也くん」
そう言って、微笑んでくれた柊の父親の顔がだんだん涙で溢れていく様をみて、さすがに辛くて目を背けてしまった。
柊もそんな父親をみて、堪えきれず泣いていた。
そして、お通夜と葬式が終わっていき、柊と素也が顔を合わせたのはそれから二週間後だった。
玄関のチャイムがなり、出ると柊がいた。
香典返しに来たらしい。
「久しぶり」
そう言って、微笑む柊は少し痩せかけているように見えた。
「よう、上がれよ」
この日は、両親も兄弟も出かけていて誰もいなかった。
「これ、この前はお通夜に参列してくれてありがとう」
そう言って、渡されたものを和室へと素也は持っていった。
それから二人は、素也の部屋で話すことになった。
中学に入ってから、柊が素也の家に来るのは初めてだった。
素也が部活に入り、朝練やら帰りの部活等で一緒に登下校することもなかったから、自然と遊ぶことも減ってしまったのだ。
「変わらないね、素也の部屋は」
「まあな、部屋にいてもCD聴くくらいだし」
本棚も漫画が大半を占めているが、途中からCDまで本棚に並んでいた。
あとは、ベッドと机があるくらいのシンプルな部屋だった。
「小学校ぶりかな。素也の家きたの」
「そうかもな」
なんだろう、久しぶりだからか素也は少し緊張していた。
それと、今気づいたが、柊の声もいつのまにか声変わりが始まっていて、少し掠れていた。
自分は身長が伸びるのが早かったからか、すでに声変わりは終わっていた。
いつのまにか、可愛いだけの柊は少し肩幅も輪郭も男性っぽくなっていた。
そして、中性的な顔立ちは色香もあり、何故か素也はドキッとしてしまった。
「こんなふうに、柊と話すこと久しぶりで、なんか緊張するな」
そんな言葉に、柊は笑った。
「何言ってんだよ。変わらないよ」
でも、その笑顔がまだ疲れているように見えて、悲しみがまた込み上げてくる。
たった二週間で、母親を亡くした悲しみを乗り越えれるわけないか、そう思うと、素也は柊を支えたいと心から思って、気づけば柊を抱きしめていた。
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