第13話柊と素也①
柊と素也は幼い頃から一緒にいた。
幼い頃の柊は本当に男の子なのか女の子なのか分からないほど、可愛かった。
母親似で、いつも保育園を迎えにくると、優しい笑顔で柊を抱きしめて、そんな二人の姿をみるのが、素也も好きだった。
自分の母親は、本当にごく普通の母親だったので、柊の家族がなんだか違う世界に住んでいるような錯覚に陥った。
柊は幼い頃から努力家だった。
小学校でも、鉄棒でできなければ、一人で公園で練習していた。
それに、気づいた素也は、運動が得意なので、柊に近づいてアドバイスをしたりしていた。
笑顔が優しいから他の児童にも好かれていて、男女問わず柊はみんなに好かれていた。
けれど、その笑顔は幼い頃から完璧で、崩れることはない。争い事がおきそうになると、柊がこれば、自分達の過ちに反省して、当事者たちは仲直りしてる。
そんな人の心を癒してしまう、天使のような子供だと幼い頃から言われていた。
しかし、そんな柊を中学に上がった時、不幸が訪れた。
柊と瓜二つの母親が病気で亡くなった。
幼い頃から、柊の家で一緒に遊んだ時も、柊の母は素也の分のケーキも作ってくれたりした。
もちろん、柊が素也の家に行った時も、家族同然に仲良くさせてもらっていた。
そのため、柊の母が病気になったと聞いた時も、素也も悲しくなった。
それでも、悲しい顔を素也に見せず、笑顔でなにもないように振る舞う柊に、素也はいつでもそばにいることを誓っていた。
いつか、柊が崩れてしまわないように、自分が柊を支えるのだと、心の中で誓っていた。
そんな日が訪れたのは中2の秋だった。
素也が家に帰ると、喪服を着た母親が待っていた。
「ひーくんのお母さんが亡くなったの」
その言葉に、素也も焦ってそのまま家を飛び出していた。
柊の家は暗く、灯りはついていない。
それは、みんな斎場へ行っていることを意味する。
「素也、いくよ」
そう言われて、素也は母親と一緒に斎場へ向かった。
そこにいたのは、泣き疲れたのか茫然と目を赤くしている柊と、優しそうな柊の父親の姿だった。
柊のお父さんは、エンジニアをしていていつも帰りが遅かったし、休みも少なかった。
そのため、素也でもちゃんと会うのはこの日が初めてだった。
家に行けば、家族写真があったので間接的に顔は知っていたが、ああ、こんな優しそうなお父さんとお母さんの血が流れているから、柊は天使のような優しい笑顔が作れるんだと改めて感じた。
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