第12話生徒会⑥
ぎこちなくでも、会話は学校にたどり着くまで続き、素也はそのまま部室へ向かった。
柊と輝はそのまま一緒に生徒会室へ向かった。
生徒会室につくと、軽く窓を開けて換気すると、椅子に座って小説を開いた。
輝もなんとなく、柊の前に座り顔を伏せてみる。
無音の時間も、何故か柊といても苦痛ではなかった。それどころか居心地がよくて眠ってしまいそうになり、ふと柊を見た。
涼しい顔して読書をする柊は、他の生徒には見せないような無機質なものにも感じた。
「先輩はなんで生徒会室にくるの?」
柊は言葉を選ぶように、少し困った笑顔を向ける。
「本当は、人とつるむの苦手なんだよ。だから、せめて少しでも一人で過ごす時間がほしくてさ…生徒会室って生徒会に入った者の特権だから。用事がなくても、鍵を借りてこの部屋にいることができる。最高の居場所だよ」
いろんな人から好かれてしまう柊は、本当は人付き合いが苦手なのか。
人当たりの良さと、カリスマ性があるのも、なんだか大変だな。
「ちょっと意外、天川先輩って誰にでも優しくて面倒見るのが好きなのかと思った」
「全然、一人が好きだよ。だけど、なんでだろう。みんなからよく声はかけられるけど…でも、見れなくはないから頼られたらそれに応えようとは思うよ」
「そうなんだ…」
ふと、一人という言葉に輝は引っかかった。
もしかして、自分がここにいることで、柊の安らぎの時間を邪魔しているのではないかと感じた。
でも、柊は優しいから、自分に出ていってほしいと言えないのかもしれない。そうおもうと、申し訳なくて、輝はそっと立ち上がり去ろうとすると、
「どこいくの?」
と柊が訪ねた。
「どこいくのって…一人の時間が大切だって言ってたから…」
「ああ、なんでかな。別に輝はいいよ。そんなに気を使わなくてもいいから疲れない」
そう言って、また本に目を戻した。
そう言われたら、輝もどこかへいく理由もなく、また座りなのして、顔を伏せて眠った。
そんな輝の姿を見て、柊は微笑みふと手を伸ばして輝の頬に触れようとした。
無意識に輝へ手を伸ばしている自分に気づき、輝の髪にかすかに触れて、ハッとして手を引っ込めた。
「無防備だな」
柊はまた、静かに読書を始めた。
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