第11話生徒会⑤
柊と輝は打ち解けたように、世間話をしながら駅へ向かった。
線が同じだったので、途中まで一緒に乗り、柊のほうが先に降りていった。
たった二駅しかない距離は、あっという間で物足りなさを感じた。
明日も学校いけば会えるのに、何故か別れ際の余韻だけが二人に残った。
次の日、朝の電車にゆられながら、イヤフォンをつけ、座って眠る輝。
電車が止まるのを感じながらも、目を覚まそうとはしなかった。すると、
「輝?」
その声に目を開けると、柊と素也が電車に乗ってきていた。
「先輩…おはようございます」
寝ぼけた声で、そういうと柊は笑いながら「おはよ」と言った。素也もそっけなくだが、挨拶を返す。
見た目は不良なのに、柊と素也と同じ電車に乗っていることに柊は驚いていた。
素也は朝練があるためいつも早めに学校へ行っていた。柊はとくにやることがあるわけではないが、生徒会室で一人でいる時間が好きで、早くきていた。
「輝も部活入ってるの?」
「いや、俺はそういうの面倒で…」
そうだよな。
分かってはいたが、ならなおさら輝が早く学校にくる理由が思い浮かばなかった。
「へぇ、なのに、朝早いんだね」
「人混みが嫌いだから、それなら早い電車のほうがこまなくていいかなって」
「なるほどね」
「天川先輩こそ、部活入ってないのに早いんですね」
その疑問に、柊は素也を見た。
さすがに、素也と登校するためにいつも早く来てるとは、出会ったばかりの後輩には話せない。
「朝、一人で過ごす時間が好きなんだ」
その返答に、素也は納得いかないような表情をしたが、本当のことを言う筋合いのないことも理解できる。
でも、何故か素也は輝が気に入らなかった。
柊と輝が話してるのが、無性に苛立ってしまう。
しかし、そんなことも口にすることはできず、必然と三人で学校へ向かう。
「素也、今日から部活紹介活動?」
「ああ、今年は何人入ってくるかなぁ」
「素也は、バスケ部なんだよ」
聞かれてはいないが、輪の中にいる輝への気遣いで、柊が話しをふる。
「へえ、背たかいですもんね」
見た目の普通な感想。
183cmある素也の隣を柊が歩いていると、柊も低くはないのに、女の子のように見えてしまう。
「先輩は中学の時から背が高いんですか?」
輝は素也のことをそれほど意識していないらしく、普通に話しかけてくる。
素也は輝のことをそんなに良く思っていなくても、自分には敬語で話す輝を無下にする理由もなく、自分も平然を装って大人な対応をするしかなかった。
「中二から175cm越えしてきて、気づいたら183になってたって感じ」
「いいよな、僕は174でもう止まっちゃったし」
悔しそうに柊がいった。
「二人とも俺より高いからいいじゃないですか」
そう言う輝は170だった。
夜遊びとかしすぎたのだろうかと、後悔するが、これ以上伸びる気もしなかった。
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