第10話生徒会④

柊は輝と帰ろうと誘った割には、口数が少なかった。それでも、涼しい顔して口許は微笑んでいる。


「なあ、なんで俺に構うの?」


ふと、輝が話しかけると、不思議そうに柊は輝を見つめる。


「輝が問題おこしそうだから見張りだって、伝えたはずだよ」


「そうだけど…その、生徒会入るのって選挙で選ばれるとか知らなかったから…」


あの時の角谷の目は、本当に選挙のために努力したのに、のこのこと転校してすんなり生徒会に入った自分が許せないのはよくわかった。


きっと、他の委員たちだってそうだろう。岩下は先輩だから大人な対応しているだけで、もしかしたら、内心は面白く思っていないかもしれない。


「そうだね、俺はね、今の生徒会じゃ退屈なんだよ。皆、俺のことを憧憬の的でみてくれるけど、それじゃあ、俺の独裁委員会になる。独裁者には、なりたくない」


なるほど。

自分にちゃんとした意見を言ってくれる人が中にいないことを、柊は知っていたんだ。


「独裁者ね」


「前までは素也…、名護が居たから話し合いが出来て、新しい発見ができたけど今はいないし」


「ああ、名護先輩と天川先輩って仲良いんですよね?」


「幼馴染だから。なんでも言い合えるんだよ、君はちょっと名護に似てる。昨日、俺にあんな歯向かう奴初めてで、面白いなって思ったんだ」


そう、屈託のない笑顔で柊は輝に笑いかける。夕暮れの桜吹雪が彼を包み、その笑顔は絵画になりそうなほど、綺麗だった。


見惚れてしまう。

今まで、こんな綺麗な人は男でも女でも見たことがなかった。


そりゃ、皆、彼と近づきになりたいだろう。

そして、気に入られたくて、話も合わせる。けれど、それじゃあ確かに退屈かもしれない。


「どうしたの?」


茫然と見つめているのがバレてしまい、輝は頬を赤らめながらも誤魔化すように話した。


「いや、桜吹雪って綺麗だなって…」


「ああ、ここはとくに桜100選にも選ばれてるらしいしね」


川沿いの桜並木。


それだけでも美しい光景に、柊がいるだけでさらに際立つ。


「あんたは変わってるよ」


こんなに皆から好かれているのに、自分を構ってくる柊。けれど、それはなんの下心もない関係で、つい、気が緩んでしまう。


「っはは、輝に言われたくないな」


そんな笑顔むけられたら、つられて笑顔になってしまう。


初めて笑う輝に、柊も胸が高鳴った。

思った通り、まだ幼さが残る可愛い笑顔。


身長だって、自分より少し低くて、何故か構いたくなる可愛い後輩。


今まで、後輩にも興味がなかった柊に、初めて手元に置いておきたい後輩ができた。



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