第8話生徒会②
次に挨拶するのは角谷だった。
「角谷玄太二年C組です!今期初めての生徒会なので、気合い入ってます!よろしくお願いします。あっ!書記担当です」
皆が拍手をして、玄太もやりきったように笑顔で座った。
次は会計の持田優三年生。
同じく会計の原内修二年生。
と、次々と自己紹介をしていく。
そして、輝の番になると、新参者を珍しそうにみるみんなの視線が輝に突き刺さる。
「えーっと、片桐輝です。突然生徒会に昨日入ることになりました。よろしくお願いします」
輝が挨拶をしても、前の人たちのように拍手はなかった。
当たり前だろう、突然連れてこられて入ったやつを、仲間だと思えなんて、無理に決まっている。
「いいよな、生徒会長に連れてこられて入るなんて、俺は一年から入りたかったのに、選挙で落ちたのに」
角谷が不服そうにそう言った。
そう、この生徒会は選挙制で入れる神聖な場所だと、この学校の生徒たちは思っていた。
みんなの憧れる場所に自分が突然入るなんて、受け入れてもらえるわけがないのだ。
「角谷くん、突然素也が辞めるって言って、人出不足だったし、ごめんね。勝手に決めて」
柊はうるうるした瞳で真っ直ぐ角谷と目を合わせる。
その愛らしい表情に年上でも、ときめいてしまうらしい。
角谷は動揺しながら「会長の責任じゃないです。すみません」と謝った。
この男、自分の容姿を十分理解した上で行動している。
策士にしか輝には見えなかった。
「そうだね、でも、天川が責任感じることないのに、まあ、新人くん頑張っていこう」
そう岩下が言うと、拍手はおこらなかったが、それぞれに「よろしく」と声をかけてくれた。
小さなことだが、なんだかそれが輝にとって、とても心地のいい空間に感じた。
自分を妬んでも、それほどきにしないで大人な対応をしてくれる。
自分が理事長の息子ということはほかの生徒には秘密にしてもらった。
平等に扱われたい。そう思ったのだ。
それに、柊自体なんとも思ってなさそうなところが、着心地よかった。
こんなに人当たりのいい感じなのに、まるで人に興味なさそうな感じ。
その姿に何故か悔しさも感じていた。
初めて見た時から、輝は柊に嫉妬していた。
なんの嫉妬なのかはわからないが、気に入らないと思っていたんだ。
でも、眩しくて結局見てしまう。
「輝、あとでマニュアル説明するから残って」
委員会も終わり、皆が帰り支度をしていると、柊が輝に言った。
「頑張れよ新人。マニュアルの分厚さみてビビるなよ。じゃあおつかれ」
岩下がそんな冗談いいながら、去っていった。
皆が次々に帰っていくと、柊と二人だけになる。
そう、意識してしまうと、なんか変に緊張する自分も嫌だった。
「じゃあ、やろうか」
しかし、そんな緊張を吹き飛ばすほどの30cmほどありそうな分厚い資料が目の前を覆った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます