第7話生徒会①

次の日の放課後、輝は言われた通り生徒会室前に現れた。


中にはどうやらもう人がいるらしい。

ガヤガヤ聞こえる声が、皆の仲の良さを感じる。


そんな中に自分が入るなんて、やっぱり無理だ。


ドアを開けようとした手が止まり、どうしても中へ入ることを躊躇していると、


「輝、ちょうど良かった。ドアあけてよ」


そう言ってきたのは、両手に資料をいっぱい持った柊だった。


「あ、はい…」


輝はドアを開け、柊は「ありがとう」と、笑顔をむけて中へ入っていく。


「あっ、生徒会長やっときた」


そんな声が聞こえてくる。


中を見ると、同じ学年の生徒もいれば、先輩もいる。当たり前だが、皆上下関係関係なさそうに、楽しく笑いあっていた。


茫然と入り口で立っていると、


「早く輝も中入りなよ」


柊に言われ、輝は渋々中へ入っていった。


その言葉に、皆、輝に注目する。


「君…」


輝をみて驚愕したのは、書記担当二年の角谷玄太だ。


「ああ、今朝言ってた新人ってこの子?」


そう言ったのは柊と同じクラスでもある、今回副会長に任命された岩下智彦だ。


「そうだよ、片桐輝くん。書記でもやってもらうつもり」


その言葉に、角谷が不貞腐れた。


「書記は俺がいるのに」


「書記は二人いつもいるでしょ?」


「…そうですね」


「仲良くしてあげてね」


そう柊が微笑むと、角谷も嬉しそうに頷いた。


「天川先輩がお願いするなら、よろしくな、片桐」


単純なやつ。

そう思いながら適当に「ああ」と、返事をした。


「じゃあ、メンバーも揃ったことだし、改めて自己紹介しようか」


柊の呼びかけに、皆一斉に席に着いた。


輝も空いてる席に座ると、柊から挨拶が始まった。


「今年の生徒会長前期を務めます、天川柊です。

去年の後期に引き続き、誠心誠意つとめますので、よろしくお願いします」


柊の挨拶に皆拍手で応える。


挨拶だけでも、この人が生徒の中心人物に向いることが、この存在感が語っていた。


ただの優男ではなく、凛々しさがあり、美しさがある。


誰も彼に抗うことなんて出来ない。


「じゃあ、次は俺が。岩下智彦今年から副生徒会長に就任しました。名護の後任なので、まだわからないことだらけですが、よろしくお願いします」


輝が心の中で名護って誰だ?

と思っていると、隣に座っていた柊が彼の耳に寄せて小声で「昨日会った素也だよ」と言った。


彼の言葉より、彼が耳元で話してきたことに、へんな緊張感が、輝を包んだ。


男なんかに、変に緊張する自分はおかしい、そうおもいながらも、中性的な彼の顔に男女隔たりなく、ときめいてしまうのは仕方ないと言い訳する自分もいた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る