第4話新学期④

入学式も終わり、皆は午前中のホームルームを終えると、下校して行く。


そんな中、柊は中庭の渡り廊下を歩いていると、中庭から怒鳴り声が聞こえた。


「はぁ!?テメー、転校してきたからって舐めてんのか?」


中庭で怒鳴り声を上げれば、声がこだまして響き渡る。


柊は一つため息をつき、教室から中庭を覗くと、金髪の頭が黒髪の男の胸ぐらを掴んでいた。


周りに他の生徒も数人いるのに、彼らの周りだけ、ドーナツホールが出来ていた。


皆、自分が巻き込まれることを恐れて、それでも気になるから心配しているふりしてその場に留まる。


人がこんなにいるのに、「やめろよ」の声はしても、誰一人止めにはいる者はいなさそうだった。


上履きで中庭に出るのは抵抗あるが、そんなことも言ってられなさそうだ。


柊はそのまま人の輪を抜けて、彼らの元へ行った。


柊が通ると、救世主が来たと言わんばかりの、期待を込めた視線が柊を突き刺した。


当事者の二人は気づいていないようだ。


そして、その瞬間金髪の頭が拳を上げた。


その場にいる誰もが息を呑んだ時。


「転校そうそう、警察沙汰になるのはよくないよ」


被害者の彼は閉じていた目をゆっくり開いてみると、柊が笑顔で金髪の拳を掴んで止めていた。


「あん?!誰だテメー」


転校生だし、自分のことを知らなくて当然かと、思う自分と、生徒会長挨拶で目があっただろうと、思う気持ちと両方持ちながらも、平然を装い、天使スマイルは崩さない。


「僕は天川柊。一応生徒会長をやらせてもらってるよ。君は?」


「片桐輝」


ぶっきらぼうに名前だけを素直に答えるところは、なんだかあどけなさを感じた。


「君は大丈夫?」


被害者の生徒にも視線を向けると、彼は頬を赤らめながらも頷いた。


「手、離しなよ」


そう言って、輝の手を被害者の胸元から外した。輝も動揺しているのか、柊の行動に抗うことはなかった。


「何があったか話してくれる?」


「は、はい」


話し始めたのは被害者の方だった。


「転校してきてそうそう、金髪だし、学校の風紀を乱すのは良くないって…言っただけです」


「そう、君は風紀委員長だったね。ありがとう、ここからは僕が受け継ぐよ」


そう言って、ここから立ち去るように促すと、彼は頭を下げて走って立ち去って行った。


「何勝手に帰してるんだよ。俺とあいつの問題に首突っ込むんじゃねーよ」


「片桐くんは、転校してきたんだよね?今日は初日だし、分からないこともあるかもしれないけど、なんでも聞いてよ」


そういって、微笑んだ柊に、輝は少し圧倒されたがすぐに、自分のペースに戻した。


「べ、別に聞きたいことなんてねーよ。俺に関わるなって言ってるだけだよ!誰も、俺に話しかけたりしてくるな」


そういって、突っぱねて瞳の奥は悲しそうに見えた。

その瞳の奥から垣間見える本音に触れたい。


今まで、不良っぽい生徒は中学の時にもいた。


けれど、皆、柊の言うことに逆らうものはいなかった。


新鮮な気持ちと、こういうときの対応の仕方が分からなかった。


でも、面白くて嫌いじゃない。



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