第5話新学期⑤
「っぷは、君面白いね」
意外な言葉に、周りにいた生徒も固まった。
そこに、素也も混ざって見ていたが、柊の意外な反応に、助けに行くタイミングを逃したのだ。
「…っな、バカにすんなよ!」
そう言って、輝が殴ろうとした時、素也も助けに出ようとした。
しかし、柊は華麗に避けて、輝の手首を掴んだ。
驚く輝に、勝ち誇った小悪魔のような笑みを浮かべた柊。
次第にまた天使の笑顔に戻った。
「君、今日から生徒会長に入ってもらうね」
この日最大の笑顔に、周りの生徒もトキメキながらも、状況について行けないまま、全員が呆然とした。
「はっ?生徒会長さんの頭はお花畑ですか?」
輝も予想だにしていない言葉に動揺が隠せなかった。
「副会長いなくて、手が足りないんだよ」
柊は手首を掴んだまま、輝を生徒会室へと連れて行った。
「おい、離せよー!!」
わけもわからず、輝は抗うがそのまま生徒会室へ連れて行かれた。
その様子を戸惑いながらも、不満そうに素也は見つめながらもその場から立ち去った。
「なんか、よくわからないけど、さすが生徒会長だな。華麗で素敵だ」
そんな賞賛の声が飛び交いながら、その場にいた生徒たちは皆それぞれ去って行った。
その頃、生徒会室に連れてこられた輝はとりあえず椅子に座らされた。
「何すんだよ。頭おかしいだろ」
柊は椅子に輝を座らせると、肩を押さえつけるように、手を置いた。
「君みたいに、問題起こしそうな人は、責任あるところにいたほうが成長すると思って」
笑顔で話しているのに、席を立とうと抗う輝の肩を押しつける力はかなり強かった。
こんな痩せ細く見えても、男なんだと輝は実感した。自分より弱そうに見えるのに、力で敵わないことに内心ショックでもあった。
そんな、輝の心を読んだのか、柊は笑顔のまま言葉を続けた。
「僕はね、こう見えて合気道とか空手習っていたんだ。だから、手は出さないけど、受け身は得意だよ」
「き、聞いてねーし」
「そう?」
柊は笑顔のまま輝から離れて、朝の続きで黒板に行事を書く作業にとりかかる。
無音な時間。
自分を生徒会に連れてきたくせに、無視して自分の仕事をする柊の行動が理解できず、机を叩く。
「おい!連れてきといて無視とか意味わかんねーし」
輝の言動に、柊は持っていたチョークを戻し、再び輝の前に机を隔てて立ち、輝のアゴをくいっと持ち上げた。
「口の利き方も知らないのは良くないよ。僕は君の先輩だ。敬語を使ってくれた方がいいな」
柔らかな物言いだが、目は鋭く流石の輝も怖気付いた。
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