自分よりも使いこなしてる??

 ネーブルの攻撃を避け、炎の川と化した場所に飛び込むはめになった。

 その所為でHPがゴリゴリと減るが、エリカさんがくれる回復が結構厚くて、何とか持ち堪えられている(エリカさんはこのゲーム初のヒーラージョブの取得者だけれど、彼女がさっき言っていたように、ちゃんと練習を積んでいたようだ)。


 そんな彼女に軽く礼を言いながら、オレは安置まで移動する。


 すると、すぐにネーブルが飛びかかってきた。

 奴の爪をボルケミック・フレイムの長い銃身で受け止め、剥き出し状態の肋骨を強く蹴る。

 その攻撃を補助するように、リゲルさんがオレの背後からガンランスで強烈な突きをしてくれて、ネーブルは面白いほど後方にノックバックする。


 体勢を崩したネーブルの頭部に容赦無くショットガンを浴びせかけるが、奴は気色悪い笑い声を上げるばかりでさほど効いた様子もない。


(ショットガンは高威力なのに、頭を撃たれてもあんまりダメージ入ってないっぽいな……。どうなってんだ、あいつの体……)


 ネーブルは素早い身のこなしで再度壁に移動する。

 その体と至る所に散らばった目玉には炎のエフェクトが復活していて、通路全体がもう一度炎が撒き散らされた。


 この炎の技は随分とチャージが早いようだ……。


 うんざりしながら修復剤を使用していると、同じように修復剤を使っていたリゲルさんが声をかけてくる。


「私はHPが高いので、ネーブルの動きをある程度封じられると思います。動きを固定出来たなら、佐藤さんはネーブルの弱点を探してください! エリカさんは私にヒールを多めにお願いしたいです!」

「分かった!」

「リゲルさんにヒールやればいいんだね、任せてー!」


 オレとエリカさんが返事を返せば、リゲルさんは彼女のスキルを使ったのか、全身が堅そうな色合いに変化する。


(リゲルさんがネーブルの行動を抑えてくれるのは有難い。ええと、オレはネーブルを攻撃してリゲルさんの方に向かうように誘導してみるか)


 自分の行動も決め、ウッドペッカーからボルケミック・フレイムに持ち替える。

 それでネーブルを追うように連射していく。

 ネーブルは銃弾を避けてはいるので奴のボディのどこかに弱点はあるのだろうが、奴自体は強気の姿勢だ。


「無駄なんだよ! こっちは元の弱っちいドールの体からより強いアバターに進化したんだからさ、そんなしょっぼい弾なんか効かねーの!」

「その割には逃げまくってるように見えるな??」

「まぁ、軽くHPが削られはするからな!」


 確かに、頭部に当たっても軽くHPが削られているだけではある。

 それはやはり以前ネーブルが装着していたアバターよりも物理防御力の数値が向上しているからなんだろう。

 オレのスキル”リレーショナル・ディテクション”は使用したアイテムに関連するアイテムを知れる効果だ。オレが使うとドール用のアイテムしか分からなかったような気がするが、ネーブルが使うとドール用のアバターだけにとどまらず、モンスターの部位までもが対象になるようだ。

 それに思い至ると、オレのスキルの使い方がネーブルに劣っているような気がしてきて、若干悔しくなる。


 改めてキメラのようなネーブルの体を観察しつつ、銃弾でリゲルさんの方まで追い込む。


 リゲルさんはオレの意図が分かってくれていたのか、床の安置で待ち構えてる。そしてネーブルが彼女の側面あたりまで来ると、巨大なガンランスを思い切り良く振って、ネーブルの肋骨の隙間にその先端をブッ刺した。

 動けない状態になったネーブルに対し、オレはボルケミック・フレイムを撃ちまくる。


 ここまでやれば弱点が分かるだろうと思ったのだが、それは甘かった。

 通路に不穏な音が鳴り響いたかと思うと、炎の川のようになっている床から、数体のNPCドールが出てきて、空中を浮遊しだしたのだ。


「うっわ、何これ!? 増援呼ばれちゃったのかな!?」


 エリカさん同様にオレも内心焦りだすけれど、不思議なことにNPCドールはこっちに向かって攻撃してこない。これらの存在意義は何なのだろうか?


 召喚的な技か何かかと思うけれど、似たような光景を最近何処かで見たのを思い出す。


(レッド・ドラゴンも地面から浮遊オブジェクトを出現させた……。ネーブルはレッド・ドラゴンの技っぽいのを使えるようになっていると考えると、このNPCドールを放置しておくのはまずいか……)


 この状態を長引かせておくマズさに気が付き、慌てて銃口をドールに向ける。



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