VRMMORPGでの飛行マウント
オレとエリカさんはテレポ機能を解放するため、最初の街の周辺を回る。
徒歩での移動だから長時間を覚悟していたのに、彼女は飛行タイプの移動マウント(フィールド上空を速く移動するアイテム)を保有していて、オレまでそれに乗っけてくれた。
VR技術により、空気抵抗や不安定に揺れる感じが表現されてはいるものの、都市間の移動はかなりスムーズ。しかも、下を歩くプレイヤー達からは
こういうレアアイテムを持っていると、かなりゲームが楽しくなるんだろうな。
しかし、どうしても疑問に思ってしまう。
彼女のレアアイテムの保有数は多すぎではないだろうか??
飛行マウントの他には、ガンナーマインドが発現するアバターパーツ3種類と、マジカルナースマインドが発現するアバターパーツ1種類。
顔の各パーツや髪型、体のパーツなんかもオレとは大きく違っているから、これらもレアなアイテムなのは間違いない。
一応エリカさんは高校に通っているから、ゲームで遊ぶ時間は限られているはずだが、これらを一体どうやって集めたんだろうか??
オレは素朴な疑問を、前に座るエリカさんに投げかける。
「エリカさんって、かなりレアなアイテムを複数持っているよな。この大鷲タイプの飛行タイプのマウントなんか、システムからの排出率が0.01%くらいだったと思うけど」
「そーだよ。ブラックパイン山地でオオワシ狩りをして、1000匹くらい倒したらドロップしたんだ」
「1000匹か。それって、かなり運が良かったよな。0.01%の排出率が本当だったら、10,000匹くらい狩らないと出ないわけだし」
「そだね〜」
「もしかして、レアアイテムが出やすくなるようなコツとかがあるのか? もしあるなら教えてほしいんだけど」
「コツなんかはないよ! 実は私もユニークスキルの保持者なんだ。【確率改変】てやつ。たぶんねー、ゲーム内でそのユニークスキルを持っているのは私だけなんじゃないかな?」
「エリカさんもユニークスキルを持っていたのか。どんな効果なんだ? それ」
「アイテムドロップの排出確率ってさー、ゲームのシステム内で排出確率が決まってるじゃん?」
「うん」
「このスキルを使用すると、その確率が10倍になるんだよ。たとえば、1%の排出率だったなら、10倍されて、10%の排出率に変わるんだよ」
「えぇ!? それって、相当なチートスキルだな??」
何かがおかしいと思ったら、やはり裏があった。
ほしいアイテムを取りやすくなるし、そうじゃなくても高レアが取れやすかったら、売ってゴールドを稼ぎやすくなる。
そんなプレイヤー間で優劣がつきやすくなるようなユニークスキルを実装しておくなんて、ここの運営は何を考えているんだ?
「佐藤さんだって、チート並なユニークスキルを持っているんだから、私のだって、そのくらいの効果があったっておかしくはないと思うよ。っていうか、ぶっちゃけ微妙……。このスキルのおかげで確率が変わったかどうかだなんて、気のせいくらいの違いしかないよ」
「10倍されても実感できないのは、エリカさんの感覚がおかしいからだろ」
「そんなこと、ぜったいにない! っていうか、出るか出ないかしかしか考えないんだから、実質二分の一だと思ってさえいるよ」
「そうはならんだろう。さすがに」
薄々気がついていたけど、このエリカさんという人はかなり適当な性格をしている。しかも堂々と独自の理論を語ってしまうもんだから、ついつい頷いてしまいそうになるのが厄介だ。
まぁこういう馬鹿みたいな話も、楽しくないわけじゃないけど。
当のエリカさんはこっちを振り返り、首を傾げる。
「羨ましがることなんかないじゃん。私のユニークスキルは佐藤さんにも恩恵があるんだからさ。さっき、私の所持品と佐藤さんの所持品は共有できるようにしたよね?」
「確かに、その通りだな」
開始都市を出るときに、俺たちはゲームコンフィグをいじり、所持品を共有状態にした。だから現在のオレはエリカさんの所持品を自由に使えるし、ありがたいことに、一昨日エリカさんが装着していたガンナーマインドのアバターパーツ一式を借り、装着していたりする。
(今のオレって、ウェポンスキル、アバタースキル、ユニークスキル。3種類揃っているのか。なんか、急に強くなった気がするよな)
ガンナーマインドの効果を得たオレのステータスは、遠距離物理攻撃力がデフォルトのCからAまで伸びた。だから、”強くなった気がする”ではなく、実際に強くはなっているのだ。
感慨にふけっていると、急にオオワシが傾き、みっともない姿勢でしがみつく。
「うぎゃぁぁ!!」
「あはは! 最後はあの都市! あそこでテレポ機能を解放したら、近くの”黄煙の森”に入ろ! あそこにメディカルボックスをドロップするモンスターの生息地があるんだよ」
「分かった。森の木の上らへん、花粉……? か何かで黄色のモヤになってる場所があるんだな」
「あそこには有毒物質のガスが発生してるんだよ。最近場所取りのために、PvPを仕掛けてくる奴等もいるから、注意しよ!」
「場所取りかー」
ようやくまともにゲームをしているような気分になってきた。
さっきまでは開始都市の射撃場の的ばかり相手にしていたから、中身が人間のキャラクターを相手に出来るだけでも楽しみだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます