ユニークスキルに関する考察

 ユニークスキルはバグっぽいけれど、せっかくだから使ってみたくなっている。

 先程購入したパーツアクションスライドBG-AB-6に対して、試しにスキル名「リレーショナル・ディテクション」と言ってみると、目の前に次々と小さなウィンドウが現れ、半透明の鎖で繋がる。


(★アクションスライドBG-AB-6)–(グリップCC-AB-6)–(トリガーCZ-AB-6)→(ウェポンスキル:反動制御(中)&弾薬自動生成(中))


(★アクションスライドBG-AB-6)–(グリップBG-DD-9)–(トリガーBG-QA-3)→(ウェポンスキル:照準アシスト(小)&弾薬自動生成(中))


 ウィンドウに表示されているのは銃と思わしきパーツ名と、ウェポンスキルの種類のようだ。それらをじっと眺めながら軽く考察する。


(これって、特定のアクションスライド、グリップ、トリガーが合わさるとウェポンスキルが生成されてる感じか? パーツの名称的に多少の関係性はありそうだよな……。あ、そうか。オレが獲得したユニークスキルは一つのパーツを調べるだけで、どんなウェポンスキルを獲得出来るのかを事前に教えてくれる効果があるっぽいな)


 さっき作ったウッドペッカーは3つのウェポンパーツが偶然正解な組み合わせだったから、”反動制御”と”弾薬自動生成”が備わったと思われる。

 

 この推測が当たっているなら、今までやってきた武器製作はユニークスキルの利用でかなり効率的になりそうだ。ぶっ壊れスキルと言ってもいいくらいかもしれない。


「ウェポンパーツに使った時の効果は分かったけど、完成した武器の方に使っても意味がないんかな? ついでにちょっとやってみるか」


 オレは作ったばかりのウッドペーカーを手に持ち、もう一度スキル名を言う。


「【リレーショナル・ディテクション】」


再び複数のウィンドウが出てきた。

それらに書かれた文字列を読み、オレは思わず目を見張る。


(★ウッドペッカー(武器:銃))–(ウエスタンハット(頭))–(ウエスタンブーツ(足))–(デニムビスチェ(胴))→(アバタースキル:ガンナーマインド(中))


「アバタースキル! このアバターパーツを組み合わせたら、アバタースキルが使用出来るってことか? リレーショナル・ディテクションを使うだけで、かなりアバタースキルを得やすくなるみたいだ」


 アバタースキルは何となく他のゲームで言うジョブ専用のスキルのような名称をしている。使用キャラクターを開発陣の想定した見た目にしとけば、ジョブ的な強さを発揮出来るってことなのかもしれない。


「でも問題は、このアバターパーツがクッソ高いことなんだよな」


 SNSを見ている感じだと他のプレイヤーも金欠状態らしく、アバタースキルの解明は進んでなかった。

 となると、オレは金さえ用意すれば狙ったアバタースキルを獲得できるから、他のプレイヤーよりも有利な立場にいるとも言えるわけだ。


 オレは改めてユニークスキル:リレーショナル・ディテクションの効果に感動する。こんなに使えるスキルだったなら、運営にバグ報告なんかせずに、コッソリ使い続けたかった……。


「はぁ……。バカ真面目に報告する前に、一回使ってみて効果を知るべきだったな。まぁいいや。それよりもガンナーマインドとかいうアバタースキルの効果も試してみたいな」


 アバターパーツは各コンテンツのレアドロップで入手するものが殆どだし、ゲーム内での排出量がかなり少なく設定されているから、オークションでは超高額で取引されている。 特にウエスタンハットやデニムビスチェの様なコスチューム的に可愛いアイテムはその傾向が強い。

 

 一応今までの作った武器を売り、小銭を稼いでいたりはするけれど、そんなはした金では全く足りない。


「まだβテスト中だってのに、既に入手不可能なアイテムが存在するだけえ萎える……」


 リリースする時にこの辺の問題点が改善されていないと、大ヒットなんか夢のまた夢だろう。


 急激にモチベーションがなくなってきて、ゲームを終了しようと考えるが、ちょうど目の前を走り抜けて行ったプレイヤーキャラクターが周囲と全く異なる脚部なのに驚き、「マジか!」と言ってしまった。

 たっぷりとレースがついたブーツ。ちょうど良いバランスのニーハイ。確かあれはウエスタンブーツだったはずだ。SNSで見たことがあるだけだけど、多分記憶違いではないはずだ。


「今のってウエスタンブーツ!?」


 視線を上げ、ウェスタンブーツを履いている人物の全体を見てみて、さらに驚く。

 ブーツだけではなく、頭や胴のアバターパーツもウエスタン系なのだ。

 顔もいじっているようで、オレや他の初心者なんかとは比べ物にならないくらいに可愛い。


 彼女はオレに見られているとも気付かず、オークションボードの前まで走って行く。




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