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バグ発生？

　公式のガイドブックを読む限りだとプレイヤーは、武器にあらかじめついている”ウェポンスキル”と、特定種類のアバターパーツを組み合わせることで備（そな）わる”アバタースキル”を駆使して戦闘を行うとのこと。

　そこでオレはこの街から出る前に、それなりに有用なウェポンスキルを使える武器を獲得する必要があると考えた。

　街のすぐ外はPvPエリア（プレイヤー同士が戦闘可能なエリア）だし、オンラインゲームあるあるなのだが、初心者の多い街の近くにはさっきの奴のような、初心者狩り目的のプレイヤーがいたりするものだ。

　強者にあっさりと殺されたあげく全財産を奪われ、モチベーションが急低下したなんて昔話を知り合いから何度も聞いた。

　オレは他のプレイヤーよりもスタートが遅い分、狙われやすいだろう。

　初心者エリアを無難に切り抜けるという明確な目的があるのに、オレが組み立てる武器はどれもこれも微妙な性能ばかり。

　今買ったアクションスライドBG-AB-6が当たりだったらいいけど……、と考えながら、自分が所持しているパーツと組み合わせる。

　アクションスライドと名付けられているくらいだから銃に使うパーツなのだろうとあたりをつけ、作業に没頭する。

　すでに組んでいた中間部品２０種類それぞれに、アクションスライドBG-AB-6をはめてみること約１０分、ようやくウェポンスキルを備える武器が組み上がった。

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武器名：ウッドペッカー

種類：ショットガン

ウェポンスキル：反動制御（中）、弾薬自動生成（中）

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ホログラム状に表示されたウィンドウの説明を読む限りでは、それなりに使い勝手の良さそうな武器な気がする。しかし、続いて現れたウィンドウの文章を読み、思わず「は？」と言ってしまった。

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プレイヤー：ソルティ・ソリッドは【ユニークスキル：　リレーショナル・ディテクション】を獲得しました！　詳細な効果につきましては、公式ファンサイトのマイページでご確認ください。

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「ソルティ・ソリッドはオレのキャラ名だけど、ユニークスキルって何だよ？　リレーショナル・ディテクション？　何がなにやら……」

　どちらも聞き覚えのない単語だ。

　”スキル”というくらいだから、多分メリットがあるんだろうけどゲーム内の情報からじゃサッパリ解らない。

　少し面倒だが、オレは一度ゲームを切断し、スマートフォンからゲームの公式ファンサイトにアクセスする。

　そこでマイページ––––マミヤ兄のアカウントでサブキャラを作って動かしている状態なので、彼のページ––––に行ってみる。

　すると確かにオレの操作キャラクター、ソルティ・ソリッドのステータスにユニークスキルと書かれた欄があり、リレーショナル・ディテクションと表示されていた。

　効果についての説明も書かれている。

　”アイテムにこのスキルを使用することで、関連性の高い他のアイテムが知れる”らしいけど、説明がフワッとしすぎていて分かりづらい。

　サイト内の公式ガイドをもう一度読んでみても、ユニークスキルなんて単語は記載されてはいない。

　これってもしかするとゲーム内のバグか何かなのかもしれない。

　オレの何らかの行動の所為で未実装状態のスキルが、バグとして表に出てしまったのか？

　念のために他のプレイヤーのページを適当に巡ってみるも、ユニークスキル欄が表示されているページは一つも見つけられない。

　やっぱりこれは、見てはいけなかったタイプのバグなんだろう。

　こっそりと運営に報告して、多少開発に貢献しよう。

　サイト内の専用ページから自キャラに発生した”ユニークスキル付与”の不具合を出来るだけ詳細に書き、送信ボタンを押す。

　それらが終わると時刻はもう午前１時になっていた。

　メインでやっているゲームにログインして新シーズンのランクを上げておきたいところだけど……、目の前に降って沸いた誘惑に勝てそうにない。

（不具合が受理されたら、あのユニークスキルはオレのキャラから取り上げられるんだよな？　……その前に一回だけ使いたいような……）

　ゲーム内のバグ的な部分は何度も触るべきじゃないと聞いたことがある。

　報告して終わりにした方がいいのはわかっているのに、単調な作業を繰り返しすぎたオレの脳がこの些細（ささい）な刺激を面白がり、一回使ってみなければ気が済まなくなっていた。

(少し使うくらいなら大丈夫だろ）

　好奇心に負け、オレは再びゲーム世界にダイブする。

　獲得したばかりのユニークスキルを使用したいのは、先程オークションで落札した”アクションスライドBG-AB-6”。

　しかし、困ったことにユニークスキルの使用法を知らない。

「あっ！　ウェポンスキルはスキル名を口に出して使えばいいから、これもそのやり方でやってみるか」

　合っているのかどうかは不明だけど、オレはとりあえずスキル名を言ってみることにした。