第3章「西の魔法使い」 第3話 観光タクシー
不安げな表情で自分のスマホを見つめる見事。成行を見失って早くも一時間は経過しようとしている。今、彼女は車に乗っていた。BMW・840dカブリオレ。
運転席に
どうみても、一般的なタクシー
見事は、この観光タクシーの後部席・左側に座っていた。その右隣には彼女の母・雷鳴が座っていた。
「参ったな。この
頭を抱えるのは雷鳴。その隣で
見事は責任を感じていた。警戒心が足りなかった。そんなつもりはなかったのに、成行の失踪を防げなかった。
相変わらず、成行のスマホは電源を切られている。この状態がずっと続いていた。落ち込んでいても仕方ない。だが、成行に万が一のことがあれば。そう思うと不安でたまらなかった。
カブリオレは、雷鳴の指示で静岡駅周辺を適当に走っていた。
連休初日、静岡市街地の道は混雑している。地方都市とはいえ、そこは政令指定都市。しかも、静岡県は全国でも有数の『車の県』だ。この街に住む人々にとって、移動手段たる車は欠かせない存在だった。
「見事。しつこいようだが、妙な連中はいなかったのだな?」
雷鳴に問いかけられる見事。
「うん。乗る前と、乗った後、車内には警戒をしていたけど・・・」
「まあ、怪しい連中が、わかりやすく怪しい
雷鳴はスマホを耳に当てながら話す。どこかに電話している様子だ。その姿を見て、見事はもう一度、電話してみよう。そう思ったときだ。
「あっ・・・!」
落ち込んでいた見事は、ハッとする。大事なことを忘れていた。そして、その大事なことを思い出したのだ。
「ママっ!」
雷鳴に掴みかかるような勢いで
「なっ、何だ!どうした?」
いきなりのことに驚く雷鳴。
「大事なことを思い出したわ!」
「なっ、何だ?落ち着け見事。何を思い出した?」
母に
「ママ、電話番号よ!電話番号!」
「電話番号?それがどうした?」
「実は―」
見事はその思い出した内容を話し始める。
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