第2章「いざ、駿府の街へ」第1話 出発の朝①

 明けて土曜日。いよいよ、静岡の街へ向かう朝を迎えた。

 昨日の放課後、成行は見事と話し合い、土曜日のスケジュールを確認した。二人は新横浜駅で合流することにしていた。

 集合時間は、8時45分。9時過ぎのひかり号で静岡へ向かうが、連休中の混雑も考慮して、出発時刻の30分前に合流ということになった。


 昨夜は荷造りをして、今日に備えるため、早めに就寝した。が、すぐには眠れなかった。ワクワクする感覚と、少し不安な気持ちとが混ざり合って、すぐには眠れなかったのだ。


 朝食は事前にコンビニで購入していたおむすびとインスタント味噌汁で済ませて、京王線・稲城駅へ向かう。




                     ※※※※※



「あれっ?」

 成行が稲城駅へ着くと、そこには思わぬ人物がいた。

 稲城駅の改札前に、キャリーバッグをたずさえた見事がいた。彼女に駆け寄る成行。

「見事さん、新横浜で落ち合う約束だったよね?」

 昨日の打ち合わせで何か勘違いしたか?なぜ彼女がここにいる?少々焦った成行だが、見事はこう答える。

「違うわよ。その・・・。何て言うか、私の気まぐれよ」

 そう答えた見事は、少ししどろもどろしている。

「だって、目的地は同じ静岡市なんだし、新横浜から一緒じゃなくても問題ないでしょう?」

 彼女の言動に対して、成行はすぐに察する。

「またまた。そんなマニュアル通りのツンデレもどきみたいな言い訳しなくてもいいのに」

 思わずニヤニヤした成行。

「なっ、何ですって!そんなこというとお尻をぶつわよ!」

 顔を赤くして声を荒げた見事。

「落ち着いてくださいって。みんな見てますよ?」

「えっ!」

 成行の言葉に動じた見事が周囲を見渡す。

 申し訳ないが、見事の反応が少し面白かったと感じた成行。


「次にそんなこと言ったら、本当にお仕置きなんだからね!」

「わかりました。僕だって親父おやじにも、おふくろにも、はないんです。お仕置きは嫌です。あっ!でも、今後いまのセリフを言うときがあれば、もっとセーラームーンっぽく言ってもらえたら嬉しい―」

「成行君!!!」

 落雷のような見事の一喝だ。

「わっ、わかりました。そんな大声出さないで。落ち着いて、静粛に。深呼吸をして」

「成行君のせいでしょう!」

 いささか調子に乗ったことは反省しなくてはならない。二人のやり取りを見て、クスクスと笑う人の姿があった。


 周囲の反応に気づいたのか、頬を赤くした見事。

「もう!早く行きましょう!」と、彼女は改札へと向かった。

「ああっ!待って!僕も行きますから」と、PASMOを取り出しながら改札へ向かう成行。

 二人は京王相模原線・橋本方面のホームへ向かう。

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