第1章「ゴールデンウィークのお誘い」第5話 連休直前の金曜

 五月最初の金曜日を迎えた。成行や見事たち学生にとって、明日からゴールデンウィーク連休が始まる。

 世間では、今週前半からゴールデンウィークのニュースであふれていた。一部企業では、最長で十連休にもなるのだから驚きだ。その分、大人は『勤労』という対価を支払うのだが。


 今朝の京王線車内では、旅行風のいで立ちの人を多く見かけた。キャリーバックを持った家族連れやカップル。それに友人同士で、どこかへ出かけるような雰囲気の大学生。

 何とも平和というか、こんな光景を見ていると、学校へ行くのが嫌になってしまいそうになる。


 成行が教室に着くと、いつもの金曜とは違う空気だった。教室内も、なかばゴールデンウィークに突入したような、弛んだ雰囲気になっていた。

 しかし、クラスの担任は朝のHRで、そんな空気をたしなめて、金曜日が始まった。



※※※※※



 放課後を迎えた柏餅幸兵衛学園。帰りのHRを終えて、生徒たちが一斉にゴールデンウィークに身を投じる。旅行、ゲーム、デート、部活、学習塾。やることは人それぞれ。怒涛の4連休がスタートする。


 通学鞄にノートや筆記用具をしまう成行。すると、目の前に見事が現れる。

 「準備はいい?成行君」

 「ちょっと、待って。今、終わるから」

 見事にせかされて、帰り支度を完了させる。今日の放課後、ゴールデンウィーク中のことを確認しようと言われていた。


 「じゃあ、行きましょう」と、言って見事は教室を出た。

 「待って、見事さん」

 成行はすぐに彼女を追う。廊下に出たところで、見事が待っていた。

 「遅いわよ」

 「そんな慌てなくてもゴールデンウィークは逃げませんよ?」

 「違うわ。お姉ちゃんが待っているの」

 「えっ?」

 その話は聞いていなかった成行。

 「アリサさんが来ているの?」

 「ええ。学校の側で待っているから。だから、早く」

 そう言って見事が成行の手を引く。

 「おっと!」

 彼女の手を引かれて思わずドキッとした成行。


 放課後を迎えた直後で、人通りの多い廊下。そんな中を搔い潜るように昇降口へと向かった。

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