第1章「ゴールデンウィークのお誘い」第1話 いつもとは違う月曜日の朝。

 月曜日。一週間の始まりの日。鬱屈に感じる人々もいるだろう。しかし、今日に限ってはそうとも言えない。

 今日から始まる新しい一週間。その先に待つのはゴールデンウィーク。そう思えば、ワクワクする人が多いだろう。


 岩濱成行は京王線・稲城駅のホームでスマホを眺めていた。カレンダーアプリで、今後の予定を考えていたのだ。

 高校生になったと思ったら、魔法使いになってしまった。こんなまともじゃない話を誰が信じようか。だが、仕方ない。これは事実なのだ。

 クラスメイト・静所見事との出会い。誘拐され、危険な目に遭った。そして、自分自身が得た魔法の威力を知った。


 ここ数日、自宅でも可能な魔法の練習をひっそりと行っていた。見事から指示された『オンとオフ』の練習。まずは、これのマスターを目指す。


 昨年のゴールデンウィーク。当時の成行は中学三年生。高校受験で呑気にゴールデンウィークを楽しむ余裕はなかった。

 そして、高校の合格発表直後。少し気が早いが、ゴールデンウィークに友人と遊ぶことを考えていた。やはり、ゴールデンウィークに遊ぶというのは、普段遊びに行くのとはワケが違う。楽しみは50パーセント増しなのだ。


 しかし、想定外のことが起きた。成行は魔法使いになってしまった。こんな超展開を誰が予想できるだろうか。無理だ。絶対に、こればかりは予想不可能な展開だ。だが、それを嘆いていても仕方ない。

「どうしたもんかな・・・」

 そう呟いた瞬間だ。成行宛にメッセージが届いた。

「おっ!」

 それは見事からのメッセージだった。

『おはよう、成行君』から始まる見事のメッセージ。そこから立て続けに、彼女からの問いかけが来る。


『相談したいことがあるんだけど』

「相談?何だろう・・・?」

 成行は返信をする。

『何の相談?魔法絡み?』

 すぐに来る見事からの返信。

『うーん。少し違うかな。学校で話したい』

 学校で話したい?そうすると、魔法絡みではないのか?釈然としない成行に、次のメッセージが来る。

『ゴールデンウィークのことよ』

 ゴールデンウィーク?何があるのだろうか?成行が思案していると、次のメッセージがくる。


『ゴールデンウィークに予定はある?』

『まだ、具体的なことは決めてないよ』

 ありのままを伝える成行。

『そう。なら、学校で話すわ』

 見事からのメッセージを読み、もどかしく思う成行。勿体ぶらず言ってくれればいいのに。

 ふと思いついたままにメッセージを送る成行。

『もしかして、デートのお誘い?』

 メッセージを送ると、見事からの返信が止まった。

「しまった・・・」

 調子に乗り過ぎたかと後悔しても遅い。一分、二分と、時は流れるが音沙汰無し。あと一分で本八幡行きの区間急行が来てしまう。区間急行が到着しても返事がなければ、謝罪メッセージだな。そう決心した成行。


 区間急行が稲城駅へ入線してくる。

「きたっ!」

 見事からのメッセージが来た。ただ一言、『おバカ!』とのみ。そして、立て続けに『まあ、詳しくは学校で』とのメッセージ。

 これは怒っているのか、そうでもないのか判断が難しい。

「まあ、大丈夫か!」

 成行はスマホをブレザーの内ポケットへ入れると、人が詰まった区間急行へダイブした。

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