「旅行先で美少女師匠が僕をお兄ちゃんと呼ぶ双子姉妹に入れ替わる現象編(旧題:魔女と競輪のゴールデンウィーク編)」ペルソナ・ノン・グラータ②
鉄弾
プロローグ 海辺の記憶
この上なく気持ちの
普段、歩き慣れない浜辺を歩くのには、慎重にならざるを得ない。砂浜は、まるで成行の体重を吸うように、足元を
五月。ゴールデンウィークの
天気の良い日、海辺の散歩とは、こんなにも気持ちが良いのか。普段、調布の街で暮らす成行は、都会では感じることのできない解放感に身を委ねていた。
海と空に見とれていると、不意に成行へ向かって叫ぶ人物がいた。
「おーい、お兄ちゃん!こっちやで!」
「お兄ちゃん、こっち!」
成行に向かって二人の少女が手を振る。一人は黒髪のショートボブ。もう一人が同じく黒髪でセミロングヘア。
元気よく手を振る二人。快晴の
双子姉妹は、成行に先んじる形で
「お兄ちゃん、はよ来て!」
「こっち!」
見た目よりも子供っぽい仕草をする双子姉妹。打ち寄せる波は強めで、二人はそれと
「二人とも、危ないぞ!」と叫ぶ成行。
「うひゃあ!」
「わあ!」
成行の忠告も空しく、波に濡れる双子姉妹。すると、二人が成行の方へと歩いてきた。
「お兄ちゃん、濡れてしまったわ・・・」
「うん、冷たいわ・・・」
しょんぼりとしている二人。濃い紺色のジーンズが波に濡れてしまっている。双子なので、お揃いのジーンズだった。
「あんなに波に近づくからだろう?」
「せやかて、ウチらあんな波の近くに行ったことないんやもん!」
すぐさま反論してきたショートボブの少女。
「うん。こんな凄い
そして、呼応するようにセミロングの少女も話す。
「じゃあ、着替えはある?」と、問いかける成行。
「そら、ホテルに戻ればあるで・・・」
「うん。でも、変なシミとかになったりしないかな・・・?」
潮水に濡れたジーンズを眺めながら、
「大丈夫だよ。今の洗濯洗剤の技術は凄いんだから」
さもそれらしいことを言う成行。
「せやね。大丈夫やね」
「うん」
成行の適当な助言が効いたのか、互いの顔を見合わせて納得した双子姉妹。二人は再び波打ち際に向かって走り出す。
「うひゃあ!やっぱ、
「せやね!」
たった今、
「やれやれだな・・・」
古き良きラノベ主人公のような言葉を口にする成行。
無邪気に遊ぶ二人を見ていると、何だか心が癒されるような気がした。そんな気持ちとは裏腹に、成行の
「あれ?何で海にいるんだ・・・?」
波打ち際を眺めながら、その雄大な景色に見惚れる成行だった。
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