第2話 Mahjong Handle Death Game Rule Explanation
「Mahjong Handle Death Game……?」
聞いたことないぞ、いったいどんなデスゲームなんだ? 周囲を見回すが、他の面子も同様に怪訝な表情をしている。この初耳という顔達の中に、船井のようなリピーターは混ざって居るのかどうか。とりあえず、初接触時から馴れ馴れしく苗字ではなく名前を読んでくる胡散臭い関西弁の奴や、後に俳優から政治家へ転身しそうな奴に騙されないよう気を付けよう。
「みんなの頭の上に”?”マークが浮かんでるようなので、ここでルール説明ニャ!」
それは助かる。
「まずは、このゲームというよりもこの世界のルールの話ニャ! 麻雀牌は、萬子は漢数字(一~九)、筒子は丸数字(①~⑨)、索子は全角数字(1~9)、字牌はそのままで表示するニャ! 漢数字とか字牌は普通の台詞と区別を付けづらいので、麻雀牌の部分は【】でくくって表記するニャ! 国士無双十三面待ちの場合は【一九①⑨19東南西北白發中 ツモ中】となるニャ!」
言葉で説明されてもいまいちピンと来ないが、読んでいるうちに慣れてくるだろう。たぶん。慣れてくれ。
「さて、次はこのMahjong Handleがどんなゲームかを教えるニャ! 説明は一度のみ、繰り返さないニャ。後に質問されてもお答えしかねるので、どうか皆様、集中力を持ってお聞きくださいニャ!」
ホールマスターだ……。
「このゲームは、一言で言うと、『麻雀の和了った状態の手牌を6手以内に推察する』だけの単純なゲームなのニャ!」
和了形を当てるってことか? 麻雀の和了形なんてそれこそ無限に近いほどあるが、そんなものをピンポイントに当てられるものなのだろうか? 捨牌などの情報があるのか……?
「どういう風にやるかは、次の2つのステップを繰り返すだけニャ!」
1.
【一二三④⑤⑥5789發發發 5】
こんな感じに、手牌13枚+和了牌1枚を1つ作って入力するニャ!(一番右の14枚目は和了牌ニャ!) そうすると、入力した14枚について判定が行われるニャ!
2-1.
【一二三④⑤⑥57{8}9發發發 5】
この場合は、【8】が手牌の中にあって、かつ正しい場所(左から数えて9枚目)にあるということニャ!
2-2.
【一二三④[⑤]⑥5789發發發5】
こうなった場合は、【⑤】が手牌の中にあるのは合っているけれど、配置する場所は間違っているということニャ!
「これを最大6手まで繰り返して、14枚全部の牌が{}で囲まれたらクリアになるニャ!」
なるほど……。麻雀牌は34種しかないので、13種×3手でとりあえず和了形を構成する牌の種類は分かるということになるのか。
「手牌は萬子→筒子→索子→字牌の順番、いわゆる『完全理牌』をされているから、並び順もヒントにするといいニャ! このルールが無いとさすがに当てるのは無理ニャ! ただ、14枚目の和了牌だけはその並びとは別になっているから気を付けるニャ!」
なるほど。たしかに、例えば国士無双十三面待ち【一九①⑨19東南西北白發中 ツモ中】みたいな手牌で考えてみると、完全理牌されていなかったらいくら使っている牌が全て分かっても、適当な並び方まで当てるのは絶望的だもんな。
「あともう1つ大事なルールだニャ! 普通の麻雀と同様に1飜縛りなので、必ず何らかの手役があるニャ! まぁ全てメンゼンでの和了形なので、ロンならともかくツモの場合はどんな形でもあり得るんだけどニャ。あ、でも海底摸月とか河底撈魚とか嶺上開花みたいな偶発役は無いからそこは安心するニャ! まぁ役無しの和了形はそもそも入力・判定をできないようになっているからそこは安心するニャ。」
なるほど。なかなかよくできている麻雀ゲームのようだな。他の麻雀打ちがどうなのかは知らないが、俺はこういうタイプの論理的思考を要するゲームはわりと嫌いではない。このゲームのルールだけ聞くと純粋に面白そうだと思ってしまう。いきなり拉致されてて自分の命さえ掛かっていなければもっと面白いのだろうが……。
「それではここで、みんなが気になってる賞金の大発表ニャ!」
そうだ、デスゲームと言えば勝てば生存が保証されるのはもちろんだが、それにプラスして大金が得られる場合も多い。リスクに見合う報酬が無いと、デスゲーム参加者の気分も盛り上がらない。
「1回目の入力でドンピシャで大正解した1手クリアの場合はなんと……1億円をプレゼントするニャ!!!!!」
モニターに、山のように積み上げられた札束が映し出される。会場がざわつくが、忘れてはいけない、冒頭で1人爆死しているんだ。まだ大金を見ての驚きよりも「本当か…?」「そんなうまい話あるか?」という猜疑心の方が大きいか。
「モニター越しじゃいまいち実感が湧かないかニャ? じゃあ……ポチッとニャ! あ、部屋の真ん中をちょっと空けるニャ!」
ボタンを押すと、部屋の中央の床から何かがせり上がってきた。透明で巨大な円柱だろうか。いや、円柱ではなく円筒だ、中が空洞になっている。参加者が避けると、その透明な筒は、そのまませり上がって行き、天井まで届いた。円筒の内側には参加者は触れない。すると、今度は天井の中央が開いて、何か紙のようなものがヒラヒラと落ちてきた。まさか……。
バサバサバサ!!!!!!
透明で巨大な円筒の中に、大量の札束が落ちてきて筒の中をギッシリと床から天井まで積み上がっていく。いったいいくらあるのか想像もつかない。
「まぁこんな感じに、お金ならけっこうあるから安心するニャ。」
「「「「「うおおおおおおお!!!!!!」」」」」
会場中が一気に盛り上がる。そりゃそうだ、どう見ても本物の一万円札だ。見慣れているというほどまで常に財布に入っているわけではないのは悲しいが、見間違えるわけはないくらいにはこれまでの人生で見てきた大好きな紙だ。たった1枚でも幸せな気分になれる魔法の紙切れが、大量に、そして乱雑に積み上がっているのだ。数千枚ではとてもきかない量なので、彼女の言葉をそのまま信じるなら1万枚で1億円あるのだろう。1億円という大金はこんなにも圧倒的な存在感なのか。
「賞金の詳細はこんな感じニャ! はいドン!」
モニターに賞金の一覧表が表示される。
1手クリア:+1億円
2手クリア:+100万円
3手クリア:+1万円
4手クリア:+100円
5手クリア:±0円
6手クリア:▲1000万円
「6手でクリアできなかった場合は……どうなるかは言わなくても分かるニャ?」
先程ゲーム進行に支障をきたした1人を爆死させているのはみんなに覚えている。自分にもその危険が迫っているのは分かっている。それでも、それでも1億円という人生を変えられる大金を目の前にしたら、その魅力の方が勝ってしまうものらしい……。
「表にも書いてある通り、6手クリアになった場合は逆に1000万円を没収させてもらうニャ! その時に、参加を継続するか離脱するかを選べるニャ! 参加者が居なくなるか、賞金の支払い総額が1億円を超えたらそこでゲームはおしまいニャ! 参加者にはその時点でお帰りいただくニャ。」
ということは、1回目の挑戦でいきなり1手クリアが出るような奇跡が起こったら、そこでこのゲームは強制終了ということになるのか……?
「それじゃあ、先着で1回10人の参加者を募集するニャ! 我こそはという子はスマートウォッチの参加ボタンを押すニャ!」
左手首に付けられていたスマートウォッチに、「参加」のボタンが表示された。さて、どうするべきか。賞金は有限なので、早めに参加して少しでも賞金を確保した方が良いという考え方もある。しかし、1回目からいきなり参加せずに「見」をすれば、他の奴らのプレイングを観察することができて情報が得られるかもしれない。そんなことを考えているうちに……。
「はーい、もう10人集まったので一旦募集終了ニャ~。スマートウォッチに『参加決定!』って表示された子以外はそこにお座りするニャ~。ここで参加ボタンを押すのを躊躇ったキミたちは死ぬまで保留する、なんてニャ!w あ、これもいちおう言っておくニャ。1回10人しか参加できないから最初のうちは仕方ないけど、ずーっと参加しないままってのはダメだからニャ! 規定回数を不参加のままだと警告が入って、そのままさらに何回か不参加だと……、ボン!!!!だニャ!」
やはりそういうルールもあるか……。まぁこれだけの参加者が居るんだ、さすがに初回は「見」でも良いだろう。この判断は消極的保留ではない、積極的・戦略的保留だ。ほら見ろ、参加ボタンを押してその場に立っている奴らの面構えを。目先の金に目が眩んで何も考えていなさそうなギラギラした奴らばかりだ。いきなり1億円を得てゲームを終わらせられる1手クリアというのは、すなわち天和・地和を出すのと一緒だ。そんなもの、そうそう出るわけがないに決まっている。だったら、1回目のゲームからどんな情報を得られるかの方が重要だ。
「参加決定の子は、そこの個室に入るニャ!」
いつの間にか、真っ白な部屋の1辺に10個の扉ができていた(賞金1億円が出てきて大騒ぎの時に、こっちも一緒に現れていたのかもしれない)。
「みんながそれぞれ好きな個室に入ったら……」
参加者10人全員が10個の個室に入った。すると、「ガチャ!」という大きな音が部屋に響く。
「鍵がロックされるニャ! 問題が出てからみんなで相談されたらゲームにならないからニャ!」
それはデスゲーム運営としては当然の対処か……。
「備え付けのタブレットに問題が表示されるので、各自が制限時間内に解くニャ!」
大部屋のモニターも切り替わった。ホールマスターの可愛らしい顔は表示されず音声だけになり、おそらくタブレットと同じ画面になっている。さて、どんな問題が出て、それをどういう風に解くべきか。それをこの初回の「見」で見極めることができるだろうか。
To Be Continued……
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