麻雀デスゲーム ~Mahjong Handle Death Game~
いのけん
第1話 麻雀デスゲーム開催
昨日の麻雀は大勝だった。大勝ちなんて言葉では表せるものではない、今までの麻雀人生に近い記録も無いほどの、未曾有の14連勝。それで気が大きくなっていたというわけではないのだが、どうやって帰ったか覚えていない。酒を飲んでは居なかったはずだが……。
そんなわけで雀荘帰りに意識を無くした俺は、ふと気が付くとこの場所で横になっていた。布団や電車・バスではない、この感触は「床」だ。頭がクラクラしておりまだ視覚が十分に働かない。視覚よりも先に働き始めたのは触覚だった。肌に慣れない感触がある。首筋に手を当てると、首輪を付けている。首筋は鏡でもないと見ることができないし、首輪なんて自分で付けたことは無いから確証は持てないが、首筋にピッタリと張り付くこの感触と太さは首輪だと思っていいだろう。そのとき、首筋を触る両手のうち左手に何かが付けられているのに気が付いた。首筋の違和感の方が大きくて気が付くのが遅れたが、今思うと左手首にも慣れない重みはうっすらと感じていた。左手首を見ると、そこにはスマートウォッチのような謎の腕時計状の物体を付けられていた。首輪と腕時計。いったい何なのだこれは。
そこまで考えてようやく目を開き始めて身体を起こす。布団ではなく床で寝ていたからというだけでは説明のできない気だるさが残る。薬でも盛られていたのだろうか。目に入ってきたのは、おそらく自分と同じ境遇ではないかと思われる、床に横たわったまま、もしくはゆっくり身体を起こそうとうごめく、何人もの見知らぬ男女。そして、大きなモニターが1つだけある真っ白な部屋。
(あっ、これ間違いない、デスゲームだ……)
「う~~ん……」
「ん? 何なんだここは?」
他の人達も少しずつ目を覚ましていく。すると、それを待っていたかのようにスピーカーから大きな声が鳴り響く。
「やあやあ、みんな目を覚ましてくれたかニャ!? ほら、起きるニャ!」
(ああ、そういうタイプか……)
デスゲームの主催者にもいろいろ居る。完全に姿を表さないタイプの主催者も居れば、最初に登場してくるタイプの主催者も居る。主催者とは別に司会者が居るタイプもあれば、主催者不在と思わせて実は最初から参加者に紛れ込んでいるタイプだって居る。容姿も、紳士タイプ、老人タイプ、仮面タイプ、覆面タイプ、無機物タイプ、非人間タイプ、美少女タイプ、子供タイプ、etcetc……。この声の主が主催者なのか司会者なのかはまだ分からないが、あの特徴的な語尾からして美少女タイプのようだ。
会場がざわついているうちに、部屋に1つの大きなモニターに映像が映し出される。そこに映って居たのは、その可愛らしい声がよく似合う、文章ではとても表せない可愛らしさの猫耳美少女だった。ただの猫耳美少女ならともかく、麻雀牌のデザインを各所にあしらった特徴的なユニフォームを着ており、セクシーさとキュートさが同居している。これは漫画化や映像化されたら人気が出るぞ。えなこや伊織もえが巻頭グラビアでコスプレコラボとかしちゃうぞ。
「ボクの名前は麻生死祈(あさおしおり)、麻雀の”麻”に”生”きる、”死”を”祈”ると書くニャ!」
自己紹介が始まった。なんつー名前だよ、死を祈るな。
「おいコラ! 貴様いったい何やねん!」
参加者の中に居たチンピラ風の男が、早速モニターに向かって全力でイキり散らし始めた。やめとけやめとけ、まだ自己紹介だけだぞ、ルール説明のルの字も始まっていないぞ。こういうタイプは見せしめに第一犠牲者にされるぞ!(※実はデスゲームを一番近くで観戦したかったタイプの主催者だった場合を除く)
「ボクはこのゲームの
「何なんやお前は!」
「司会をさせてもらってるニャ!
「オラァ! 答えろやこのアマ!」
「よろしくニャ!」
「何がニャじゃコラ!」
ボン!!!!!!!!!
「ボンって何やねんコラ! 何や、爆弾でも爆発させたんか!?」
”それ”はきっとそう言おうとしていたのだろう。彼ではない”それ”は。爆発音が響いた時にはすでに彼の頭部は身体から離れており、声は出ずにただ口がパクパクと少し震えただけだった。生首は喋れない。それにしても判断が早い!
「うるさいニャ!! 話を聞くニャ!!!」
突然の爆発に大騒ぎになりかけたが、彼女が音量最大でそう叫んだからか、部屋はすぐには静かにならず多少ざわざわとはしつつも、ある程度の静けさを取り戻した。
「これは参加者多数型デスゲームなのニャ、言うことを聞かない悪い子には容赦ニャくこうなってもらうニャ。」
この台詞が決め手になり、部屋の中は一気に静まり返った。
「今からみんなにはちょっとしたゲームに参加してもらうニャ。失敗したらさっきの子みたくなって貰うけれど、うまくクリアできれば大金を持ってここから出ることもできるかもしれないニャ!」
大金というワードに、一度は静かになったはずの参加者もまた少しざわつきだす。こんな人が1人死んでいる異常な状況でも、大金という言葉には色めきだってしまうものなのだろうか。それとも、ここの集まった面子が大金に反応するクズなだけだろうか。デスゲームに参加するのはこれが初めてだから分からない。
「ここに集まったみんなには共通点があるニャ。それは、”麻雀”。ここに居るみんなは、麻雀が好きよニャ?」
1人の若者がオズオズと手を挙げる。
「はい、そこの手を挙げてるキミ、質問を許可するニャ!」
「あの……ここの皆さんと麻雀勝負でもするんですか……? 僕はたしかに麻雀は好きですけど、命や大金を賭けるのはさすがに……。」
そりゃそうだ。昨日雀荘で14連勝なんてした俺だが、これが全て実力によるものだなんて思ってはいない。麻雀なんて運ゲーに、自分の命や大金を賭けるのは御免こうむる。
「大丈夫ニャ! 麻雀と言っても、麻雀を打つわけじゃないニャ! みんなにやってもらうのは、麻雀牌を使ったちょっとしたパズルゲームみたいなものニャ!」
麻雀牌を使ったゲーム? 上海とか四川省とかか?
「Mahjong Handle Death Game!」
To Be Continued……
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