日々

月明かりが、破れた襖の隙間からちらちらと漏れてきて眩しい。けれど、照らされているこの感覚は嫌いではなく、ただ目を細めて月を見ている。深夜を迎えて、両親が寝静まる頃、僕はやっと、力を抜いてゆっくりする時間ができる。でもその頃には、いつも眠くて、うとうとしながらこうして日記を書いている。


僕が東京へと帰る日が近づくにつれて、母親の過保護な発言が酷くなっていく。「いつでもこっちにいていいんだからね」「あなたの居場所はここにあるんだから」「あなたが帰ってくる時は、私とお父さんで東京にある荷物運んであげるからね」などという言葉を度々言ってくる。苦しいを通り越して、吐き気すら覚える。


恋人に早く会いたい。彼女を撮った写真ばかりを集めたフォルダを開いて、眺めることが多くなった。僕が隣にいて、唯一心が安らぐ人。彼女と一緒にいる時は、ずっと凪のような感覚で、感情がマイナスの方へとあまり動かない。


地元にいた時は、学校が終わり次第、母親からの怒涛の着信やLINEで、友人たちと遊ぶ時間が殆どなかった。家に帰れば、両親の機嫌を伺うことが多かった。数年が経って久しぶりに帰省しても、両親の機嫌をとる癖は抜けていない。父親の大きなため息や舌打ちは、前触れもなく訪れた。父親が眠った後、母親は僕に父親の愚痴を言う。父親には愛想よく接し、母親の愚痴には共感しつつ「お母さんも頑張ってるのにね」などという薄っぺらい励ましをする。母親の険しい顔は、だんだんと柔らかくなっていく。


僕のやり場のないこのストレスは、どこに発散させたらいいか分からず、腹の中はずっと気持ち悪い。地元にいるときは、真っ暗な室内で月明かりをぼんやりと眺めている時間が一番心が安らぐ。あとは、帰省してすぐに小さいサボテンを2つ買った。最初は、母親が日の当たらない場所に置いていて、それを不憫に思い、今では日がよく当たる僕の部屋に置いている。現在は冬眠をしているらしく、水やりは土がカラカラに乾いたときに、たっぷりとあげるようにしている。緋牡丹という名のサボテンは、少しずつ赤い実を大きくしていて、それを見守るのも楽しい。東京に帰った時に、また母親に投げやりな世話をされないか心配。


今日も、眩しい月に照らされて眠る。

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