僕のニャン生と最期の一日。
流花
1話
僕の人生が、いやニャン生が最高なものになったのは紛れもない君のおかげだ。迷子だった僕にお家をくれた。僕と君の出会いはよくあるペットショップとかではなく駐車場。親も兄弟もどこに行ったのか、なんなら目の前も目やにで何も見えなかった。僕は置いていかれちゃったのか、ここで死ぬなんて嫌だなって考えていたら君がみつけてくれた。その時僕は何も見えなかったけれど、君の声だけは覚えているんだ。君はその日デートに行く予定だったみたいだね。そのデートは僕のおかげでプールから動物病院になっちゃったみたいだけど。その時の彼女さんは今では奥さんになって、この家を出ていってしまうのは少し寂しかったけど、君が幸せそうで本当に良かった。毎日会えなくなったけどたまに僕のところに奥さんと、あと小さいのも連れてきてくれたよね。僕は遊んでもらえるから結構楽しかったな。たまに引っ掻いちゃってごめんね。僕は遊んでるつもりだったんだけども、、。あと君はなんで僕のことを『たまきち』って呼ぶんだ?僕の名前をつけたのは君じゃないか。2文字を4文字にして呼ぶなんて聞いたことないよ。それに、猫だから『たま』みたいなテンションで名付けたんじゃないだろうな?まあ、僕は気に入っているからいいんだけど。あれからもう17年も経ったんだ。僕はもう年老いて、外を駆け回って遊ぶことは出来無くなっちゃった。こんな姿、君には見せられないな。もうあと何日、ここにいられるか分からないや。もう君には会いたくない。今までずっと楽しかったからそれでいいんだよ。お母さんたちに見送られてそれで僕は、、
玄関が開いた音がした。部屋にはみんないる。僕はすぐにわかったんだよだって、何も言わないで玄関を開けて、それで当たり前みたいに入ってくるんだ。そんなの君しか居ないんだ。
君と目が合った。こんな姿になった僕を笑ってくれるか?もう逃げることも隠れることも出来ないんだ。
「たまきち、元気か?」
元気なわけないだろ。それに、僕の名前は、『たま』だって。僕はにゃーっとツッコミを入れた。君は笑ってる。いつもと何も変わらずに。その後の、「おじゃまします」と言って奥さん、あと小さかった娘も入ってきた。奥さんと娘は僕のことを心配そうに見た。ああ、やめてくれよ。僕はまだ、まだ大丈夫だからさ。ほら、お前らの前でくたばったりなんてしないからさ!
そう言って僕はゆっくり立ち上がった。そして玄関の前に立つ。そうするとドアを開けてもらえるから。
「あら、たまちゃん外に行くの?」
お母さんはビックリしていた。何日も動いていなかった僕が突然散歩をしたいと言い出したからだ。ああ、そうだ僕は散歩がしたい。だってそういう気分だから。
その後僕は外に出て歩き始めた。お母さんと、奥さんと娘と君と一緒だ。みんな僕の歩幅に合わせて歩いてくれる。散歩をすると言っても、そんなに遠くまで歩く元気はもうないので家の周りを1周まわっただけだった。
「たまちゃん、ここ何日もずっと外出たがらなかったんだよ。みんなが来てくれたからだね。」
お母さん、そんなんじゃないよ僕はただそういう気分だっただけだって。
「たまちゃんすごい」
そうだ。僕はすごいんだぞ。君より2年も長く生きているんだから。それに僕はこんなに元気なんだよ。何の心配もないよ。
「俺タバコ吸ってくる」
なんでだよ君はこんな時に。僕が頑張ってると言うのに本当に君はずっと変わらないよ。
「あとでな、たまきち。」
そう言って僕の頭をいつもより強く撫でた。だから、僕の名前は、
「たま 、ありがとうな。」
そう言って君は早足で家に入っていった。僕はその日、君たちが帰ってから深い眠りについて、もう目覚めることは無かった。僕のニャン生は紛れもない、君のおかげで最高のものになったんだ。お礼を言うのは僕の方だよ。ありがとう。
僕のニャン生と最期の一日。 流花 @Rina_integral
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