第11話バラモントの手の者なのか?

変な空間へ放り込まれた。その放り込み方がスゴイのなんの。

魔法ですよ!魂縛の縄は触れた箇所が動かなくなるという効果があるんだろう。それを嫌って、俺をわざわざ魔法で浮かせてポイッとしてくれた。


当然、砕けた。縄のおかげか飛び散ることは無かったが。すぐに復活したので問題は無い。しかし、放り投げた本人のポンコツ騎士の女が、やけに慌てていたのは興味深かった。その他の奴らも、うわ!とかはぁ?とか、・・・。とかそれぞれリアクションしてくれた。


たぶん、俺、めちゃくちゃ弱いんだろうな。


バラさんが村一つ消し去った魔法を使う際に、パンと手を叩いていたがあれは流石に砕ける。それぐらい思い切り手を叩いていた。


でも今回、放り込まれたといっても、割とゆっくり降ろしてもらった。最後に手を抜かれて急に落下したけど、床まで5センチ以内だ。肉体があったならフベッ!と漏らしながらと地面に着地出来るレベル。


ということで、いくら何でも、である。死にたいとは言っているが、身体が弱いというのは引っ掛かるものがある。前世では身体を積極的に鍛えていた。何故なら父親の教えと、激務に耐える為、という立派な目的があったから。

それに、この世界において身体が弱いと良い事がない。いちいち砕けてたら、バケモノ認定で討伐対象と。死ぬ為に仕事をするにしろ、バラさんの元で生きる場所を見つけるにしろ、身体の脆弱さを解消したい。


よって、魂強靭化計画を遂行しようと思う。ちなみに、計画も無ければ遂行しようにも囚われの姫状態なので、どうしょうもない訳だ。解放されたら実行しますよ。


『結局、誰が尋問するのよ。』

キューピッドが言う。


『ここは私に任せてもらいたい。』

ポンコツ騎士が答える。見た目は髪長めの普通の女性だ。彫刻みたいで真っ白い。

『端からその予定だっただろうに。好きにしろ。』

光輝くモゾモゾ爺さん。

『・・・。異論は無い。』

巨人。


キャラ濃いなー。コイツら何する気なんだよ。接した感じでは悪人感は無い。さっきから俺が聞けるように、魂話というやつで話してくれてるし。

正義の味方という感じでもない。バラさんの敵であることは間違い無い、のか?それすらも分からん。一応、敵としておこうか。


ポンコツ騎士以外は何処かへ消えた。瞬間移動や転移をしたのでなければ、恐らくここは例の空間だろう。俺が転生した謎の空間。


『さて、君の名前を教えてくれないか?』

意外と丁寧だ。さーて、どこの爪を剥がれたい?とか言われるかと思ったけど、あぁ、爪無いし、痛みも感じないんだった。

俺は放り投げられたままの状態で答える。

『コータです。よろしく。』

『コータか。珍しい名だな。私はアリアだ、よろしく頼む。まずは、縄を解く事が出来ないんだ。申し訳無い。情報を得る前に逃がすなんて失態は犯せないからな。それでだ、緊張を解す為にお喋りなんて無駄な時間を使いたくない。なので、問おう。お前はバラモントの仲間もしくは配下なのか?』


『まだ違います。あなた達に捕獲される直前に仲間になろうとしましたが、邪魔されたというところです。』


『ふむ。分かった、次の質問だ。コータ、君はバラモントが何をしているのか知っているか?』


『何をしているか、ですか。うーん、調整人のだったという事以外は知りません。たぶん、悪の親玉か幹部なんだろうけど、その悪の組織で何をしているのかは知りません。』


『・・・。そうか。アイツが悪人だと分かっていて仲間になろうとしているのか?』


『はい。』


『具体的に何をしているか知らないと言っていたな。もし、アイツが行った数々の悪虐を知ったとして、お前は仲間になるのか?』


『悪虐ですか。俺自身この世界に来て、たぶん2日ぐらいです。・・・そういえば、眠くないな。飯も食って無いし。あ、すいません。

とにかく、ここに来て日が浅い上に、人間とは関わりたくない。そこにバラさんが現れた。悪人だろうと、必然的に着いていくと思いませんか?』


『なるほど。君にって白馬の王子様に見えると言いたいわけか。』


『うん?この世界にも白馬の王子様って表現方法があるんですね。俺がいた世界にもありましたよ。』


『・・・。はぁ。私の聞きたい事は聞いた。次は君の記憶を直接覗いてみる。その調子が続くといいな。』


『"監査人オーディターアリア・ゾーテが執行する。”』

掌を俺に向けた。すると、感覚の無い俺の身体の中を何かが動いている。意志を持って身体の中を歩き回っている。

『お、お"ぇえ"ぇぇ。』

強烈に吐きたくなる。身体の中の異物を昔の感覚で排除しにかかるが、引っ切り無しにあちこちから何かを引っ張りだそうとしている。

『げぇ"、待っで、な"にじてる"んだ。』

アリアは掌をかざしたまま、静かに目を瞑り、俺の言葉を一顧だにしない。

気持ちが悪い。苦しい。痛みの神経だけを無効にしたうえで、赤ちゃんに、手で臓器を掻き分け、胃の裏を覗いたり心臓を撫で回したり、肝臓を強く握って反応を確かめたりさせている様な感覚。適切な表現が恐らくこれだ。

俺の中の記憶の順序や配置が組替えられ、戻され、何か探している。勝手にイジるなよ。腹を切って掻き出したい。

吐き気と、身体の中を動き回る何か。その何かが俺の大事な物を観察し、手に取り感触を確かめたりしているのが分かる。

理由如何じゃ許さんぞ。死ぬとき以外に苦しむなんてまっぴらだ。だから、前世で死んだのに、またこれかよ。クソが。マジで、マジでふざけんな!ビクンと俺の身体が跳ねる。

『ふむ。君は嘘つきでは無いようだ。』

身体に何もいなくなった。


『おぇ。ううー。ここまでやらなくても。』

なんで、1人で納得するんだよ!アリアさんじゃない、俺だ。自分に腹が立つ。

敵の言葉を信用しない。それは当然で、確証を得る為にこんな拷問じみたやり方をした。それを納得してしまった。

"相手にも事情があるんだよ。この方法が最適かつ最短だったんだろうな。仕方ない。俺が疑われたのが悪い。誰しも、相手が苦しむ事を好き好んでするわけない。"

と。

だいたい前世はこれで理不尽をやり過ごした。父の影響で口が悪い自覚はあるが母譲りの争いを避ける性格もある。

皮肉が効きすぎた言葉で上級生をからかってボコボコにされて以来、雑言は心内に留め質素な言葉で会話していた。


前世はである。


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