第9話悪の親玉のセリフ7位
今まで見た事の無い迫力のバラさん。恐い顔だが、いつもよりキッチリハッキリとした文句にたじろいでしまった。
バラさんは呪文を唱え終わると、突っ込んだ右手を抜き取り俺の方へ顔を向ける。見下ろしてる事に気づき、まだちょっと恐かったので、屈んで目線を合わせた。顔はニコリといつも通りだったけど、余計恐いね。
「魂が2つあったよぉ。無理やりくっつけたみたいだねぇ。魂の記憶が混濁してたみたいだねぇ。」
「皆バタバタ倒れてますけど、さっきの呪文で?」
蘇生された人達が次々と倒れていく。目の間で倒れている男の子のように、目を瞑り、崩折れて。
幽体離脱のように魂は肉体から開放されて、楽しそうに動き回ったり、呆然と立ち尽くしたりと様々だ。
そんな時間は僅かで魂達の体表から、光の粒が立ち昇りパアッと霧散していった。
とてもきれいな光景と裏腹に、引き攣った顔でそれを見ていた俺は切なくなった。
アイツらも人間なんだよな。少なくとも復活して生きていたはず。
・・・。
胸が締め付けられたが、未だアニメを観ている様なそんな感覚だった。
「そうそう〜、さっきの呪文でぇ魂が帰るべき所へ帰っただけさぁ。」
「あの、最初からこうするつもりだったんですか?」
「いや〜、調べたい事があったからぁ、連れて帰ろうかと思ったんだけどぉ、不遜な輩がいたからねぇ。」
やっぱり、人間は大嫌いみたいだ。ますます、会話の内容が気になるぜ。
「それで、これからどうするんでしょうか。蘇生された人間も普通の人間もいない。どこかで実地訓練をするんですか?」
「いやぁ、とりあえず初歩しか教えてないけどぉ、訓練は終了だねぇ。後は〜、仕事しながら覚えていけばいいよぉ。そしてぇ、今から仲間に会って貰おうかなぁ。君、見どころがあるからねぇ。僕達とも分かり合えると思うんだよなぁ。」
バラさんは立ち上がり、両手を強く叩いた。
手が割れる!と面食らったものの、ヒビが入る程度で崩れなかった。なんで?
パァーンと大きな音が両手から聞こえると、ドドドドと地響きが鳴り今まで居た村は消滅した。
バラさんを中心に同心円状に一つ残らず崩れていき、塵と化し風に漂う。
後ろにあったはずのさっきまで居た建物も根こそぎ消え去り、整地されたキレイな大地が広がった。
これ、魔法?威力バケモノじみてるよ?たぶん、俺には使えないだろうな。自信ないし。パワーアップの秘訣があるんだろう。
その中にポツポツと人影が見え始めた。どこからとも無く不意に現れ、こちらへと近づいてくる。というか、周囲を囲まれている。20人近くの人影は徐々に大きな輪を狭めてくる。
「あ、あの、バラさん?皆さん仲間ですか?囲まれてますけど。」
「ん〜?フッ。これだから、魂生活は辞められないねぇ。」
バラさんは不敵な笑みを浮かべ俺を見る。
「コータ君。過去に何があったかは知らないけどぉ、ここからが新たな人生だよぉ?人間とは決別して新しく生きる気はないぃ?完璧な生物を目指してさぁ。」
と悪役ボスが言うセリフ第7位みたいな事を言われた。
正直、それも悪くないと思った。
人を信じる事にも頼られる事にもうんざりしていた。全てを投げ出そうと何度も考えたが、ままならないと何度も踏み止まった。でも、最後は踏み止まれなかった。最後まで俺を助けようと藻掻いた父を裏切って、俺はここにやって来た。
やはり俺は死ぬべきだと今でも思う。それに、前の世界で出来なかった俺が、この世界で何か出来るとは思えない。
この世界はそんな想いを簡単に打ち破った。
目の前のバラさんが証明だ。
信じずとも頼らずとも生きられる。頼られても断ればいい。ここに両親はもういないのだから。
困っている人がいて、苦しんでいる誰かがいても、見捨てればいい。この村の人達を俺は見捨てた。今更それを取り消したり、取り返す善行なんてありはしない。
強さは人を踏み躙る事が出来るし、自分を守る事も出来る。誰かを助けたいなら自分が安全になってからでいいはずだ。前の世界でそう考えられれば良かった。
死なない身体に、実感は無いけどチート能力。
前の世界で我慢してきたんだから、バラさんが悪いやつで、俺は利用される駒かもしれないけど、バカみたいに性善説を信じて、生ゴミを胃の中に突っ込まれる様なあんな気持ちにはならずに済むはずだ。悪の親玉だと分かっていれば、裏切られても裏切りだとすら思わないだろう。当然の事をされた、程度の認識かな。
だから、付いて行こう。まだまだ死んで消えてしまいたいが、理想に手が届くなら生きる気力も出るかもしれない。前世は死んで父さんとの約束を果たせなかった悔いしかないけど、改める機会がここに在るなら賭けたい。駄目だったら死ねばいいからね。
「俺で良ければ、」
と手を差し出すと、麻縄が手から腕に巻き付いた。
「へ?」
変な声を出すほどに奇妙な感じがした。縛られている感覚は無いが右手が全く動かない。全方位から麻縄が蛇のように飛んできて、何もできず全身に巻き付かれた。声すら出せず、どうする事も出来なかった。
バラさんは舌打ちしながら俺を見る。決して、俺に怒っている訳では無いと思う。何故かバラさんに麻縄が届く前にUターンしていく。これも魔法かーと、アホの変なミイラは考えていた。
『それは魂縛の縄と言ってねぇ、いや〜時間がないから説明は今度にしよぉ。例の呪文ねぇ、練習して使いこなせるようになっておいてねぇ。時期が来たら迎えに行くねぇ。これが最後の教えだねぇ。しっかり聞いて覚えてねぇ。』
え?覚えておくけど助けてくれるよね?バラさん?
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