第2話オリエンテーションのはずが、未だ講義終わらず。次回こそ村に参る。
オオタ村なる村については、ハッキリ言って何も分からない。
『ん~。肉体の目による情報については細かく知る必要は無いよぉ。仕事には魂の目さえあればイイんだからぁ。』
と言われた。見える景色には、真っ暗闇の中に多種多様な人型や四足獣型、ボール型の魂が跋扈している。
それらが歩いていたり、走り回っていたり、転がって急に止まったり、、、ん?なんか、ブルブル震えてるな。・・・!震えてる!?
『あ、あの!あれあの〜・・・』
いや〜面倒だ。震えてる魂に似た形態のやつ腐るほどいるな。伝えられる特徴がない。やっぱ肉体の目って必要なんじゃないかな?
『うんうん〜。震えてるねぇ。大丈夫ぅ、気付いてるよぉ。ただぁ、アイツをどうするかぁ、決めるのはコータ君だからねぇ。とりあえず簡単にお仕事の概要を説明しますぅ。』
どうするか?何かしなきゃいけないのか。ちょっと緊張するな〜。
『ここオオタ村は〜、ある魂が実験的に介入している村ですぅ。何を隠そう〜、コータ君を転生させた魂がここに介入しているのですぅ!』
『・・・え、はい。』
『あれぇ?ソイツの村なのか〜。無茶苦茶にしてやるぅ!!とか言うかと思ったんだけどなぁ。転生自体迷惑なんでしょう〜?』
『あ〜、すみません。とにかく仕事をこなして速くくたばる事が目標なので、転生係はどうでもいいです。』
『ほ〜ん。では続きですぅ。ある魂は〜、この村の名前でもある"オオタ"と言いますぅ。オオタが何の実験をしているか〜というとぉ、魂の剥ぎ取りですぅ。』
『剥ぎ取り?確か、似たような言葉を聞いたような。あ~、引き裂かれる、だった。俺達魂は魔法によって引き裂かれるかもしれない、と言ってましたよね。それと似たようなものですか?』
『違いますねぇ。魂が引き裂かれるとぉ、魂の源泉〜、もしくは〜、源泉近くにある震えた記憶を基礎にして引き裂かれますぅ。魂の源泉を守る防壁が厚ければ厚いほど引き裂かれる影響は少ないですぅ。理解して頂けてますかぁ?魂講座の応用編ですよぉ。』
『魂が震える記憶は源泉を堅固に守るもの。源泉の守りという事は、記憶の奥底にある源泉周辺に配置される。その守りに使われる記憶が引き裂かれるという事でいいですか?』
『オーケー。ちなみに、その守りに使われる記憶は”源泉の囲い”や”囲い”と言われますねぇ。その囲いを
『すみません、”えせこん”とは何でしょうか。』
『端的に言えば魂の紛い物ですねぇ。まずぅ、魂は不変であり魂の源泉もぉ、ヘマさえしなければ不変な訳ですぅ。その不変の魂の原動力たる源泉は~、膨大という言葉が陳腐なほどに途方もない力を秘めている訳ですねぇ。では~
つまり、ザコい魂ってことか。
『剥ぎ取りは~、僕達魂が人間の魂を肉体から剥ぎ取る訳ですぅ。用途は様々ですがぁ、オオタの場合は死者の蘇生をしてますねぇ。』
『できるんですか!?死者蘇生!』
『出来ますよぉ。見に行ってみます?・・・。そうかぁ、”ガワ”がボロボロだぁ。ん~。いいか。とりあえず行きましょう。』
『行くってどこに行くんですか?』
『村に直接行ってぇ、蘇生された魂がどうなっているか確かめてみるのがいいですよぉ。』
そう言うとバラさんは、村の方を眺めながら首を忙しく傾げる。
『うーん、あれとぉ、あれはダメかぁ。あれとぉ、あれぇ、あれぇ、あれだねぇ。』
ピタリと首の動きが止まると、むーーーーん、と唸りながら右手を村へとかざす。唸り過ぎて息が続かないのでは?でも、魂だから・・・などと考えていると、バラさんの唸り声が消えその右手はゆったりと閉じる。握った右手を矯めつ眇めつ。
『よーし。コータ君そのまま動かないでねぇ。』
バラさんは返事を待たず俺に近づき、握った右手を俺のおでこの辺りで解放した。
すると、おでこの辺りから何かが揺らめきながら顔面を覆った。もしかしたら、頭をすっぽり包んでいるのかもしれないが、生憎なんの感覚もない。揺らめき、ヴェールは包み終わったのか静止し数舜、ピタッと顔に吸い付いた。急なことに動揺こそしたものの、感触などは皆無だった。
『あの・・・・・・・・・・え?』
意識は空間に向いた。ただの闇だと思っていて空間はモゾモゾ何かが蠢く暗い空間だった。でも、さっきまでとは違いほんの少しだけ淡い黒の様に思う。俺の魂に似てるな、という印象だ。
グロいのは相変わらずで、もちろん喉の奥から「ヒッ」という声が出たが、なにも動揺していない風を装う為にとりあえず数回頷いた。
バラさんに俺の身体、もとい魂がどうなっているのか問おうと視線を向けると、そこには美男子がいた。白馬の王子様役は確実に受かるだろう容姿だ。
「あ、あなたは、バラさんですか?」
『そうだよぉ。見えるようになったねぇ。』
「どうかなぁ、聞こえるぅ?」
「は、はい。聞こえます。魂の会話とあまり変わらないですね。」
「変わらないよぉ。自分の身体見てごらん~。ほい。」
バラさんが指さした先に姿見が光の粒から構築されていく。声にならなかったが、荘厳で美麗だった。出来上がったのは枠が真っ白のゴテゴテ彫刻がなされた姿見で、趣味には合わないが、出来上がる過程が美しい。感動。
「ほらぁ、ボーーっとしてないでぇ、身だしなみチェックーーー。」
バラさんに頷き、姿見へ正対するように歩く。そこにいたのは紛れもない自分だった。ボケっとした顔に、中肉中背、何の取り柄もない元日本人。そういえば、鏡はいつからか見なくなったな。こんなごみ人間誰しも見たくないだろうし、当人が一番嫌いなんだし。やっぱり俺、気持ち悪いな。見てられなくなった俺はバラさんに視線を移す。
「これは、”ガワ”が戻ったという事ですか?バラさんが治してくれたんでしょうか?」
「これは~、貸してるだけだよぉ。村に行くのに”ガワ”が無いのは不便だし大混乱が起きるからねぇ。」
そりゃそうか。全身血だらけの顔面ボロボロの人型生物が襲来したら、やあ!いい天気だね。なんて能天気な会話もできないよね。
「あの、服はどうしたらいいでしょうか。流石に、ブラブラさせながらブラブラするのも忍びないですし。」
「では~、魔法を使ってみましょうかぁ。イメージするだけですよぉ。どうぞぉ。」
「イメージですか?」
うーん。魔法って詠唱とかあると思ったんだけどな。いや、郷に入っては郷に従えだ。イメージねー。服か、、、スーツかスウェット以外に思いつかない。
「ん~?また、堅い服だね~。儀礼用の服じゃないのそれぇ。もうちょっとラフでもいいんだよぉ。」
おお。全く感動しない。魔法初体験が、スーツ姿になることか。残念だ。ていうか、これ堅いのかな?
そういう王子さまはナポレオンボナパルトみたいなんだけど、そっちの方が堅くないか?ん?この人フランス人なのかな?
「ふらんす?いや違うよぉ。前にも言ったけど君のいた世界とは無関係だよぉ。この服は趣味だよぉ。それに何かと都合がいいんだぁ。それでぇ、コータ君はそれでいいのぉ?」
「はい。これで構わないです。」
結局、これしか人前に出られる服は思いつかないな。色々あってずーーーっと実家に引きこもってたからなー。随所で記憶にいじめられるのが、この世界の掟なのか?嫌な記憶だよホント。
「では~、オオタ村へ上陸した後~、魂の剥ぎ取りの成果、つまり蘇生された死者を見に行こう~。仕事はそのあとだねぇ。」
そういえば、仕事のオリエンテーション的なやつだったな。結局、仕事内容すら教えて貰ってないんだけど、大丈夫かなこの人。教育担当に向いてない気がするな。イケメンだけど。
「う~ん。イケメンて最後につけても悪口は帳消しにならないよぉ。」
心読むの反則でしょうが。死ねる日まで、遠い気がするな。
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