第4話 やってみたかった事

 女達はそそくさと店の奥に消え、代わりにチンピラが出張って来た。


 全員ニヤニヤとしながら当たり前の様に腰に差している剣を抜く、異世界のぼったくりもなかなかに怖いね。

 グリフさんは普通にビビっているので俺が前に出るとするか。


「1つ確認だが、お前らはその剣を抜いて何をする気だ?」

「ああ?そんなに知りたいのか?なら…」


 チンピラが剣を構える、しかしその剣は刀身が半分程先が消えていた。その半分は俺の右手が掴んでいる。


「………は?」

「もう一度聞くぞ?この剣で、何がしたかったんだ?」


 その剣の切っ先を、俺の左手の平に押し付ける。すると切っ先はグニャリとひん曲がった、魔王の身体は頑丈なんだよ。


「あっええ………?」

「これが最後だ。お前らは何がしたくてそこに間抜け面を並べているんだ?」


 俺は務めて冷静な口調で確認する。さっきまで汚い笑顔だったチンピラ達が全員ガクブルしている、これには理由があった。


 それはブサメン魔王の魔王パワーだ、今回のは分かり難いが敵に問答無用で恐怖の感情を魂に刻みつけている。


 いわゆる恐慌状態を強制する魔法とかってゲームにあるがアレに近い、連中にはこのブサメン魔王が何でか分からないが途方もなく恐ろしい存在に感じられているだろう。


 チンピラと言えども物理で殴ると水風船よろしくパンッとなってスプラッターな感じにしてしまう、それは哀れなので穏便にしてやった訳だ。


「えっあ、あのおっお客様がウチの譲に不満が─」


「そりゃあ安い金払うんじゃないんだ、要望くらい出すだろう?お客様は神様だ~~っとかアホな物言いをするつもりはないが……」


 俺はチンピラ連中を睨むようにして言った。


「さっさと俺達にちゃんとした女の子を寄こせ、もし同じのを呼んだらお前ら全員……こうだ」


 俺が両手で剣の刃部分をにぎにぎする、すると手の平の上に小石くらいの物体が残った。

 それを見たチンピラ連中はとても素直になってくれたよ。


 その後は正に天国だった。チンピラ連中と逃げたおブスさん達を店の左右の端っこに並べて俺とグリフさんは店のど真ん中でカワイイ系から綺麗系まで様々なタイプの美女を侍らせている。


「おお~~~!最高だなゼオン!お尻触っても太ももツンツンしても物凄い笑顔で返してくれる!これがお店の女達だよな!」

「はいっ胸をツンツンしても腰に手を回してもとても綺麗は笑顔をしていますねグリフさん!」


 まっその笑顔の裏なんて分かりゃしないけどな、こっちは半分脅してる様なもんだ。今さら甘い顔なんてしない。


 先に理不尽にぼったくろうとしたのはそっちのお店の人間だからさ、同じ店の君らが責任とって俺達を楽しませる。それでおあいこだよな。


 俺、1度でいいからこう言う理不尽にぼったくろうって店を真正面から黙らせるってやってみたかったんだよな。


 この異世界に来て1番楽しく飲んでいるその時、突然の悲鳴が外から聞こえた。


「キャアアアァアーーーーッ!」


「………今の声は、外からですか?」

「外で暴漢が暴れているのかも知れんな~~」


 グリフさんと話をしているとチンピラの一人が店に駆け込んで来た。


「たっ大変だ!ゴブリンが!ゴブリン大量に町に侵入しやがったらしい!」


 ゴブリン?あの異世界におけるキングオブ雑魚のあのゴブリン?そんなのお前らはチンピラで何とかしろよ………。





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