第2章
第1話 夜空に希望を求めし者達
「ふうっ薪は集め終わったぞ、火をつけてくれゼオン」
「分かりました、今日はこの辺りで夜営するとしますか」
今は夕方、もうしばらくすれば夜のとばりがおりてくるであろうって時間だ。
ガンマの街を出て数日程、最初は不慣れだった3人旅も多少は慣れてきた。カリオは変わらず絶対に顔を見せようとしないし、グリフさんは魔法使いの筈なのに1度も魔法を見せてくれないがこれでも大事な旅の仲間だ。
ブサメン魔王となって世界を支配する筈だった俺が、まさか人間の仲間を得て世界を旅する事になるとはな。世の中何が起こるか分からないとはよく言ったもんだ。
「………なあ、普通さグリフ。お前が魔法使いなんだから魔法で火を起こせよ」
「フッカリオよよく聞け、わたしは……炎の魔法のんて使えません!」
「んじゃあ何の魔法が使えんだよ!」
「落ち着けカリオ、グリフさんの魔法きっと危機的状況を1発で逆転させるタイプの魔法か、発動に色々と条件がある魔法なのだろう」
実際の所は分からない、魔王パワーで確認もしていないからな。それにグリフさんがたとえ強くても弱くても別にどっちでもいい。大事なのは暇なときに駄弁ると話が合うかどうかである。
「たくっ魔法使いのおっさん、もうガンマの街を出て何日も経つけどいつになったら次の街に着くんだよ」
「そうだの~~あと歩いて3日って所じゃないか?」
この世界は1日歩けば次の街があるなんて事はない、そんな等間隔にポンポン街が出来るか。電車の駅じゃないんだぞ。
「オイッゼオン!お前のやたら便利な魔法で一気に次の街まで行けないのか!?」
「………ん?行けるぞ」
「「…………………」」
おや?俺の言葉に2人が固まった。
「いやっいやいやいや!オイッ!オイコラオイッ!それじゃあなんで俺ら歩いてんの?この何日間の徒歩移動はなんだったのよ!?」
「そうだそうだ!もう何日もシャワーすら浴びてないんだぞ!直ぐに行けるならなんで行かねぇんだ!ふざけんなよこのクソオヤジ!」
シャワーって……まるで女子みたいな事を言い出したなコイツ、グリフさんまで俺とか言い出してるし。仕方ないな、ここはちゃんと理由を説明するか。
「それには訳があるんだ」
「………訳?」
「そうっ……何故なら初めて行く街とは基本歩きで行くのが王道だからだ」
「………………アッ!?」
ドラクエとかもそうじゃないか、ルーラは行った事のない街には行けないんだよ。
「こうやって歩いて旅をして過ごした夜を重ね、俺達は本当の仲間にな──」
「ふっざけんなよテメェエーーーーッ!こちとらずっとトイレとか大変だったんだぞボケカスコラァーーーッ!」
ヤバい、ブチ切れバーバリアンに進化しやがった。俺が胸元を両手で掴まれぐわんぐわんされているとグリフさんが何か言い出した。
「……仕方ない、ならばこのグリフが。ゼオンが次の街に行きたくなる情報を教えてしんぜようか」
「情報ですか?」
バーバリアンには魔王パワーで金縛りを喰らわせて地面に転がしたので安心だ。しかしグリフさん、幾ら貴方でもこのブサメン魔王の冒険の美学を曲げさせる事は──。
「今わたし達が向かっている街の名はフランクフルト。旅をする冒険者や行商人の為の宿場町だ……そしてそんな街故に、アレがある」
「アレ………とは?」
「フッ……………女の子と楽しい時間を過ごせるお店だよ!女子がウハウハでパフパフだぞ!このアガン子爵から貰ったお金で豪遊するぞゼオン!」
「…………………」
「……ハァッオイッエロ魔法使いのおっさん、幾らこのゼオンがアラフォーでスケベでモテないからってそんな店に行く程落ちぶれては─」
「行きましょうか!グリフさん!」
「ええ~~~~~~~~~っ」
俺は魔王パワーで自分と2人を空へと浮かせた。そしてスーパーマンが空を飛ぶみたいなポーズを取って空の人となる。
そうっ俺達は夜空に希望を求めて飛び立ったのだ……。
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