第9話 ゲームならやれない方法

 俺がここについて来た理由は冒険者、騎士、そして魔物の戦いを間近で見たかったからだ(女冒険者の事は既になかったことにしてます、だって思い出すと悲しいからな)。


 その用が済んだのだから後はさっさと済ませてしまいたいのである。それに少しでも速い方がアガン子爵の愛娘を無事に助けられる可能性が……僅かには上がる、正直まだ手遅れだとしか思えないが。


 それこそ異世界とかラノベのご都合主義に期待でもするしかないと言う話だ。


「ゼオン。ダンジョンに小細工とは、どういう事だ?」


「この洞窟はダンジョン、つまり魔物達が魔法によって手を加え自然の物とか別物に作り替えた物なんです。そして俺は元は魔王、ヤツらに出来て俺に出来ない事はない、魔王の力でこのダンジョンに最深部へと続く全く新しい直通の通路を作り出します。新しい通路なので罠も魔物も存在しませんから俺達だけでも問題なく通れる」


 ゲームならほぼ絶対に出来ないダンジョン攻略法だが、チート持ちの魔王ならそんな事も出来てしまうんだよ。


「……ゼオン、その魔王設定は掴みのトークじゃなかったのか」


 なんでファンタジー世界の住人であるグリフさんが掴みのトークなんて言葉を知ってるのか分からないけど、俺は適当に頷いた。


「しかしその最深部とやらには魔物の精鋭がいるとか、わたし達だけでは戦力として心許ないのでは?」


「大丈夫ですよ、俺の魔王の力を持ってすれば魔物が何千何万いても問題ありませんから」

「……ハッ!随分と大きな事を言うなゼオン、その大口を叩く時は魔王に見えなくもないぞ?」



「相手との実力差が碌に分からないうちはまだまだ最強なんて程遠いぞカリオ」

「……なんだと?」

「フッゼオンがそこまで言うのなら行こうか、どうせなら首魁を討って子爵の娘を助ければ大金も手に入るしな」


 この言葉面だけ見るとファンタジーな世界らしい会話だが、実際は黒髪黒眼のブサメン魔王と茶髪のオッサン、そしてミイラ頭と言う残念な面々の会話なのだから悲しいよな。


 今度は壁に手をつき魔王パワーを発動、壁に人が数人問題なく通れる通路が現れた。


「この通路の先は階段です、下まで移動すれぱ壁1枚隔てた向こうがダンジョンの最深部に繋がっているでしょう」


「おもしれぇっ!オレのハンマーの力を見せてやる!」

「わたしの魔法も披露してやるとしよう」


「やる気十分ですね、では行きましょう」






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