第5話 人妻なんてリアルには存在しない

 男3人でガヤガヤとむさ苦しいやり取りをしていると、屋敷の大きな扉が開かれた。


 他の冒険者達は中にゾロゾロと入る、俺達も入ると長い一本道の左右にズラ~っと全身鎧を着込んだ騎士達が立っていた。


 その列の真ん中の道を冒険者達が進むと結構な広さの中庭に出る、そこを見下ろせる高さ、でかい屋敷の2階のバルコニー的な場所に2人の騎士を引き連れて上等な衣服に身を包んだオッサンが現れた。


 この世界に来てからオッサンの姿を視界に入れる機会が増えたな、不快極まりない話である。


 金髪を短く刈り上げたナイスミドル、貴族な上に若い頃はさぞかしモテただろうと言うイケオジだ。魔王の力で真っ先に潰したくなる領主である。領主が何か喋りだした。


「よくぞ我が呼びかけに応じて屋敷に集まってくれた、勇敢な冒険者よ!ワシはガンマの街の領主アガン・ボニードである。冒険者の諸君に依頼するのは数日前に魔物に攫われた我が愛娘メアリーを取り返す事だ!」


 領主アガンは大きな声で更に言葉を続ける、しかし俺には普通に気になる事があったのでグリフさんに尋ねる事にした。


「グリフさん、1つ良いですか?」

「なんだ、ゼオン」

「数日前に攫われたって……それは今からどうこうしても手遅れなのでは?」

「………………」


 だってそうだろ?攫われた数時間後とかでも大分ギリギリだってのに数日前?バカだろう。


 その魔物がメアリーって子を食糧的な目的ならとっくに腹の中だろうし或いは性的な……もうぶっちゃけるとレイプしたり魔法で肉奴隷とかにするのが目的ならどの道手遅れだろうに。


「そのメアリーと言う女性が目的なら既にこの領地から離れた所に逃げているって話か?ゼオン」

「それもある、後はもうとっくにヤられ──」

「止めなさいゼオン、そう言うのはキッパリ言うのは……」


 俺の言葉にカリオがジト目を向けてくる、しかしワザワザ女性を攫うとかそれ以外の目的があるとでも言うのか?。そんなバカな。


 するとグリフさんがその辺りについて補足説明をしてくれた。


「……聞いた話だが、その魔物達は元はアガン子爵の愛娘メアリーとその奥さんの2人を攫おうとしたらしい。それを何とか阻止したんだそうだ、しかし後日手紙が届いた。娘を返して欲しくば北の洞窟にいるので奥さんを奴隷として差し出せっとな」


「……なんてヤツだ、腐っている」


 人妻なんてカテゴリーは、リアルには存在しない。何故なら子供がそれなりに大きいならその母親はリアルだとどうしてもお年を召すからだ。故に人妻と言うカテゴリーはフィクション、二次元にしか存在しないのだ。だって美人じゃない人妻とか……嫌なんだ!。


若くて美人で大人の色香を持つ存在、それが人妻なんだ。断じて普通のオバサンではない。


「娘と母親を等価とするとは、魔物の感性は理解が出来きないな!」

「ゼオンよ、お前その魔物達の大将を名乗ってたんだよ?」




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