7.25.Side-応錬-厳重な設備
今いる部屋をあらかた物色し終わり、圧縮した新たな肉塊をゴミ箱に投げ入れる。
やはり重要な管理場所らしいので、天使や人間の出入りが多い。
これだけ始末してしまうと、侵入者がいると気付かれるのは時間の問題かも知れなかった。
敵に発見される前に、テケリスを探したい。
しかし場所がわからない。
応練は『操り霞』を使ってそれらしい存在を探しているのだが……不思議なことに発見できなかった。
密閉されている場所に隔離されているか、そもそも人間らしい姿はしていないかもしれない。
これは探すのに時間がかかってしまうな、と思っていると、アブスが髪の毛を引っ張った。
「いてて……。なんだよ」
「──」
「あっち?」
アブスが指し示す方へと歩いて行ってみれば、ビーカーやフラスコなどといった研究によく使われている印象を受ける試験管のような物がたくさん置かれていた。
薬品棚というのが一番手っ取り早いだろう。
どこまでも応錬が元いた世界の施設に近いな、と不思議に思いながら見ていると、アブスがそのうちの一つを指さした。
それは小さな瓶。
中には不気味な色合いの液体がチラチラと変色しており、それはなんだか蠢いているように思えた。
「うわ、なんだこれ……。アブス、これなんだ?」
「──」
「まぁ聞こえねぇよなぁー。んー……」
キュポッと蓋を開けてみる。
危ないとは分かっているが、こういう薬品を見ると匂いを嗅ぎたくなるのだ。
スンッ……と鼻を近づけて臭いを嗅いでみるが、無臭だった。
変な臭いがすると思っていたのだが……。
まぁいいか、と思い蓋を閉めようとした時、その液体に目玉が生えた。
「おっ!!?」
「──!!?」
目玉は瓶の中でしばらく周囲を見渡していたが、ようやくこちらの存在を確認したようで応錬とアブスを視界の中に入れた。
応錬の顔を見た時、その液体に生えた目玉は無表情だったが、アブスを見た瞬間目玉が飛び出るのではないだろうか、という程大きく見開かれた。
すると瓶が揺れ始める。
これはマズいと思って即座に蓋をした。
その二秒後、液体が暴れに暴れまくって応錬の手から逃れようとする。
だがこれが割れれば何が起こるか分からない。
応錬の渾身の力で暴れている液体を押さえ込む。
「なんっなんだこいつ! おいアブスなんだこいつ!」
「──!」
「聞こえねぇ……!」
小さすぎるアブスの声は届かない。
その代わりゼスチャーで何とか説明しようとしているようだったが、明らかにヤバそうな液体を手放し、落として瓶を割りたくはない。
今の応錬にアブスのゼスチャーを見るほどの余裕はなかった。
「ええいくそっ! 『無限水操』!」
コポッ。
少し多めの水を作り出し、その中に瓶を投げ入れる。
手に持っている時よりもこちらの方が制御しやすそうだ。
未だに手に残っている振動の感触を拭うように手をぶらぶらとさせた後、暴れ続けている瓶を眺める。
「なんなんだまじで……。おいアブス、これなんだ」
「──!」
「ん?」
そこでようやくアブスが何かを伝えようとしていることに気付いた。
液体を指さし、次に自分を指さし、その次に自分の頭の上に手を置く。
正直、何を伝えようとしているのかさっぱりだ。
だが何かに気付いているということは分かる。
無害かどうかだけでも教えて欲しいのだが、その前にこの暴れ具合を鎮めて欲しいところだ。
「えっと、こいつ知ってるの?」
「──!(コクッ!)」
「あ、知ってんの!? え、今これ出しても大丈夫!?」
「……」
「そこは分かんねぇのかよ!」
結局これはこのまま置いておいた方がよさそうだ、ということにして、一旦静かになるのを待つことにした。
と、そこでまた研究室に三人の人間が入ってこようとしていたので、即座に始末してゴミ箱に投げ入れる。
さすがに殺し過ぎているので、そろそろ場所を移動した方がよさそうだ。
だがこの調子であれば、ここにいる研究者全員を始末してから調査した方が早いような気がしてきた。
「……そうするか」
「──?」
「『泥人』、『水龍』」
応錬は分身を二体と、水の龍を作り出す。
それに『暗殺者』も付与して気配をかき消し、この施設にいるすべての研究員を始末する様にと命令して部屋の外に向かってもらった。
数分で『操り霞』で感知できる研究員を手にかけ始めたようで、この調子でいけば十五分ほどで掃除をする事ができるだろう。
破壊活動はあとでアブスと鳳炎に手伝ってもらうとして……。
やはり目の前にあるこれを何とかしたい。
アブスが何か知ってると言うし、この暴れ具合を鎮める事さえできれば何とかなると思うのだが……。
「どうするか……」
「──……」
アブスが声をかけてみるが、そもそも聞こえないのだから水の中に居て、さらに瓶の中に閉じ込められている液体に聞こえるわけがない。
というより、声をかけて反応するのだろうか?
目玉が生えてきたのでもしかしたら生物の可能性もあるが……。
如何せんそれは……考えにくい。
「あ、そうだ清め浄化使えば何とかなるんじゃね?」
「──?」
「ほい『清め浄化』」
パリィンッ!!!!
水中の中にあった瓶が粉々に割れた。
「んっでだよ!!!!」
「──!!?」
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