7.19.空震
空気を振動させる技能で……当たったら勝ち?
鳳炎さんの攻撃は敵を狙う必要があるのはなんとなく分かるんだけど、空気を振動させるなら狙う必要とかないのでは?
アマリアズにそう聞いてみると、コクリと頷いた。
やはり狙う必要性のない技能の様だ。
「強くない?」
「だから言ったじゃんか。『空震』の攻撃範囲はとにかく広いよ。地震と同じ規模くらい。ただ攻撃速度は少し遅いかな」
「そ、それに触れるとどうなるの?」
「大体の建物は破壊されるし、人間とかの場合は動けなくなる。至近距離で喰らえばダメージが入るし、遠距離攻撃は大体防がれる」
「非の打ち所がないくらい強い技能なんだね?」
「それ一つあれば大抵のことは何とでもなるからね……」
今アマリアズが言ったことに加えて、そのオールニックっていう天使は数百年間生きているはず。
技能の練度も高いだろうし、普通に戦っても絶対に苦戦する未来しか見えない。
更にアマリアズは詳しく覚えていないけど、他にも技能を持っているとの事。
なにを持っているかでも戦闘の幅は広くなるし、耐性技能とか持ってたらそれだけで厄介だもんなぁ……。
ううん、できれば戦いたくない相手だけど、そう言うわけにはいかない。
この一ヵ月の何処かで、絶対に動いて来る……。
狙いは……。
「……アマリアズだよねぇ~」
「なのかなぁ? あの四人が復活した以上そこまで大きく動いてくることはないと思うんだけど……」
「いや、そもそもガロット王国の親御さんのこと忘れないでね?」
「うっわそうだった」
今でも抗議活動と化してるんだろうなぁー。
一時はウチカゲお爺ちゃんがスレイズさんと話し合って穏便に済ませただろうけど、未だにアマリアズを返せっていう声は上がってるはず。
スレイズさん苦労してるだろうなぁ……。
って、その手伝いに行ったのかお父さん……。
無事にガロット王国の国民たちに天使は敵だって教えてあげられたらいいんだけど。
一筋縄ではいかなさそうだなぁ……。
「で、もう一人なんだけど……」
「あ、うん」
「名前をメコニィ。応錬さんと同じくらいの技能を持ってる天使だね……」
「四十個?」
「うん、それくらいかなぁ……」
「馬鹿」
もうそうとしか言えないよ?
え、なに?
死なない天使に、最強の技能持ってる天使に、めっちゃ技能持ってる天使?
なーに作っちゃってんのアマリアズ本当に。
あとのこと考えて作ってよ!!
「で、所持してる技能は……?」
「氷属性の技能が多かったのは覚えてるかな。多分魔神のルリムコオスが出張ってくれれば完封できる相手」
「あれ、そんなに強くないんだ」
「そうなんだよ。まぁただルリムコオスと相性がいいってだけなんだけどね」
「ていうか誰?」
「アトラックさんの奥さん」
「へー」
まだ会ったことないなぁ。
まぁその天使はルリムコオスさんって人が戦ってくれれば一番いいってことは分かった。
問題は残りの二人だねー……。
アルテッツっていう天使、僕みたいに仲間を守るために死んでいるのかな?
耐性を作り出してるって感じだったしね。
ずっと準備してるみたいだし、その天使をまずは警戒しておかないとな。
倒せないのって一番厄介だと思うし。
僕が言うのもなんだけど。
「ま、なんにせよまだ私たちからは動けないよ。相手の動きも分かってないし、情報も掴めていないんだから」
「そうだねー……。応錬さんと悪魔たちの情報を待つしかないのかぁ」
「今はね」
ピリッ……。
「……ん?」
「どうしたの?」
「な、なんか変な気配が……っていうか、イウボラの気配に近い何かが……」
「どっちの方角?」
「あっちだね。屋敷の方」
「イウボラがまた分身から力を引き抜いただけじゃないのー? まぁ見てみるけど」
そう言いつつも、アマリアズは『空間把握』を使って様子を確認してくれた。
先ほどいた場所にはもちろんウチカゲお爺ちゃんやイウボラ、リゼさんたちがいるようだけど、妙な気配を感じたのはそこじゃない。
もう少し奥の方。
そう説明して確認した貰った瞬間、アマリアズの顔が引きつった。
「は!?」
「え、なに……?」
次の瞬間、アマリアズはその場から駆け出した。
急なことで一瞬反応が遅れたが、僕も即座に走り出してその後を追う。
「何々どうしたの!?」
「アシェラさんだったよね保護した人!!」
「そ、そうだけど!?」
「そんな事ってあるのかよ!! くそう! 今まで戦ってきた奴らって全員──」
バガアンッ!!
屋敷を破壊しながら、何かがものすごい勢いで飛んできた。
即座に僕が前に出て、それを受け止める。
勢いを殺して受け止めたところでその姿を見てみれば、ケンラさんが怪我をした状態で歯を食いしばっていた。
「け、ケンラさん!? なんで!?」
「い、痛すぎる……!」
「ちょっケンラさん何があったんですか!?」
「前を見たら分かるよ……くっ……」
そういわれて、すぐに前を見る。
ケンラさんが吹き飛ばされてきた場所には、一人の人物が立っていた。
槍を手に持ち、それを投げる構えをしている。
背中には白い翼が生えており、頭には黄色い輪っかが浮いていた。
「天使……? って、いうか……」
目の前にいる人物に、見覚えがあった。
なんなら少し前まで一緒に過ごしていたはずだった人物だ。
アマリアズもそれを見て難しい顔を崩さない。
僕は目を見開いて、何とか彼女の名前を口にする。
「アシェラさん……?」
槍を投げる構えを取った天使の姿となったアシェラが、容赦なく擬似技能を使って攻撃をしてきた。
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