4.11.封印の解き方
なにか確信めいたものを、アマリアズから感じる。
何を根拠にそう言っているのか分からないが、邪神……じゃなくて、えーっと。
アマリアズの話が本当だとすれば、邪神じゃなくて救世主の四体なのかな?
その四体って『封殺結界』で封印されてるんだよね?
封印を解くと封印されている存在と、封印を解除した人も死んじゃうっていう話ちょっと前に聞いたばかりだけど。
……え、これ僕がしないといけないやつ?
本当に封印を解きに行こうって言ってるの?
「君の『決壊』があれば安全に封印を解くことができる!」
「そ、そうなの?」
「そうだよ! 『決壊』は結界に付与された力も全部壊してしまうことができるんだ! だから中にいるあいつらも死なないし、宥漸君も死ぬことはない!」
「いや、あのそうかもしれないけど、ちょっと待って?」
なんかいろいろ分からないことがある。
その封印を解いたとして、本当の邪神を倒す力がある存在が眠ってるんだよね?
協力してくれるとは限らないと思うんだけど……。
自分たちの都合で協力してくれって……無理じゃない?
それに、封印を解いちゃったらそれこそ人間たちにも敵対されかねない。
天使の能力云々関係なしに。
「それでも、私たちだけじゃ手に負えないのは事実。それに、あいつらは必ず力になってくれる」
「そ、そうなの?」
「多分大丈夫かなー。宥漸君、君は霊漸の息子だし」
「え」
アブスが軽い調子でそう言った。
何か変なことを言っただろうか、と彼女は固まってしまったが、思い返しても変なことを言っているようには思えない。
結局何が悪かったか分からず狼狽するだけだった。
「え、え。な、なんか変なこと言ったかな……?」
「アブスさん……。僕のお父さん、知ってるんですか?」
「ん? うん。お喋りしたこともあるし、魔族領を取り戻してくれた恩人でもあるから。でも何と戦ったか全然覚えてないんだよねー」
手をひらひらとさせながら、苦笑いを浮かべる。
アマリアズはこれが『応龍の決定』で消された記憶だということが分かった。
自分の事なのではあるが、この辺は口にしない方がいい。
そう思って口を堅く結ぶ。
だが宥漸は、自分の父親のことを知っている人に初めて会ったような気がする。
ウチカゲとカルナはもっと詳しいだろうが、隠していたので話を聞く機会はなかった。
父親の存在を知ってから、初めてどんな人だったかを聞ける人物が目の前にいるのだ。
「ぼ、僕のお父さんってどんな人だったんですか? 悪い人だったんですか?」
「わ、悪い? はははは、逆、逆。何するのにもお人よしだったよ。なにせ守ることに特化していた技能を数多く持ってたんだから。まぁでも、曲がってることは本当に許さないってタチだったかなぁ。敵対してた時はあったけど、バルパン王国では暴れまくってたし」
「そうなんですか?」
「まぁいい人には変わりないかな! ……ああ、そっか。君はお父さんの事……」
「ウチカゲお爺ちゃんも、お母さんも隠してたみたいなので」
そうだよね、と口にして少し悲しそうな顔をした。
邪神とこの世界では広まってしまっているのだから、何かきっかけがない限り自分の父親がそのうちの一体だとは口が裂けても言えなかっただろう。
だが今それを知っているということは。
アブスはアマリアズを見る。
デリカシーなくこの事を簡単に口にしてしまったのではないか、と思う反面、何故そのことを知っているのか、という疑問が浮上した。
この事を知っているのは、四百年以上生き続けている存在だけだ。
だからこそ、今目の前にいるアマリアズがどうしてそのことを知っているのか理解できなかった。
ここまで宥漸と共にいるというとは、全てを知っている可能性が高い。
眉を顰めながら、少しだけ警戒の色を強めて問う。
「アマリアズ君、君が宥漸君に零漸のことを教えたの?」
「天使の技能だよ。『情報共有』っていう」
説明するのが面倒くさかったのだろうということが僕にでも分かった。
そこで天使の技能を利用するのか……。
まぁそれなら確かに知っていてもおかしくはないだろうし、誤魔化すことも容易だろう。
それをすべて承知でここまで共に逃げてくれた、という事実にもなる。
アブスがアマリアズに向けていた疑いの目はすぐに払拭された。
天使の技能であれば、仕方ない。
「んじゃ誤解も解けたから話を戻すけど……。悪魔も天使が出現したことは知ってるんだよね?」
「もちろん知ってるわ。あいつら最後の最後で出張ってきたけど、それから姿見せなくなったし。何か企んでいたのは知ってたからそこまで動揺はしなかったけど、まさか宥漸君がここに来てから動くとは……」
どうやら、悪魔陣営も天使の存在は危惧していたようだ。
それもそのはず。
天使たちは敵であり、姿こそ現さなかったが、復活した存在の手助けをしていたのだ。
どの様な技能を持っているかは定かではないが、悪魔同様、四百年以上生き続けている脅威であることには変わりなかった。
だからこそ、やはり彼らの協力が必要だ。
過去に本当の邪神を退けた実力がある彼らならば、この状況を打開する大きな鍵になる。
「まずは、応龍を助けに行こうか」
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