3.5.ベドロックを探せ
そんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃん……。
まぁアマリアズを連れていくのは決定事項なんだけどね!
魔物とか生物の知識なぜかいっぱい持ってるし。
絶対に連れていった方が確実にベドロックを捕獲できそうだからね。
だけどみんなベドロックっていう魚を知らないみたいだった。
鬼たちは首を傾げて頭の上にクエスチョンマークを浮かばせている。
そういえばウチカゲお爺ちゃんが『個体数が少なくなってしまっている』って言ってたなぁ……。
名前も聞かないくらい珍しい魚っぽい。
……え?
それを今から捕まえに行くの?
「お、その顔……私が何を考えているか分かった?」
「もしかしなくてもめっちゃ珍しい魚?」
「そうだよ。私も存在は知っていたけどこの辺にはいないと思ってた。でもウチカゲお爺さんがいるって言ったんだろう?」
「うん。上流にいるかもしれないって」
「“かもしれない”、かぁー。望み薄だけど……まぁ……捕まえることができれば確かに解決できるなぁ……」
そう言いながら、半壊した水車を見てため息をついた。
ど、どうしたらそうなるんだ……。
「な、なにが……」
「皆が持ち上げて地面に置いたらこの様さ。水流には辛うじて耐えてたけど、自重には耐えられなかったみたい。滑車部分は綺麗だったからね」
アマリアズと他の鬼の話を聞いてみれば、他の場所の水車もいつ壊れてもおかしくない状況だという。
この川一帯にマレタナゴの群れが生息しているらしく、幾つかの派閥に分かれて戦い合っているらしい。
マレタナゴはマレタナゴを食べるので死骸で川が汚れるということはないが、このままでは水車が全滅して畑に水を運びこむのが困難になってしまう。
鬼たちの力を考えればそれくらいのことは手動でやっても大したことではないのだが、仕事が一つ増えるというのは好ましくない。
さっきいた大工のお爺さんに頼んで、新しい水車を作ってもらってはいるみたいだけど、やっぱりマレタナゴを何とかしない限り鼬ごっこになりそうだなぁ。
で、その一番良い解決方法がベドロックを探すこと。
だけどベドロックはとても珍しい魚……と。
「まぁ何とかなるでしょ! 行こうアマリアズ!」
「そう言うと思ったよ。まぁいる可能性があるなら行く価値はあるね。んじゃ皆、他の水車の点検よろしくね」
「ああ、任せてくれ」
鬼たちに後のことを任せ、アマリアズは僕と一緒にベドロック探しに付き合ってくれることになった。
向かう先は川の上流。
近くで流れている川に沿って行けば、迷わずに向かうことはできるだろう。
さて、じゃあベドロックのことをアマリアズに聞いておかないと。
「それでさ、ベドロックってどんな魚?」
「ウチカゲお爺さんから説明聞いてから来なよ……。はぁ。ベドロックはアンコウみたいな魚で、色は黒と紫。水底に強力な吸盤でくっついているから剥がすのは無理だと思う。だからくっついてる石ごと持っていかないと駄目かな」
「へぇ~。探し方はあったりする?」
「そうだなぁ……。ベドロックは魚を惑わす香を出す。それを吸うと魚はベドロックに集まるんだ。だから魚が多く一箇所に集まっていて、近づいても逃げない所にベドロックがいる可能性があるよ」
「なるほど」
ってことは、魚の群れを探さないといけないってことか。
むむむむ、水の中の魚を気配で感じ取る修行なんてやってないぞ……。
これは目で確かめていくしかないかなぁ?
……って岩ごと持っていかなきゃならないんだったらこの盥ただの荷物じゃん!
要らないじゃん!!
「いや、それはこっちで飼う時に使うからナイスだよ」
「あ、そうなの? でも網は要らないよね」
「要らない」
むぅ……変な買い物をしてしまった……。
まぁ何かに使えるかもしれないし、とりあえず持っていこうかな。
そういえば僕、川の上流って初めて行くかも。
いつも森の中でしか修行してなかったら、違う所に行ったことないんだよね。
魔物とかいるのかな?
いたら倒して帰りたいかも。
もしかしたら技能増えるかもしれないし。
「アマリアズは上流に行ったことある?」
「ないかなぁ。でも『空間把握』で見ることはできる」
「便利だよねその技能。じゃあ道案内お願いね!」
「……なんかうまい事使われたな……」
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