2.26.合流


「カドマー! カンヌキー!!」

「おぇ!? おいおいなんで宥漸がいるんだよおい!!」

「なんだって!? 大丈夫か宥漸君!!」

「こっちだよー!」


 声を頼りにして二人がこっちに走ってきてくれた。

 重い足音が近づくにつれ、暗い森の中でも二人の姿がようやく見える。


「何してんだお前!」

「ウチカゲお爺ちゃんに投げ飛ばされたんだよぉ!」

「投げ!? は~、けったいなことするなぁおい」

「おい待てカドマ。あそこにいるのは……?」


 カンヌキが僕たち二人の後ろにいる男を発見した。

 知らない子供もいるが今は危険そうな人物を優先して調査する様だ。

 カドマが僕とアマリアズを後ろにやってくれて、カンヌキが眉を顰めて男を調べる。


「……こいつは一体……。それに凄い魔道具だ。コアで魔力を生成し続けている。防具自体が生きているみたいだぞ……?」


 か、カンヌキって魔道具の知識あるんだ……。

 見た目的に機械に関してはあんまりよくしらなさそうだったからとても意外だった。

 失礼かな?


 カンヌキは一通り調べた後、顔だけをこちらに向ける。


「この男はどうしたんだい?」

「あ、アマリアズを攫って行ったから……僕が助けようとして……それでアマリアズと一緒に戦って……」

「ああ、私が説明するよ」


 アマリアズが一歩前に出て、軽く頭を下げる。


「初めまして、私はアマリアズ。その男に私が攫われたところを宥漸君に助けてもらった。でもその男を怪我させたのは私だ。生け捕りにしたかったが、結局毒を服用して死んでしまったけどね」

「なるほど、状況は理解しました。ウチカゲ様が宥漸君を投げ飛ばしたというのは、アマリアズ君が誘拐されたことを知っていたからですか」

「多分そうだと思う……けど、なんで前鬼の里にいた宥漸君がウチカゲお爺さんの所に来れたのかは謎だね」

「宥漸君、その辺はどうなんだ?」


 えっ僕!?

 え、ええっと……あの時は確か……。


「ひ、姫様と遊んでて、急に『ウチカゲお爺ちゃんの所に行ってもらうから』って言われて……気づいたらウチカゲお爺ちゃんの隣りにいたよ」

「姫様……? とは?」

「ヒスイっていう名前だったはずだよ」

「カドマ、聞いたことあるか?」

「いや、ねぇ」


 あれーーーー?

 あ、そうかこの二人は門番をしてるから、二の丸御殿には来ないんだった。

 だったら知らないのは無理ないかも。

 だけど新月の黄昏時は町をふらついてるって言ってたんだけどなぁ。

 まぁいいか。


 二人もこの事はウチカゲに聞けば分かる話だと結論付けたようだ。

 カンヌキが男の死体を肩に担ぐ。

 どうやら持って帰るようだ……。


「とりあえずウチカゲ様と合流しよう。シズヌマとタタレバも来ているはずだが……」

「置いていかれたからな俺たち。えっと、アマリアズとか言ったか? お前も来い」

「さすがにそうさせてもらおうかな……」

「ていうかお前血まみれだな。大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ」


 アマリアズの服装、ベチヌと戦った時のまんまだもんね……。

 気持ち悪くないのかな?


 ていうか今回はアマリアズ、素直について来るんだ。

 ま、まぁ一回攫われたし、前鬼の里に来てもらった方が僕も安心できるな。

 そうなったとしても一緒に修行はできるだろうしね!


 にしても……。

 あの男の人はどうしてアマリアズを攫ったんだろう。

 あんまりその辺よく分かってないんだけど、これは大人の話になるのかな。

 いやアマリアズは子供だけど……中身は絶対に子供じゃないと思う。

 ほんと、変な友達だなぁ。


 僕たち四人はウチカゲお爺ちゃんと合流するため、カドマとカンヌキが来た道を戻っていた。

 だが歩いている最中、眠気が襲ってきた。

 一段落して安心したからなのか、それとも動きすぎて疲れたのかは分からなかったがとにかく眠い。

 どうやらアマリアズもそれは同じだったようで、こっくりこっくりと頭を揺らしながら歩いていた。

 それに気付いたカドマが困ったように笑い、僕とアマリアズを抱え上げる。


「わぁ」

「むっ」

「眠いなら寝てろ。まったく子供が無茶しやがって。ほら、その紙束貸せ」

「カドマ……ありがとー……」

「むぅ……」


 アマリアズは不本意そうだったが、睡魔には勝てなかったようだ。

 中身が子供ではないにしろ、体は子供だ。

 まだまだ睡眠を必要とする体なので仕方がない。


 二人が寝たことを確認しながら、カドマは歩いていく。

 その隣からカンヌキが顔を覗かせる。


「寝心地悪くないのかな?」

「おいどういう意味だこの野郎」

「俺は嫌だぞ? そんな筋肉に囲まれて寝るの」

「お前も大概だろ!!」

「シー」

「ぐぬ……」


 声を殺してクスクスと笑うカンヌキにカドマは眉を顰めて不服そうな顔をした。

 だがこうした茶化し合いは昔からのことだ。

 今更気にはしない。

 カドマも釣られたように小さく笑った後、少しばかり足を速めてウチカゲと合流するために森の中を進んで行ったのだった。

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