第5話 鮫島さんと個性豊かな仲間たち
学校が終わり、まっすぐ家に帰った俺は、いつもの普段着に着替えると、いつも通り、クズ高生が多く集うセンター街に向かった。
この街周辺で、夜中まで店が開いている、大変ありがた〜い場所がこのセンター街である。
ゲーセン、パチンコ、ダーツバー、カラオケ、ボーリング場などの娯楽施設が揃っていて、遊ぶにはもってこい、たむろするにはちょうどいい。
俺たちは、大体、夕方から深夜までいつもここで過ごす。
それに疲れても、夜遅くまでやってくれている喫茶店もある。
飯も食えるし、仮眠もできる。
コレまた、ちょうどいい。
おすすめは、おっさんお薦めの気ままパスタだ。
ナポリタンのことなんだが、毎回余り物の具材を入れてるから、いつも同じものが出てこない。
味付けも大雑把で、醤油がはいってたり、ケチャップが多かったり、いつも違う。
おっさんが大雑把すぎて、ナポリタンがいつも微妙に違う物になる為、気ままパスタという名前にしたそうだ。
大体、夜中に鮫島さんたちと食べる時は、気ままパスタの適当盛りを頼んで、シェアして食べる。
大体、8から10人前の量(おっさんの気分によって量も違う)がどーんっと出てくるんだが、麺同士が、がっちり固まって食べづらかったりもする。
コレに金なんか払えるかぁって、普通思うところだが、なんだかんだ愛着が湧いていつも頼む。
ちなみに、喫茶店の名前は『メアリー・ジョイ』なんだが、マスターは男だ。
なんでも、マスターの思い出の女性の名前らしい。
多分、近くのフィリピンパブ店の女の子の名前からつけたと思ってる。
おっさんも、若かったんだな。ウンウン。
ここのセンター街で、一番多いのが、居酒屋、スナック、パブなどの夜の店であることから、地元民からは『酔っ払い横丁』とも言われている。
酔っ払いの為の天国みたいな場所って意味で親しみを込めた呼び方である。
安直だ。
正式名称は神有町センター街という。
そして、残念ながら見た目は、渋谷センター街のようなおしゃれに輝く素敵なところ、ではない。
所詮、郊外の街、神有町。
平成どころか、昭和の雰囲気が色濃く残る、いわゆるアーケード商店街ってところが関の山だ。
まぁ、そのほうが落ち着くから俺は良いんだが。
ここに、だいたい俺は週5日(ほぼ毎日)呼び出される。
今日も、6限の授業が終わり、HR中にグループLINEが入って、ピコン、ピコンとスマホが震えまくった。
大体、以下のようなふざけた内容で召集がかかるから、ニヤニヤするのを、抑えるのに毎回苦労する。
“【鮫島さん】
ーおぉーい。学校、終わったかぁ?ー
【佐々木悠夜】
ーまだですー
【リッくん さん】
ー真面目....
((φ(-ω-)カキカキー
【辰 さん】
ーはよう、来いよ〜
待っとるぞ〜ー
【天綺 さん】
ーこないだ、話してた本持ってこれる?ー
【チャラ☆ さん】
ードォォォォン! オリャ( ^^)ノ ●~*ー
【佐々木悠夜】
ーもうすぐHRが終わるところです。着替えたら、すぐに向かいます。ー
ー@天綺
本って、植物のやつでしたよね?ー
【天綺 さん】
ー@佐々木悠夜
そうそう、それー
【チャラ☆ さん】
ー悠夜ぁ、無視しないでぇぇ!
爆弾投下したから、誰か構ってぇ(人>ω•*)☆ー
【リッくん さん】
ー....しょうがないなぁ。
イラン ( ・_・)ノ三●~* パコッー
【チャラ☆ さん】
ーきゃぁ〜!リッくん、好きっ!!♡♡♡ー
【リッくん さん】
ー.....死ね...(°言°)ー
【チャラ☆ さん】
ー冷たいところも好き♡ ( っ¯ ³¯ )っ~♡結婚してっ!ー
【リッくん さん】
ー......チャラに女性器ができたら....一考するかもね。( ´ཀ`)ー
【チャラ☆ さん】
ーえー?私の後ろ空いてますよ〜♡ー
【辰 さん】
ー後ろがあっても、前に揺れる逸物があったら、いけんじゃろぉ(爆笑) ー
(ー中間割愛ー)
【鮫島さん】
ー爆弾!ニゲロ*~●*~● ε=ε=ε=┏(;-_-)┛ー
【天綺さん以外全員】
ーびっくりスタンプー
【天綺 さん】
ー鮫島、爆弾ネタは、とっくに終わってる。タイムラグが酷い。ー
【鮫島さん】
ー俺も、顔文字使ってみたかった!!ー
ー一生懸命作ってたら、どんどん会話が進んでたんだぁ!ー
ーお前ら、メールうつの早いっ!ー
【チャラ☆ さん】
ー鮫島さん、可愛いっす♡ー
【リッくん さん】
ー...一生懸命なところ....尊敬するよね.....(๑✪ω✪๑)ー
【辰 さん】
ーいやいや、あかんゾォ!
鮫島は、ただのアホじゃ〜!
鮫島にこれ以上ハマったら、いけ〜んっ!
信者撲滅せぃ!ー”
と、どんどんLINEで会話が飛び交う。
その間、スマホがブーブー、ぴこぴこと振動しまくる。
鮫島さんは、目が合うだけで怖い見た目ゴリラなくせに、こういう可愛いとこがある。
そのギャップが、人間味をさらに深めるから、ますますハマっちゃう人が増える。
辰さんは、そんな人間を『鮫島信者がおるぞ〜(笑)』と揶揄っている。
中毒性がある
「おーい、スマホうるさいぞぉー。
そんだけブーブー受信するなら、流石にオフにしろぉ。」
誰のスマホが鳴ってるのかわからないはずなのに、担任がこっちをガン見してきた。
周りが優等生ばかりだと、こういう時すぐバレる。
スマホを没収されないだけ有り難いと思おう。
俺の内申点は、既にゼロだしな。
今更、取り繕っても仕方ないと、開き直っているから別に注意されても平気だ。
早くHR終われ〜とひたすら念を送る。
学校が終わり、家で準備を終えた俺は、早足でセンター街に向かう。
進学校の学ランから普段着になっても、赤髪のせいで、すれ違う時に、老若男女に避けられるし、やっぱり二度見される。
赤髪を見て、怖い人かとギョッとされ、服装を見て違和感を感じて、通りすがるときに振り返られるのだ。
それもそのはず、俺が着るいつもの普段着も、制服と同じく、きちんとしているからだ。
パリッとした地味な色のワイシャツに、ダボついてないピッタリサイズの紺のカーディガンを羽織り、黒の綺麗めなチノパンを履いている。靴はコレまた普通のアディダスのスニーカーが常態。
つまり、首から下は、優等生が塾に行くみたいなスタイルなのだ。
髪の毛と合ってないのは、重々承知してるが、だらりとしたカッコは落ち着かないのだ。
それに、人が勝手に避けてくれるから、早く目的地に着くことができる、結果オーライだ。
今日も、遮るものもなく、すんなりとセンター街についた。しばらく歩くと鮫島さんたちを、視界にとらえる。
「おぉ〜い!こっちだ、悠夜ぁ!」
鮫島さんたちも、俺に気づき、手招きをして呼んでくれた。
今日も、全員揃ってる。
LINEで会話をしていたメンバーだ。
この集団、いつも遠目でもやたら目立つ。
鮫島さんは、いかついゴリラだし、背もデカいので、威圧感が半端ないから目立つのは当たり前なんだが、他のみんなもかなり目立っている。
系統が違うが、もれなくイケメンな不良なのだ。
不良の集団なのに、イケメンの集まりって何?状態である。
何はともあれ、見つけるのが、そのおかげでいつも容易い。
大体、周りで女の子が遠巻きにウロウロして挙動不審な動きをしているから、見つけやすいのだ。
このメンバーの中でも、鮫島さんとセットと言っても過言ではない天綺さんは、一番モテる。そして、なかなかの異色の人物だ。
この
実は俺よりも、頭がいいのだ。
高校なんてどこに行こうが関係ない。大学なんて試験の結果が良ければ入れる。俺には選り取り見取りだ、とのたまう天綺さんは、適当に出席すれば高卒の資格が取れるクズ高をわざわざ選んだそうだ。
自宅からも近いし、時間を有効的につかえるから効率的だったという理由もあるそうだ。
高卒の資格は、大検でも取れるはずだと天綺さんに聞いてみたら、大検の試験を受けに行くのがめんどくさかったらしい。
天綺さんはマイペースで淡々としているのだ。
そんな理由で、入ったクズ高だったが、自分の隣の席がたまたま鮫島さんで、入学式で意気投合。
適当に通うつもりが、鮫島さんと遊ぶ為にほぼ毎日通っている。
だけど、一緒につるんでいても、本を読んでいる方が多い。
将来のために、ありとあらゆる知識をつけてるそうだ。
経済の本や、株、コンピューターや、政治、世界の歴史など真面目な知識のほか、ファッション、ゴルフなどのスポーツ、料理、お酒、オペラ、絵画などの娯楽も毎月雑誌を図書館から借りて網羅している。
いかなる人種、年齢の人でも、会話が成立するように自己研鑽に努めるのが、日課な人だ。
そんな天綺さんは、メンズモデル並みのスタイルでイケメンだ。
銀縁の細い眼鏡をおしゃれにかけて、鼻筋が高く目元は涼やか。唇も薄くて、肌も綺麗。
少し冷酷そうな見た目だが、綺麗なお姉さん方にキャーキャー言われてる。
正統派インテリイケメンなのだ。
逆に鮫島さんは、ムキムキなオネェさまに大人気だ。
鮫島さんと一緒にいると、自分がちゃんと女性に見えるかららしい。
(しかし、どこから見ても....完全なる女性には見えない、オネェはオネェ。錯覚だ。)
夜になると、『鮫島くぅ〜ん♡』といろんなゲイバーの常連客やらオカマバーの方々から投げキッスをもらっている。もれなくガタイがいい女性と男性に....。
対して天綺さんは、正統派の女性、キャバ嬢やホステスさんから手を振られて挨拶されている。
こっちは、素直に羨ましい。
だから、移動するごとに女性たち(モドキを含む)からざわつかれる集団になる。
あと、二人と同級生なのが、辰さんだ。
中国地方出身で、広島弁と岡山弁がまじってる。(両親の出身が広島と岡山らしい)
そして、昔ながらのゴリっゴリのヤンキースタイル。
ド派手なスカジャンをいつも羽織って、ズボンはハイウェストのボンタン。
光るものが好きだから、スカジャンもズボンも金糸や銀糸が多く使われてる。
鼻、舌、耳にもシルバーピアスをジャラジャラつけて、腕や首にも金属アクセサリーが所狭しだ。
髪型は、ツーブロックにパーマをあてて、耳上は剃り込みを入れて刈り上げている。(刈り上げてるところは、俺とお揃いだ。)
しかし、そんな風貌が怖い辰さんだけど、顔を見ると怖くなくなる。
怖いと思うより先に、キュンとしちゃうからだ。
それもそのはず、辰さんは、彫りが深いイケメンなのだ。
どんな奇天烈な服を着ても、どんなにピアスをしていても、イケメンは似合う。
羨ましい。
そして、この
性格も明るく、兄貴体質で、一緒にいるとギャハハと笑いながら世話を焼いてくれるから、俺も大好きだ。
俺がパシリの役割で買い物に行くと、大体、荷物持ちについてきてくれたりするから、俺のパシリ感があまり出ない要因の一つだ。
そして、他には、鮫島さんたちの歳からひとつ下で、俺と同い年になる不良仲間も2人いる。
リッくんさんと、チャラさんだ。
リッくんさんは、190cm近いタッパを持ってる。
そして、ヒョロリとした細身に、ぬぼーっとした動きなので、どっちかというと弱そうに見える人だ。
そしてこの人も、実はイケメンだ。
前髪が異様に長くて、いつもは口元しか見えないが、喧嘩をしている時の血汗で前髪が後ろ側に張り付くときに見える素顔は、キラキラしい。
二重瞼にぱっちりとした目、ふさふさまつ毛、シミ一つないきめ細かい肌、血色のいい潤いがある唇。
王子様要素がてんこ盛りなのだ。
詐欺のようなビフォーアフターだ。
鮫島さんに憧れているから、自分の顔が嫌いなんだそうだ。
だから、いつも前髪で顔の半分を隠しているってわけ。
そして、自他ともに認める“鮫島信者1号”だ。
昔、鮫島さんに助けられたことがあり、惚れ込んで、クズ高まで追いかけてきた王子だ。
最後に紹介するチャラさんは、B-boy系男子だ。
ブレイクダンスが趣味で格好もそれ。
オーバーサイズのトレーナーに、サルエルパンツ、ハイカットのスニーカー。帽子は、いつも野球帽。
そして、一番目につく箇所は、全てが原色という所だ。
目が痛いほど、主張する存在だ。
だから辰さんのド派手なカッコと相まって、かなりギラっト感が出る集団になっている。
そんなチャラさん、野球帽をとると、坊主頭に文字がお目見えするのがチャームポイントだ。
剃り込みで、模様を作っているのだが、一定の周期で変わる。
今の文字は、CHU♡。
だから、メールに、最近は良く“ ( っ¯ ³¯ )っ~♡”が使われる。芸が細かい。
ちなみにこないだまでは、鮫島さんの下の名前が剃り込んであった。
剛だから、『Go』だった。“鮫島信者2号”である。
知らない人が見たら『行く』と言う意味だと思っただろうが、俺たちは意味を知ってるだけに大爆笑だった。
辰さんは、『鮫島の彼女かっ!?ギャハハ!』とツッコんでいた。
そして、お決まりのようにチャラさんも八重歯が可愛いわんこ系イケメンなのだ。
そんな中、俺一人、赤髪だけが目立っているフツメンだ。
まぁ、別にいいけどね。
そしてこの集団、やたら喧嘩をふっかけられるんだ。
パシリライフ最初の方は、あまりの多さに度肝を抜かれたもんだ。
鮫島さんは、この辺で敵なしの不良なため、力試しでふっかけられる。
これは想定内だったが、他の面々がイケメンすぎて野郎に恨まれるというくだらない理由で、喧嘩をふっかけられるのは、想定外だった。
とにかく、歩いて肩が触れるだけで喧嘩になるって言うほど、しょっちゅう喧嘩している。
こう言う時は、一目散に俺は逃げる。
草葉の陰から見守るのが役割だ。
そして、みんなが殴り合ってるところを、ハラハラもせず、見てる。
のほほんと見ていられるのは、みんなが異常に強いからだ。
鮫島さんは言わずもがな。鬼神のように殴る蹴る。大柄な男でも吹っ飛んでいく。
天綺さんは、最小限の動きで交わして、足払いをかけて転ばす。
しかし、転ばした相手に攻撃はしない。トドメは、他人に任せる。
自分の手は汚さない性質《たち》だ。
喧嘩を淡々とするタイプだ。
辰さんは、イメージそのまま。ギャハハと笑いながら、大振りで殴る。
ただ、向こうの攻撃を一切避けずに、腕で受け止めるので青痣が多い。
(広島弁では、痣をあおじと言うので『おぉ、今回もあおじがえっと(たくさん)できたのぉ!』とギャハハと笑う。)
かわすのは、性分じゃないそうだ。
リッくんさんは、ボーッとしているのに喧嘩になると俊敏に動く。リーチが長いから、蹴り技が得意だ。
ただ、鮫島さんに一撃でも食らわす不届きものがいたら、人が変わるので注意が必要だ。
叫びながら無双し出す。
普段、ボソボソ喋る人が、奇声を上げるとマジ恐怖半端ない。
蹴り技でボッコボコにした後、トドメに思いっきり顎を蹴り上げ、失神させる。
相手は、泡を口から出して微動だにしなくなる。多分、一番えげつない。
チャラさんは、ダンスが趣味だけあって、アクロバティックな動きで、翻弄する。
全身を使って、相手の鳩尾に肘や膝でクリーンヒットさせることを得意とする。
だけど、よく相手がゲロるので吐瀉物がかかる。
そうすると、パシリの俺の出番だ。
メアリー・ジョイまで行って着替えを取ってくるのだ。(こんなことが多いので、メアリー・ジョイに、着替えを置かせてもらってるのだ。)
まぁ、大体俺の日常はこんな感じで、結構楽しくやっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます