19本目の剣
青い髪を後ろで束ね
青い瞳で値段を見据え
青い髪飾りで色を乞う
メイド長の娘。それは蒼に憧れる子供
『アーサーよ。この前の任務の件だが・・・おや?眠ってしまったのか。だれか!だれかおらぬか!』
「王様。何か御用ですか?今は夜明け前ですので騎士の待機所まで響きます。」
『メイドよ。アーサーを運んでくれぬか?ワシは腰をやられてしまった。』
「OK。かしこまりました。娘に我が家へ運ばせましょう。娘が泣いて悦びます。」
『たのんだ。ワシはもうすこし書類に目を通す。ではな。』
メイド長の家につくとメイドのベッドで寝息を立てていた。
「zzz...zzz...zzz...。」
「ふふっ。娘と並べるとまるで兄妹。姉妹には見えませんね。こんな兄がこの子にいたのに・・・。墓参りに行かなくてはなりませんね。」
チュンチュン。
がばっ!
「寝ちゃった!!あれ?ここメイド長の・・・。」
「ピースピー。ピー。スピー。ん・・・。アーサー様!?」
「起きちゃったかー。どうしようか。遊ぶ?」
メイド長の娘はアホ毛をピョンと跳ね悦ぶ。
「やった!アーサー様を独り占めに出来るなんてそうそうないことだわ!あっ・・・でもこれから兄様のお墓参りなの。そうだわ!アーサー様に兄様を紹介したいわ!アーサー様?ダメ?」
青いストレート・・・を後ろでに縛りながら喋っていた。
「お墓参りに家族以外が参加していいの?」
「お母様ならもちろんって言うけど、お父様はどうかしら・・・?で、でもメイドの娘として頼めば許して頂けるかも・・・。」
「話は聴かせていただきました。フランソワーズ。兄様にアーサー様を紹介したいんだろう?もちろん今回だけだが特別に許されよう。」
「お父様。わたしフランソワーズではないけれど。」
(な、なんか話が変な方向に・・・。)
「アーサー王様。ソシエーヌの兄のアレスタントに挨拶をお願いしたく。どうか。」
「ソシエーヌじゃないしアレスタントでもなくって・・・。ってそう言ってる間にお母様が馬車乗り込んでるわ!アーサー様!早く!」
「えっ?えっ?ちょっ、えっ?」
ーーーー馬車内
「アーサー王。このたびは娘のワガママ・・・いえ、今は亡き息子のためご足労頂きありがたく存じます。しかし昨夜は昔の思い出のような光景でした。」
昨日?寝てたんだけど・・・。
「母様は昨日城勤めだったはずだけど?つかれてるんじゃないかしら?」
「いえ。いつの間にか家にいるのがメイドというものです。」
「zzz...zzz」
父寝てる!執事服に顔埋めてるし・・・。
「アーサー王。家長は気まぐれに振る舞うものです。」
「父様はきっと疲れてるのね!アーサー様の前でも眠るなんて胆力がすごい!」
「いやこれってただ風が気持ちよくて寝てるだけだよ・・・。」
『アーサー王様。そろそろ目的地でございます。前をご覧下さい。』
目の前には大規模な霊園が広がっている。
ガタンガタン!
なにが不安って父が起きるかが不安。
ーーーー霊園
なんとも気持ちのいい日差しが降ってくる。
青い空には群青雲が広がっていて晴れ間であることを表している。
視界を遮るものはなくただ草むらが程よい長さで揺らいでいる。
ガタン!
『ん〜!なんていうか・・・墓地のイメージ変わった。』
『アーサー王。墓地と霊園を一緒にすると管理者が怒りますが。』
『そうなの?わたし霊園ってお墓のイメージだったのだけれど。』
妹の声が聞こえた。
澄んだ青空のようなどこかふわふわとした。
ふと考える。ここにいるのはなぜか?
妹と別々の"おはか"に入っている?
そもそもなぜ自分は死んでしまったのでしょう?これは大問題だ。
ーーーーー5年前
『あそこにある剣に触れてはならない。』
なぜなのか?危険?なら放置しているのはなぜなのでしょう?
『所有者がいない。』
所有者?いないのならばなぜ触れてはいけないのですか?
『騎士にならわかるだろう。』
騎士?
・・・・・・・・・!なら自分が騎士になるべきです。
パーシバル殿の一番の弟子ですから。
ならならならならならならならならならならならならならならならならならならならならならならならならならならならならならならあの剣は自分の物だ。
思えば剣に魅入られてたのかも知れません。
気づいた時には剣を持っていました。
騎士 あこがれの パーシバルの 剣
そうだった。パーシバル殿の補佐をする一心で・・・剣に取り込まれているなんて。
『アーサー様?これがわたしの兄様!ベディヴィア兄様よ!』
『き、キラキラネーム・・・。お祈りしとこう。』
ここにいる意味。つまり妹を見守るため。
ふと剣を見る。真っ直ぐな直剣。
自分の剣を持てる幸せ。
これが騎士・・・ですか?パーシバル殿。
剣の名前も考えていた。
セメタリー。霊園の意。
ここで妹と眠るのが夢。
お墓に名前を刻む行為。それはここに眠るということ。
永遠に・・・永遠に。
19本目の剣読了
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