17本目の剣

 木の人形はこの街の名産品。

 ひくて数多の稼ぎ口。

 最初の一体最後の二体。

 これが世に言う‘’木偶人形‘’。


『アーサーよ。お気に入りの人形を壊してしまったのは悪かった。だからいいかげん喋ってはくれぬか?』


「・・・」


「王よ。アーサーに木偶人形を買ってやるのはどうだろうか?」


 アームドパルトの苦言にアーサーは睨みつけた。


「・・・」


(っうていうか壊されたの木偶じゃないんだけど!?)


「そうですね。木偶人形といえば西のほうに木偶人形を特産品にしている街がいくつかあったはずです。アーサー。木偶人形には女の子の持っている‘’ドール‘’というものもあるらしいです。丁度いまメイド長が持ってるやつがそうです。」


「はい。アーサー王。これが娘のお気に入りです。どうぞ手にとってみては?」


 そう言うとメイド長の持っている木箱を渡された。


「?」


 開けると中には見目麗しい人形が入っていた。

 アーサーが手に取ると今にも動き出しそうなくらいいきいきとしていた。


「すごい・・・。」


「アーサー王が欲しがるのであれば店をご紹介いたしますよ。」


『よし。パーシバル。1番良いものを買って参れ。』


「ちょっ、ちょっと待って!私も行く!」


「アーサーは待っていてください。やはりこれも部下の務めです。」


「いやいや・・・。自分で見ないといいかどうかなんてわかんないでしょ?私も行きます。」


「わかりましたわたくしの娘を連れて行っていただきたく。」


 メイド長の娘・・・。


「な、なら俺たちはついていく必要がないよな?なぁパーシー。」


「えぇ。アーサーなら大丈夫でしょう。たぶん。」


 ?。なんか変だな。

 対面の間からその足でメイドの家にいった。

 チリンチリン。


「あっ!アーサー様!めずらしい!汚い家ですけど上がって上がって!」


 メイドの家。もちろん汚いわけもない。いや、むしろアーサーの住んでる城より綺麗に飾ってある。さすがメイド長の家・・・。


「?。アーサー様は紅茶に砂糖は入れる派だったかしら?」


「うん。あまあまでおねがい。ところで話は聞いてる?木偶人形を買いに行くのについてきてくれるって話だけど。」


 メイド長の娘は頭に?。を浮かべた。


「アーサー様は木偶に興味があるの?私のお下がりでよかったらいくらでもあげるわ!・・・でもなんで木偶?お父様が毎年のように買ってくるけどお世辞にもかわいいとは・・・言えないけど。」


 メイド長の罠にハマったってことか!


「木偶を持ってる女の子はいても持ってない女の子は周りにいる?」


「そうね・・・。メイドの作法を習う時に必須って感じかしら。」


「私持ってないんだよね。まあみんなが持ってるやつって欲しくなるのが人の情ってね。」


 「まあ!アーサー様くらいになると庶民の気持ちを知ることも大事ってことね!さすがアーサー様ね!」


 本当は代わりの人形が欲しいだけだけどね。


 「じゃあ今から出発ってことで。木偶の街って西の方だっけ。」


 ──王都西門──から馬車で2日


「ここが木偶の街ね!」


「へい。木偶も有名ですが、テーブルなんかの家具も有名でさあ。」


 森の中に木の家が立ち並ぶ村か。夏も近いのに涼しい。


「さあ!御者!案内して!はやくはやく!」


「御者は村の案内はしないよ。村には詳しいかもだけど。」


「アーサー様には申し訳ないですが御者は街や村に入ることはあまりないので案内はできませんでさ。その代わりといっってはなんですが地図をお譲りできますよ。銅貨一枚です。」


 ちゃりん!まいど!


「アーサー様?御者から羊皮紙を買ったみたいだけど・・・。」


「この街の地図ね。さすがに地図なしで回るのは無計画すぎるかなって。なになに・・・ここがここだから・・・こっちかな。」


 アーサーが地図を持ちながら右に曲がりまっすぐ、その先を左に曲がると。



『ドール、アリ〼。』



 看板にはそう書かれていた。


「この店ね!アーサー様!」


 カランカラン。


「・・・いらっしゃい。回れ右。でてけ。」

 メイドの娘が入ったところで追い出された。


「ちょっと!お客さんを追い出すなんて教育がなってないわね!」


「冷やかしはお断りなんだよ。こっちも忙しいんでね。じゃ。」


 カランカラン。

 ドン!!!


 「ちょっと失礼じゃないかしら!この可愛らしいお顔を見ても冷やかしっていうのかしら!?」

 メイド長の娘がドアを蹴破った。通りが軽い騒ぎになってる。


「ほう。残念だが君くらいの娘なら俺にもいる。言いたいことはわかるか?同じ年頃の子供なら自分の子供の方が可愛いに決まってる。回れ右。」

 メイド長の娘は薄い胸をどん!と叩き、


「私じゃないわ!この美少女を見なさい!彼の有名なアーサー王様よ!」


「!。嘘を言うな。アーサー王ならば真っ先に剣を抜きに行くだろう。剣を抜いた後なら話は別だが?」


 一瞬驚いたがすぐに平静を保ち言い放った。

 メイド長の娘も負けずに言った。


「いいわ!それなら今すぐにでもその剣というのを抜いてあげる!さあ!案内なさい!」


 店主は溜め息をついた。


「案内せずともわかるだろう。この店の通りを曲がらずにまっすぐ行けばあると思うが?アーサーとやらは剣の場所も調べられないお子ちゃまなのか?」


「そんなことあるわけないじゃない!アーサー様はあなたを立ててあげただけよ!アーサー様が男に話しかければ‘’ホネヌキ‘’になるまで情報を吐き続けるでしょうね!じゃ!またくるわ!お邪魔したわね!」


(いつも以上に早口・・・ってか骨抜きってなにさ?)


  アーサーの腕を掴んで路地を一直線に進んでいくと・・・。


「アーサー様!広場に出たけど剣ってどれかしら?」


 「あれじゃないかな?端っこの木に剣が刺さってる。」


「きっとそうね!やっぱりアーサー様はスゴい!」


 昔から目が効くとかは言われたけどスゴいとは言われなかったなー。新鮮。


『keep out』


 「け・・・ぷ??何これ。邪魔ね・・・。」


「立ち入り禁止ってことかも。読めないけど。」


「お嬢さんたち。あまりこの剣に近づかない方が・・・。」


「わかったわ!これもあの店主の嫌がらせね!大人ってほんとくだらないわ。」


「ちょっ、お嬢さん?この剣に近づくと・・・。」

 メイド長の娘がkeep out!を明後日の方向へ放り投げる。


「これでいいわ!さあアーサー様!抜いちゃって!」


 あちゃー。たぶん後で怒られるんだろうな。

 アーサーが覚悟を決めて剣を握る。


「アーサーが命ず!パペット。剣の名をパペット!」


 すっ。

 ガヤガヤ。


「えぇーと。抜いちゃったね?とりあえず連行しますね?」

 さっきメイドに遮られた男が縄で腕を縛った。


「???。な、なに?私何かした?アーサー様・・・。」


「アーサー王もご同行願えますか?」


 アーサー達が連れていかれたのは留置所ではなく警官の待機所。


「まあ話はわかったけど、その剣の事を知ってる?近づくと転んじゃうっていう危ない剣だから立ち入り禁止って書いておいたんだけど。」


 「そうだったのね。でも大丈夫!アーサー様が抜いてくれたからもう転ばないわ!」


 アームドパルトが急にいかないって言い出したわけがわかった。このメイド世間知らずという訳か!!


「さてアーサー王。その剣はどうするんだね?こちらとしては持ち出されるというのは困るんだが・・・。」


「大丈夫!その辺も考えてあるから!アーサー様が伝説を作ればいいのよ!そうすれば剣も満足するはずよ!」


「その前に君たちには3日ほど勾留されてもらうことになるけど。」


  そうなると3日以内に伝説を。っていうのができないわけか。


「そうね。仕方ないわ!私がその罪をひきうける!」


『へ?』




「ぷっ。それで駄々をこねて留置所ってわけか。ある意味大物だな。」


 ここは『ドール、アリ〼。』の看板の前。


「私1人で途方に暮れてます。しょぼん。」


「だからって見ず知らずの俺を頼ってくるなよな。」


「め、迷惑でしたか?なんなら店手伝いますよ?」


「そうだな。じゃあ配達を頼む。この箱に入った人形を街の反対側の偏屈爺さんに届けてくれ。」


「わかりました。もちろん駄賃くらいくれるんですよね?」


 「ノーだ。王様にやる駄賃などない。」


「アーサーはこの店から5時間ほどの辺境の地へと箱を運んだ。」


「ほう。それで?」


「箱の中身は麻薬で運んだ先は売人の住処だった!」


「あほうか?人形と言ってるだろうが。あほはしまっとけ。普段使わないものは意外な時に役に立つ。その時が来るまで真面目を演じとけ。」


 アーサーはこんどこそ配達に行った。

 途中メイドが好きそうな髪飾りが売っていたが今は無視していくのが正解だと知った。


 街の反対側の家は2、3軒しかなかったためすぐにわかった。

 コンコン。すみませーん!


「なんだい。ドール屋はバイトを雇ったのかい?」


「いえ。手伝ってはいるのですがばいとではありません。これ、頼まれてたものです。」


 おじいさんは箱を受け取ると


「そういえばどこかの国のお偉いさんが来てるらしいなあ。そんな人を呼ぶよりあの話をどうにかして欲しいなあ。」


 あの話?


「ああ。何か知らんがここらの野菜の質が悪いって噂がたっててなあ。まあわしみたいな隠居には関係ないがなあ。」

 なるほど。野菜の質か。見たところ普通の畑に普通の水路に見える。


 「ということは所謂けいごう相手のさくせんlって事か。ふむふむよし!」


 近くの畑で収穫してる人に言い放った。


「私がこの畑の野菜全部買います!」


「はい??」


 なんだなんだ?

 アーサー王が畑の野菜全部買ってくだって?

 すげぇ。さすが一国の王様だよ。


 アーサーは村の入り口に待たせてある馬車に野菜を乗せた。


 ───ドール、アリ〼看板前


「で?なんだって配達に行って逆に野菜をかってくるんだ?しかもキュウリばかりを。」


「え?だって野菜が悪評で売れないっておじいさんが。」


「はっはっ!そりゃ騙されたな!あそこの野菜はそこそこ評判いいぞ。そりゃ売れ残って廃棄になる分も少しはあるだろうが。」


 「あっ、剣が。。。」

 なぜか 剣が チリになった !!




 3日後。メイドが釈放されたので帰路に着いた。

「アーサー様!おひさしゅう!ございます!えっこれ、髪飾り?おそろいね!」

(キュウリは冷やし麺に使ってお城の人で完食しました)


 17本目の剣読了。

 Thi・18本目の剣を始めますよろしいですか?

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