16本目の剣

 私はガラス玉を拾った

 それは丸くてまるで飴の様に綺麗で

 誰かの落とし物だと思っていた

 その日の夜。雨が降る

 次の日外に出ると床一面に例のガラス玉が。

 とある人物の日記『179ページ』

 "空からの落とし物"より


「ガラスの国?なにそれ。」

「アーサー王は存じなくて当然かと思います。なんでも建物から馬車に至るまで全てガラスでできた国だとか。その国をジェロ様が訪れる予定らしいのですが、その国に特産品としてガラスのスノードームがあるらしいのです。いかがでしょう。わたくしの依頼をお受けになられてみるのは。」

「・・・わかりました。でも!ジェロがついていくの拒否したらムリだからね?」

 依頼とは即ちある約束の暗喩。

 約束?あー。メイド長はメイドに幅を効かせられる。つまりメイドに仕事外の事を頼む時メイド長に"依頼"する。そして逆にメイド長は私に頼み事がある時"依頼"します。と言う。

 つまり難しい言葉だと等価交換の仲ってこと。


「ジェロ、ガラスの国に行くって聞いたんだけど?」

「アーサー王でもやはり女子(おなご)か。ガラス細工をお土産に持ってこよう。」

「あー。そういうんじゃなくって・・・ガラスの国に行ってみたいなーと。」

「ほお。よろしい。アームドパルト殿にも声をかけておくから1時間後に西門前で落ち合おう。」


 ───1時間後───


「ハッハッハ。アーサーがガラス細工とは!まるで街娘のような発想だな。」

「アームドパルト?この前の訓練の件で減給は覚悟しておきなさい?」

「一月分の給料は痛いがアーサーは無給だからな。それよりかは」

「誰が一月と言いました?昇給でもないかぎりずっと減ったままですよ。」

「それはいいんだが敬語はやめにしないか?」

「いいんかい!!」

「さてアーサー王も衣装を新調したことだし新しい気分でいこう。」


 さて、ガラスの国は王都から西に15日そこから山森を登りきったところにある。

「うわぁ・・・!!」

 アーサーが思わず感嘆を漏らすのもうなづける。

 街の街灯から家、売っている物まで全てガラス。ガラス。ガラス。

「いらっしゃい。アーサー王。」

 えっ?私のこと知ってる??

「嗚呼。聞いた話によるとだな。"ガラスのように情報が筒抜け"の国らしいからな。」

「じゃあ私のこと調べ尽くしてあるとか?」

「いいや。そうじゃないですよ。この国にいる限り、目の前の人の情報は勝手に頭に入ってくる。そういう剣があるのですよ。御神木に刺さった御神剣のおかげです。」

「御真剣?真面目ってこと?」

「アーサー王。字が違うよ。真ではなく神。この国では名剣を神と崇めてそうよんでるそうだよ。」

 なるほど。

(ガラスのスノードーム売ってないかな・・・)

「おや?アーサー王?スノードームを探しているんで?」

「心読まないでください。」

「ははっ。失礼しました。この国では普通のことなのでつい。それはそうとスノードームでしたら、雪散り堂のものがおすすめです。案内しましょうか?」

「お願いします。」

 ジェロはこの国の人に用があるらしく、聖堂に向かったのでアームドパルトと雪散り堂に。

 カランカラン。

「ほお?スノードームっていうのは種類があるんだな。・・・たかっ!金貨3枚!?」

「まあ、予算は金貨10枚だからいいとして。」

(メイドの好みなんてわからないよ・・・)

「なるほど。アーサー様はメイドにお土産を買いに来たのですね。」

「だから心読まないでって。」

「すみません。勝手に分かってしまう物なので。メイドでしたらこの辺りのものを買われることが多いですよ。」

 ガラスの中に雪が舞い、女の子が男の子にプレゼントを渡している。

「シンプルでいいね!これください!」

 まいどあり!カランカラン。

「さてと。せっかくだから御神剣とやらを見ていくのはどうだ?」

 御神剣こちらから広場へ

「看板があるね。広場に剣が刺さってるのって定番なの?」

 アーサーの疑問など答えず広場に向かった。

「ガラスの国名物!水饅頭はいかがー?」

「ゴクッ。アーサー。実は俺はお菓子に目がない。涼しげな見た目もいい。買ってくれ。」

「って。女の子に奢ってもらうのは男としてどうなの?」

「嗚呼。全然問題ない。昔はよく奢ってもらったもんだ。」

 アーサーは疑問に思いつつお菓子を2人分買った。

「みず、なんだっけ?」

「水饅頭だ。」

 アーサーは背もたれが丁度良さそうなガラスにもたれ掛かった。

(みずまんじゅう・・・みずまんじゅう)

 アーサーは考えごとをしていて気づかなかった。背もたれがだんだん傾いて倒れてしまった。

 ドシン!

「あいたた・・・。」

 アーサーは背もたれをみなおして合点がいった。

「ガラスで出来た剣。あっ、御神剣だ。これ。」

 アームドパルトが近づいてくる。

「・・・」パクパク

「えっ?なんて?」

 アームドパルトが何を言ってるのかが聞き取れなかった。

『・・・』しん・・・。

 まるで辺りから音が消えたように。

「・・・」パクパク

 アームドパルトは何もなかったかのように隣に座り水饅頭を食べ始めた。

「?」

 ま、いいか。もぐもぐ。おいし!

「・・・」パクパク

 アームドパルトが聖堂を指差して口パクをした。

「あー。聖堂にいこうってこと?」

「・・・」パクパク

 アームドパルトがうなづき立ち上がった。

「あっ。待ってよ。」

「・・・」パクパク

 しかしこうして見ると鯉みたいだな。

「・・・」

「・・・」

 聖堂まで静かだった。あっ。御神剣置いて来ちゃった。

「・・・」パクパク。チャキっ。

 アームドパルトが不意に剣を構える。

「アームドパルト?」

 聖堂の中の人達が一斉に剣を構えた。

 キンッ!

 アームドパルトがアーサーを庇う。

「!?」

 キンッ!キンッキンッ!ガキン!

 アームドパルトが峰打ちで1人倒すと散り散りに逃げていった。

「???」

 訳がわからない。

 !!。

 手を引っ張られた。

 ジェロが手を引いていた。

 聖堂から抜け出すとそこは血の海だった。

 アームドパルトが後ろから来ていた。

「・・・!!」パクパク!

 アームドパルトに先導されて街中を走る。

 阿鼻叫喚とはこのことだろう。

 !!。

 男が剣で子供に斬り掛かっていた。

 キンッ!

「逃げて!」

 アーサーが受け止めて逃げるように促した。

 よく見ると男が持ってる剣。

「御神剣。」

「。。。。」

 男が天を見上げて笑っていた。

「アームドパルト!」

 アームドパルトが後ろから斬りかかる。

 キンッ。

 男は受け止めてアームドパルトを突き飛ばした。

 男が逃げる民衆を斬ろうとした。

 ザッ!

 アーサーが一歩で男の背中を捉え、斬った。

「がああぁぁぁぁぁぁ!!」

 男の悲鳴が痛々しく響く。

「アーサー!」

「あれ?音が。」

 男の握っていた御神剣がチリになった。

「アーサー王!ご無事か?詳しいことは後だ。ひとまずこの国を出よう。」

 国のそとに出ると別の世界かと思うほど静かだった。

「・・・アーサー王。実は御神剣を抜いたという男が自分が神だといって反乱を起こしたらしいんだよ。本当に不運だったとしか。」

 アーサーは何も言わなかった。


 メイドにお土産を渡した。

「アーサー様!ありがとう!でも大丈夫だった?ジェロ様がガラスの国に攻め入ったんでしょう?ジェロ様は戦争が好きだそうだから。」

 アーサーは何も言えなかった。


 16本目の剣読了。

 Thi・17本目の剣を始めますよろしいですか?







 魔眼名:ガラスの魔眼

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