サ終
赤城ハル
第1話
惰性か義務のどちらかといえば、両方である。
もはや連続ログインボーナス目当てで起動し、1日1回のギルド対抗戦に義務で参加している。
ただそれだけ。
面白くはない。
むしろ苦痛。
名は出さないが、このソーシャルゲームは私にとって初めてスマホを手にした時、初めてインストールしたゲームであった。このゲームをインストールしたのはキャラクターに惹かれてであった。
でも、育成やゲームイベントも面白く、正直ハマった。少し課金もした。課金もまたこのソシャゲが初めてであった。
でも次第に熱は冷め、惰性になってきた。
メインストーリーは馬鹿みたいにぐだぐだに続き、今ではシナリオなんて読んでもいない。新イベントはシナリオが変わっただけの同じイベント。◯周年記念イベントも使い回し。人気キャラ投票も毎回同じ上位陣。運営もそれを考慮して新キャラ投入も普通で、目新しさはなかった。
けれど、このソシャゲを続けたのは『もったいない』という気持ちだけであった。
多少の課金はしたが、ここまでキャラを育て、プレイし続けたのだ。ここで辞めたら『もったいない』だ。
そしてもう一つある。それはギルド対抗戦だ。これも私がゲームをプレイし続ける要因である。
当初は参加率も多く、ギルドチャットもコメントが多かった。
それが今ではギルド対抗戦の参加率は低く、コメントも挨拶だけ。その挨拶も苦痛。もう無言でいたい。
ギルド対抗戦も参加するのを辞めたい。
しかし、辞められない。
それはギルメン内で私が上位にいるということである。
ギルドリーダーより強いと言うのは残酷である。
周りには私より強くなっていただきたいが、ギルメンもまた惰性でやっているので、強くならない。
もし上位の私が辞めたら、このギルドはどうなるのか。
……いや、どうにもならないだろう。
ギルドリーダーは他のギルメンにサンパンでもいいから、なるべく参加をと呼びかけを行っているが集まらない。
サンパンとは戦闘3回ということ。ギルド対抗戦では戦闘3回するだけで参加報酬が得られる。
いっそのこと解散してもらいたい。しかし、このソシャゲにはギルド解散は存在しない。一度作ったギルドはずっと存在する。
たとえ、リーダー1人になろうとも。
たとえ、その1人がアプリをアンインストールしても。
一度作られたギルドはゲーム内にずっと存在する。
そして、そういったギルドはゴーストギルドと呼ばれている。
そこまで苦痛だと感じるならギルドを抜ければ良い。しかし、勝手に抜けるのも罪悪感があるし、抜けることを告げるのも罪悪感がある。
こうしてずるずると私はギルドに居続けているのだ。
今日のギルド対抗戦もまたゴーストギルドとの対戦だった。ギルド対抗戦は同じギルドランクから選ばれる。
ギルドランクはSランクからFランクまであり、ランクは週の成績によって、成績順に決められる。
昔はSランクは廃課金クラス。Aランクは重課金クラス。Bランクは微課金。Cランクは無課金古参プレイヤー。Dランク以下は新参無課金プレイヤーであった。
でも今は私のような無課金化した古参プレイヤーがいるギルドがAランクで、さらにそこに、ゴーストギルドもいる始末。
なぜ何もしないゴーストがAランクに入るのかというとギルド対抗戦は文字通り相手と対戦。その対戦は戦闘をタップすると自動で戦闘が始まる。そしてその戦闘で勝っても負けてもポイントが入る。それは防衛した相手にも。だからタコ殴りにされたゴーストギルドにもポイントが大量に入る。
このシステムは当初、弱小ギルド救済措置としてあった。それが今では皮肉にもタコ殴りにされ、何もしないゴーストギルドがのし上がってしまうシステムとなってしまった。
ゴーストギルド戦は、ただ相手をタコ殴りにするだけ。
コンボを繋げるだけ。
相手を倒すとクリスタルブレイクチャンス。
クリスタルを破壊して大量ポイント。
でもポイントなんていらない。
コンボを繋げるだけ。
昔は自身が、連続2回攻撃するとコンボが切れるが、今はコンボが増えないだけでコンボは切れない。
私はギルメンの誰かが
何が面白いのか。
これはただギルドのためコンボを繋げるという義務。
そして7年も続いたこのソシャゲもサービス終了告知が発表された。突然のことなので驚いたが、喜びもあった。
それは呪縛からの解放。
でも、「ああ、とうとう終わるのか」という虚無感もあった。
このキャラとも、もう会えないのかという寂寥もある。
意外と自分でも知らないうちに複雑だったらしい。
そして最終日、ギルメンとの最後もあっさりだった。『今までお付き合いありがとうございました』というテンプレがギルドチャットに並んだ。
参加率が悪いプレイヤーもコメントを残した。そういえばこのプレイヤーとも7年の付き合いかと思うと苦笑した。
今でもギルド対抗戦の時間になると、このソシャゲを思い出す。
サ終 赤城ハル @akagi-haru
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