第112話 暗転直下(Ⅲ)
▲▽▲
抱えていたお悩みにようやく解決の糸口が見えた
翌朝、ルンルン気分で朝食の席に着く。
「気分スッキリですわ!」
鼻歌を歌いながらトーストにバターを塗る私に、モーニングティーを差し出すフブキ。
「お嬢様、食事中に歌うのはハシタナイですよ」
「良いじゃないですか、久々に安眠出来て気分上々ですのよ」
上々の後に上矢印二回つけたいくらいには気分上々ですわ。
「おかしいですね、お嬢様は大体いつもどんな時も爆睡している筈ですが?」
「いやいや、いつも悩みを抱えて大変だったじゃない」
むしろ今の今まで、悩みまくりの苦悩しまくりで心労の絶えない人生だったと言っても過言ではない。
そんな私が毎夜毎夜よだれ垂らして爆睡しているわけがないじゃない!
「そんな、まるで私が図太く鈍感な精神構造をしているみたいな言い方はよして」
「図太くて鈍感な精神構造をしていると思ってますが?」
相変わらず慇懃無礼なフブキの対応に、私は思わず頬を膨らませる。
──が、そんな彼女の不躾な物言いも微笑みひとつ浮かべながら悠々と受け流せるのが今の私。
これまでは味方と言えるのがフブキにミオ、アヤメちゃんの三人くらいしかいなかったけど!
今は──いやこれからは違う。
「私には、力強い仲間たちが出来ましたから! ぼっちを実質脱却出来ましたから!! 今朝に限っては心の余裕が違いましてよフブキ!!」
もう気軽に"ぐぬぬぬ"みたいな顔を拝めると思うなよ!
私がぼっちで頼る先がメイドたちしかいかなったから主導権握られがちだったが、今度からはそうはいかない。
「
私は立ち上がり、そして「おーっほっほっほ」と実に
「おーっほっほっほっほ、おーっほっほっほっほ、おーっほっほっほっほ、ほ、ほ──」
「──満足しました?」
「あ、はい」
無駄に普段使わない高音域の笑い声をあげつづけたせいで、ちょっと喉が痛い。
素直にストンと椅子に座り直して、フブキの淹れてくれたモーニングティーで喉を癒そう。
「あと、差し出がましいとは思いますが、あまり直近で急に出来たお友達を信用しすぎるのはよろしくないかと」
何を言ってるんだこのメイドは!
レスバに負けた腹いせに嫌味か?
まぁ、そんな嫌味程度はぜーんぜん気になりませんがね。
悠々としたり顔でカップを持ち、暖かい紅茶を喉に流し込──。
「どうやら、遠野花鈴が誘拐されたようですがよろしいですか?」
「げぼぶへらッぁああッ!?!?」
──盛大に咽せた。
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