第110話 暗転直下(Ⅰ)
▲▽▲
「──という感じでして、月乃さんがなかなかトチ狂ってあそばせてるので早く目を覚まさして差し上げたいのですが」
「あぁン?」
事情を話した瞬間、剣将くんにガンつけられた。
こわい。
「あ、いや。いやいやいや、待てよ」
彼は少し顎に手を当てて何かを考える素振りを見せた後、やはりとかぶりを振って何かを否定する。
「お前が命を狙われてるって話じゃなかったのか!?」
「何それ初耳ですわ!?」
え、
こっわ。
「俺はてっきり誰かに命を狙われてるから、助けてくれって話だと」
「いやそれだと貴方にはユキちゃん様頼まないと思いますよ。
「は、やンのか?」
「ちょっと、や、やめましょ仲間割れ!」
アヤメちゃんの鋭利な言葉が剣将くんを刺激して一触即発。
慌てて仲裁に入る。
え、仲間割れ早すぎない?
こういう展開って中盤終わりくらいにやるのがテンプレだと思うんだけど。
あと、アヤメちゃんの言う事はもっともだし、仮に二人が喧嘩になったらアヤメちゃんの圧勝だと思う。
つまり私が今止めに入ったのは、剣将くんの身の安全の為だったり。
「そもそも、命を狙われてるってどういう事です?」
手を上げてそう発言したのは、宮古杖助くん。
多分集まったメンバーの中で唯一の知性派。
「普代が慌てて紫波さんに縁のある人たちをこうして集めたのは、その勘違いというか早とちりが原因なのはわかったけど、なんでそう思ったのか教えてほしい」
「それはとおn──、風の噂で」
「風の噂?」
「伝え聞いた話で」
「伝え聞いた話?」
成る程。
伝え聞いた風の噂ね。
それなら仕方ないわ。
私も出どころわからない噂やリーク情報に踊らされることがあるし。
気持ちはわからないわけじゃない。
むしろ、そこまで心配してくれたことが嬉しい。
推しに認知され、友達になった上に命の心配をされるとか、ぜひ前世の私に教えてあげたい。
多分卒倒する自信がある。
「じゃあ、紫波さんは別に命を狙われる心当たりとかは全然ないのね?」
クラスメイトの女の子の一人がそんなことを聞いてくる。
それに対して、「うん!」と即答出来ればよかったんだけど──。
「うーん?」
正直、全くないわけでもなかったりするから困る。
あ、先日私を虐めた三人はフブキが別途制裁を加えたらしいから再発や仕返しはない。
だが、身に覚えがなくても恨まれてしまうことは現にあったわけで。
それに、原作でもルートによって死んだり死ぬに近い結末も多々あったりしたし。
故意に私の命をばちくそ狙ってきそうな人物筆頭を、敢えて上げるなら──。
「──遠野花鈴じゃないかなぁ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます