第11話 蒼
リーベさん。私は――。
あの廃村で出会ってから私の生活は変わった。
私が害になるかもしれないモンスターであることにも関わらず、殺さずに、家に招いてくれた。こんな身寄りも無いような自分に服を着せてくれた。人間の友達も出来た。私は人と話すことが怖くて出来なかったけれど、その人達は私と優しく接してくれた。
そして夜には一緒に寝てくれた。
――温かかった。
人肌に触れた時のあのぬくもりに会うのは久しぶりだった——。
たまらない嬉しさを感じた。思い出したのだあの頃の日常を。何気ない日々、温かい日差し、共に笑い合える人達。
「……」
私は今一度、瓦礫の中真っすぐ見た。リーベが倒れこんでいてそれに対してトドメを刺そうとするフィシ。
(嫌だ)
心の中でそう叫んでいた。
(もう失いたくない)
「……」
(嫌なんだ、もう目の前で全部無くなって行くのを見るだけなんて)
「……」
(動け! 行くんだ! 行動しろ! 自分の意志を証明するんだ!)
◇◇◇
「じゃあな、リーベ・ワシントン」
そう言ってフィシは杖を下した。私を殺すトドメの合図だ。
(もう、体が動かない、死んじゃうんだ、私はここで、テール、ごめんね)
私は涙を流して、この状況を受け入れて眼を閉じた。悔しかった、最強とか別格のステータスと言われた、この私が今じゃこの座間である。自分の無力差を初めて痛感した。まぁ今となっちゃもう遅いことだ。
これから何もかもなくなるのだかr……。
「やめろ!」
(え?)
そこにいたのはテールだった。テールが血を流しながら立っていた。それを見たフィシは魔法を解除して様子を見ることにしたようだ。
「なんだお前、まだ動けたのか」
フィシはゆっくりと話を始めた。まだ息の根があったのかと言わんばかりの静かな怒りをフィシから感じた。なぜなら当初からフィシの目的はテールだったからだ。
「リーベさんから離れて」
「やだね」
「こんなの間違ってる」
「そんなことはもう知ってる」
「じゃあ……」
「やめないよ、俺は」
二人の対談が続く、いつも無口であったテールがこんなにも話すのはどこか違和感を感じていた。
「だったらお前がなんとかしろよ」
「……わかった」
テールは構えた。普通に考えてまず無理である。戦力差がありすぎる。勝てるわけが無い。
「待って……テールには何もしないで……」
私はフィシの服を掴んで止めようとした。これ以上フィシに傷ついて欲しくなかったのだ。
「黙れうるさい、引っ込んでろ」
「……!?」
私はフィシに振り払われ激しく地面に叩きつけられた。
「リーベさん!」
私は強く頭を打たれ、意識が遠くなり、気絶してしまった。
◇◇◇
「……あ、あ、リーベさん」
「ふん、いつまでも邪魔しやがって」
「リーベさん……リーベさん……」
「あ?なんだお前?」
「……僕のせいで」
「ほらさっさと始めるぞ」
――は?なんだこいつ?フィシは本気で言ってるのか?リーベさんは今、お前のせいで。
「おい! 聞いてんのか! 魔族風情が!!!」
「……は? 黙れよ」
私の今の心境は真っ赤に染まっていた。怒りである。私は確かに怒っていた。むかついているとかそんなものでは無い、頭の中っではその色で埋め尽くされていた。
「なんだ、やっとやる気になったか」
「良いから早くしろよ」
私は深く息を吸い込み、フィシに静かに威嚇する感じでこう言った。
「一撃で仕留めてやる」
「調子に乗りやがって、……!?」
私はフィシの発言を無視して、魔法陣を展開した。大きさは小さな自分とは比べ物にならない位の規模である。夜だったから余計に明るくて眩しかった。やがて魔法陣から魔法属性が出て来た。その魔法属性は【炎】である。
「……なんだそれ!?」
フィシはそう言った。
その炎は蒼かった。蒼い炎である——。
やがてその大きさは圧倒的になり、炎が膨れ上がった。
「くらえ」
私は静かにそう言い放つと蒼い炎はフィシに向かって行った。
「……くっ」
フィシはバリアを展開した。テールの炎を全部受けようとしたのだ。しかし——。
「……え」
バリアは直ぐに破られた。これだけの強化を果たしたがテールの魔力には太刀打ちできなかったらしい。
「……嘘だろ」
フィシはそのまま炎に飲み込まれた。容赦のない蒼い炎が襲う。
「……」
テールが蒼い炎を全て、解き放った後フィシの様子を見に行った。
「……」
フィシは戦闘不能になった。あの禍々しかったオーラも消えて、いつも通りの姿のフィシに戻っていた。
宣言通り、文字通りの一撃である——。
「あ! リーベさん!」
私は直ぐにリーベの所に向かった。心配と不安と焦燥感でしかなかった、大丈夫だろうか。
「リーベさん! リーベさん!」
私はリーベの元に行って、呼びかけた。
「リーベさん! 起きてください!」
反応がない。やだ。やめてよ。
「リーベさん! 起きて! 起きてよ!」
涙が溢れ出て来た。もう、やめてほしい。嫌だ。
「リーベさん!」
私は忽ち、蹲ってしまい、大声で泣き叫んでいた。さっき狂った程、怒っていた人が嘘見たいな光景である。
「……テール?」
「リーベさん!」
リーベはゆっくりと目を開けて、私の方を見た。体力もなく怪我も多くしているのに、目を覚ましたのだ。
「……テール、ごめんね、危険な目に合わせちゃったね」
リーベは私にそう言ってくれました。リーベは泣いてしまっていた。その泣き顔を見た時にキュンとしてしまった。
「良かった……」
(あれ、体が……急に重く、、、)
◇◇◇
「良かった……」
テールは一言、言った後、倒れこんだ。私の体の上で倒れこんだので、頭を打たずには済んだ。
「テール? あ……」
テールは眠っていた。さっきの戦いでの疲労が私が起きたことで安心感を感じて、疲労が一気に来たのだろう。
「ありがとう、良く頑張ったね」
私は眠っているテールに褒めて、頭を撫でた。
しかし妙なことが頭を過る。フィシのあの強化はなんだったのだろう。あの試験管に入っていたものはなんだろうか。そもそもどこからあんなものが?
――わからない。
「あ! ギルド長! リーベ・ワシントンさん達を見つけました!」
スミレさんが来た。この事態にギルドが動いていたらしい。
(とりあえず、ギルド達に助けて貰ってから考えよう)
心の中で思い、テールの安否を確認しながら寝た。
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