第4話 まずい……
私はテールの手を握りながら、一緒に歩いていた。
(なんで私が男の子の面倒をみることに?!)
そう、思った後、私はアリス達に応援を貰い、別れた。
(いや確かに、効率は良いよ? 監視役なんだから、見守るべきだし、だけど私は独り身、そう子供の頃からずっと一人だったし、家事なんてしたことが無い! これから大丈夫かなぁ?)
そうやって若干、不安になりながらもテールを見た。
「……」
少し半目だった。眠たいのだろうか。そっか、テールにとって今日は忙しい一日だったし、眠たいのもわかる。
(そうだよね、私が不安になってどうする? テールはそれ以上に厳しい生活を送ってきたかもしれないのに、頑張らないと!)
自分に気合いを入れていたら、いつのまにか自分の家に着いた。そして私は家のドアを開けようとしようした。
(……あ!)
私は途中まで開けていたドアを素早く閉じる。あまりにも、速く閉めてしまったせいで、少し大きな音が出てしまった。
「……!」
テールが驚いてしまった。こっちを見ている――。
(やばい、どうしよう……)
私は家事が出来ないことよりも重要なことを忘れていた。
(部屋がそのままだったー!)
そう、私の家は依頼に行く前の状態、つまりあの汚部屋が広がったままである。あの汚れた、空気が悪い、堕落の象徴とも言えるものだった。
(もし、今の部屋をテールに見せてしまったら……絶対に引かれるっ! この人、冒険者なのに依頼の管理は出来るくせに部屋の管理は全然なんだって思われたりしたら、無理! 生きていけない!)
私はテールの方を見た。笑顔で見た。でもそれは、自然な笑顔ではなく、繕った笑顔である。なんとか保ち続けて、テールに言った。
「テール、ちょっとそこで待っててくれる? すぐに戻るから!」
そう言って、私は風のように家の中に入った。
(とりあえず、どこかに隠さないと!)
私は一度に多くの荷物(ごみも含めて)を担いで、隠す場所を探した。
◇◇◇
「……」
「おい! そこの餓鬼!」
「……」ビクッ!
「お前だな? ちょっと来い!」
「……んぐっがはっ!」
「よし、気絶したようだ、あとは……」
◇◇◇
(これで、とりあえずは――。)
目に見える範囲のごみや物は全て隠した。お客を招き入れるくらいにはなった。因みに隠した場所はお風呂場である。しばらくはギルドのシャワールームを借りよう、うん。よし、テールを呼びに行かくちゃ!
「テール! お待たせしたよー……あれ?」
そこにはテールが居なかった――。私は確かにテールに「ちょっと待ってて」と言った。まさかテールが自分からどっかに歩いて行くとは思えない。
「ん? これは……」
そこにあったのは小さい足跡と大きなの足跡があった。そして小さい足跡は途中から線が出来ている。その線は決して一直線ではなく、大雑把に曲がりくねっていた。だけど大きな足跡には何時までも形が残っていた。
「これは、まずい……」
私は急いで足跡を追った。
◇◇◇
「さて、こいつをどうしようか」
「リーダー! こいつ! ギルド長が言ってた魔人族だ!」
「本当か?」
「あぁ! 間違いねぇ! リーダーそいつの髪をずらしてみてください!」
「どれ……こいつっ」
「……」ギロッ
「まだわからねぇ、ようだな!」
「……ウッ!」
「リーダー、こんな餓鬼を相手に腹を殴るとかまじぃよ!」
「……ふん! おら! 髪を見せろ、――どうやら本当らしいな、小さいが角が確かに二本ある」
「リーダー! こいつ、どうする?」
「ギルドに向かって身代金を要求しても良いが、俺らが返り討ちにあうだろう、だから奴隷として悪徳のやつらに高値で売りつけてやろう! 運が良いことにこいつは顔が良い! きっとすぐに決算が出る!」
「……ゼーハァ」
「ほぉら、選べ! 今すぐ、奴隷になるか、ここで俺に殺されて、お前が死ぬか」
「……グッ!」
「足で攻撃するとは、マジで死にたいようだな!」
「……フーフゥ」
「死ね!」
◇◇◇
(居た!)
私は盗賊に殺されそうになっている、テールを見つけた。
「お前ら、よくも!」
盗賊は完全にビビっていた。
「ま、待ってくれ!」
私は咄嗟に、魔力を手にまとわせて、顔面を殴りつけた。手応えしかなかった。だって私の眼の前で倒れているからだ。
「リーダー!」
リーダーと言ったこいつはその手下か――。でも何でもよい、だって絶対に許すことは無いからだ。こいつもやる。
「うーん」
倒れていた盗賊は起き上がった。でも体力はないはず。もう一度、今度は腹を殴った。
「がはッ」
「これはテールの分だ」
「リーダー! 今、応せ……」
手下は気絶させた。私は憎しみを込めて手下の首の後ろを思いっ切りチョップをかましてやった。
「さーてあとは……」
私は金属性の魔力を使い、簡単な檻を作成、そして適当に盗賊一味を入れて、別の魔法でギルド宛に転送させた。これで奴らはすぐに捕まるだろう――。
「……」
テールは私の服を掴んでいた。
「……」ギュッ
私は突然、テールを抱きしめた。そして密かに泣いた――。
「ごめんね。私があなたを一人にさせたばかりに……すっごい心配した。あなたが無事でホントに良かった――。」
私はテールに謝った。人生でこんなにも人を心配して謝ったのは初めてだった。でもそれと同時に私は安心もした。なぜなら、私がテールを抱きしめて、彼の体温を感じている現実があったからだ。
少し時間が経って、私はテールと一緒に家に帰るときだった。
(あーどうしようー少年の年頃であっても、泣いちゃった! こんな教会のときはかっこよくクールに助けたのに! どうしようーあんなに強いのに泣いちゃうこともあるんだねーとか思われたらどうしようーー!)
そしてテールと一緒に夕食を外で済まして、やがて家に着いた。今日はもうお互いクタクタである。今でも眠りそうだ――。
「さぁ~どうぞぉ~」
眠すぎて呂律が回らなかった。ドアを開ける。テールを中に入れる。そこには、広々とした、リビングにテーブルとベットがあった。我ながら片づけたほうである。
「おふr……」
(あーそうだった。この部屋にあったものは全部、お風呂場に敷き詰めていたんだった)
「……?」
テールがこっちを見ている。どうやら、私の言ったことが気になるようだ。まずい――。
「お風呂は今日は良いかな、お互い疲れたから、そんな体力残ってないでしょ?」
「……」コクンッ
テールは頷いた。なんとかなった――。
「私、着替えてくるからぁ部屋で大人しく待ってて~」
「……」コクンッ
私はさっきの反省を踏まえて早めに装備を外して、衣服だけを着た状態になって、すぐに戻った。テールがいたことを安心して、次はテールに服を着替えるように指示しようと思ったのだが――。
「テールゥ? 着替える服ある?」
「……」ブンブンッ
テールは首を横に振っていた。どうやら、無いみたいだ。私は昔の子供時代に着てて中々捨てられていない服でテールの服を代用することになった。しばらくして家中の物入を一人で確認してやっと一着だけ見つかった。だけど、その服は、水色の水玉模様でズボンはさらに薄い水色だった。こんな可愛らしい柄をテールは来てくれるのだろうか――。
「テールゥ? 一様あったぁふくぅなんだけど着るぅ?」
「……」コクン
やがて、テールは着替えた。意外にも似合っていた。だけど、かなりぶかぶかであった。ズボンは辛うじて問題無いが、腕の長さ合わせないせいか手が出て来ない。
「テールゥーこっち来なさーい」
「……」
テールが私の近くまでやって来た。
「腕を伸ばしてー」
「……」ピーン
私はテールの服の袖を折り続けた。出来たけど、ぐちゃぐちゃな感じだった。だけどやらないよりもマシ……だよね?
「よしねようかな~」
私はベットで、横になった。
(あれ……テールは?)
――テールは床の上で寝ようとしていた。
いくら家のリビングであっても、スライムと同じぐらいの冷たさはあるはずだ。
「テール、こっちに来なー」
テールは起き上がって、こちらを見た。
「……」
テールはオドオドとしていた。確かに一人用のベットだが、テールぐらいの大きさなら入れた。それよりも床の上で寝るという行動を避けさせたかったのだ。
「テールゥ良いよぉきなぁ」
「……」
テールはおそるおそる、ゆっくりと入って来た。私はテールの顔を自身の方に向けさせ、片手で優しく抱きしめてもう片方で、頭をなでながら寝た。テールも安心したのかすぐに寝に入った。
二人とも一つのベットでお互い眠った――。
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