第9話『素直な気持ち、そして失う』

柊が待つ場所に行くと、誰かに絡まれたのか頬に殴られた痕と酔ってフラフラとしながら凛の方に向かうと微笑み首元にキスをしようと埋めるも「やめて!何がしたいの?ねぇ?柊は何がしたい訳?」と拒絶し大声で怒鳴った。「そんなカッカするなよ笑 俺は凛に会いたかった」といつもと態度が違うのは分かっていたが怒りが込み上げてきて怒鳴るしかなかった。すると、路地裏の影を見た柊は凛の腕を持ちその場から逃げ出した。二人は倉庫のような場所に着くと「何、急に笑 久しぶりにあんな走ったよ笑」「俺も笑 気持ちなぁがむしゃらに走るってのも笑」とバカ笑いしていた。「柊といるとなんか狂う、自分が何をしたいのか、何をしようとしてるのか分からなくなる。でも、一緒にいて落ち着くのは本当!」と初めて心から笑った様子だった。「凛ってそんな感じで笑うんだな笑」と微笑む。二人はいつしか凛、柊と呼び合う関係になっていた。だがそんな笑ってる時間がないとも知らずに……


「おい、柊!お前は邪魔んだよ」と数人の男たちが倉庫に入ってきた。その中に凛の知る幹部や下っ端もいた。「ちょっと、どう言ゔっ?」と拳銃で顔をぶたれた。「もうお嬢だけに任せて置けないからな」と柊に数発放つと倒れ込む。「ゔっ…」と倒れる柊、「凛さんっ!」と航太が側に来て起こしてくれた。護衛の為に持っていたであろう拳銃を奪い男たちに向け放つも全員に当たる訳ではなかった。乱闘騒ぎで外からはサイレンが鳴り、柊と凛、航太が残った。「柊っ!」と倒れた柊を起こし支えるも意識が朦朧としており支えきれない。航太はそれに加勢するも凛たちの腕から離れ倒れ込んだ。「俺はいいから行け!」と言う柊に対して「柊を置いていけないよ」と弱音を吐いたが“行け!”と最後の力を振り絞って叫ぶ柊に航太が何かを察したのか「凛さん、行きましょ」と凛の腕を取り二人で倉庫を出た。


波止場で座り込む凛の姿をただ見る事しかできない航太の気持ちはきっともどかしいだろう。

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