第5話『焦りと不安』

そして、父親に今夜から彼の情報を知る為に小屋で過ごす事を伝えると「期待しているぞ、凛!」と父親ではなく、組長の言葉だった。

「誰と話してんだよ」と後ろから抱きしめてきたから電話を切った。「内緒っ」とキスをした。

「お前、キス上手くなったか?笑」と微笑むと久しぶりの柊の腕の中で眠った。


「柊の寝顔、可愛い笑」と先に起きた凛は柊の寝顔を見ていた。内心、“本気になるな!” “これは情報収集の一つだ!” “柊も…お母さんも…私が……”と自分と葛藤していた。

「お前、早くないか?……凛?」と返事がなく名前を呼ぶと、「え?あっ、おはよう笑 起きたのね」と焦りを隠しながらベッドから出ようとするも腕を捕まれまた柊の腕の中に戻る。

「一人で抱え込むなよ……俺、頼りねぇけど凛の味方だから」と今までで一番の優しい言葉だった。「ありがとう……柊」といつしか彼の腕の中で眠っていた。


凛が目を覚ますと、柊はおらず外が騒がしかった。何も知らない凛は外に出てみると、柊と見た事のある組合員と初めて見る不良っぽい青年を含む数人とやり合っていた。「女いますよ」と一番の若者である男に気づかれたが、この青年と凛が後に出逢う事になるとは知らなかった。

「凛っ!入れ!」と柊の声で我に帰り、小屋に入ると電話が鳴った。画面には“お父さん”と表示されていたが、凛は出ずその場で座り込む。

「凛?」と呼ぶ柊の声に対して「ごめん……やっぱり帰る……」と小屋を後にした。大通りに出た所で下っ端が車で待機していたらしく素直に車に乗り込んだ。

すると、「さっきはどうも笑 どうっすか?あの男とは?」「おい、あんまりお嬢に迷惑かけんな!すいません、新入りで!」「すいません笑」と助っ席の組員と後部座席、凛の隣に座っている可愛い男との会話など入ってこなかった。

家に帰るも父親が呼んでも返事をする事なく通り過ぎようとしていた。

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