友よさらば

ムネミツ

第1話 友よさらば

 「喰らえ、ゼンダーブレイク!」

 「うぎゃ~~~っ!」

 採石場での戦闘、テロールの怪人ガマテロ―に僕は必殺の蹴義を振るった。

 青く光り輝く斬撃で切り捨てれた怪人は爆散する。

 「決まった!」

 怪人を倒した事を確認して、残心を取る僕の足元に着弾音が響いた。

 「……雑魚を倒して貴様は満足なのか、ゼンダー?」

 「誰だお前は!」

 僕が採石場の上を見ると、そこには拳銃を構えて佇む黒い戦士がいた。

 「俺はテロールの戦士アクダマン、お前を倒す者だ♪」

 アクダマンと名乗った黒い戦士は、そう言って去って行った。

 これが僕とアクダマンの出会いだった。


 「イ~ッヒッヒッヒ♪ お前がゼンダーに変身すれば園児達はお陀仏だよ♪」

 テロールの新たな怪人、マジョテロ―が戦闘員を使い幼稚園で園児達を人質に取っていた。

 「……くそ、このままでは戦えない!」

 僕が葛藤していた時だった。

 「とうっ! せりゃっ! 貴様達は隠れていろ」

 突然、黒いライダースーツを着た野性的な黒髪の男が現れて戦闘員達を撃破する。

 「お兄ちゃん、ありがと~♪」

 「どなたか存じませんが、ありがとうございます♪」

 「……俺に礼はいらない」

 園児と先生が男に礼を言う、誰だか知らないが助かった。

 「ゼンダーチェンジ!」

 僕はゼンダーへと変身して、マジョテロ―を近くの廃工場まで投げ飛ばした。

 「おのれゼンダー、覚悟しろ!」

 マジョテロ―が杖からビームを撃って来るのを回避しつつ近づきゼンダーブレードで白兵戦を行う。

 「止めだ、ゼンダーブレイク!」

 僕がブレードに光を灯して必殺の斬撃で怪人を切り捨て撃破した。

 そんな時、どこからか口笛の音が鳴り響き先ほどの黒い男が現れた。

 「次は俺が相手だゼンダー、アクダマチェンジ」

 男は瞬時に全身に狼のような黒いスーツを身に纏った。

 「お前がアクダマンだったのか、なぜ僕を助けた!」

 僕はアクダマンに問いかける、奴もテロールの仲間だったはずだ?

 「助けた? 違うな、俺はお前と戦う邪魔を取り除いただけだ♪」

 アクダマンはそう言うと、何処からともなく赤く光る刀を取り出した。

 「お前のブレードと、俺のヤバイヤッパ―で刃物対決だ♪」

 そう言うと、アクダマンは瞬間移動のように距離を詰めて来る。

 「くっ! やはり強い!」

 奴の刀を剣で受け、僕達は鍔迫り合いになる。

 「それで受け切ったっと思っているのか? アクダマスラッシュッ!」

 奴は鍔迫り合いの状態から強引に刀を振るうと、その衝撃で僕を吹き飛ばした。

 「……くっ! ここまでか!」

 奴の技を喰らった衝撃で、変身が解除されて僕は倒れる。

 「……ふむ、スーツを着ての剣の腕はその程度か? 今のお前を切ってもつまらん、スーツも腕も鍛え直して来い」

 奴はそう言って、去って行った。

 僕はテロールとの戦いで、初めての敗北を味わった。


 「来たかゼンダー、特訓で鍛えた腕前を見せて見ろ♪ アクダマショット♪」

 人気のない採石場で、奴が僕にそう言いながら銃で撃って来る。

 「お前の弾道は読めてる!」

 僕はブレードで奴の撃った弾丸を弾き落とした。

 「チェーンホールド!」

 すると、奴の手首から黒い鎖が放たれて僕の腕に絡みつく。

 「チェーンデスマッチか、受けて立つ!」

 僕と奴は互いに鎖で繋がれたまま、刃を交える。

 「ふっ、地力上げたか♪ ならこれはどうだ♪」

 アクダマンの奴が鎖を引いて崩しにかかる。

 「読めていたさ、ゼンダーパンチ!」

 僕は奴が鎖を引いた流れに身を任せ、奴の顔にストレートを叩き込んだ。

 「ぐはっ! 良いセンスだ、それでこそ戦いがいがる♪」

 僕の一撃で互いを繋ぐ鎖が解けた、そんな時採石場の上から怪人軍団が現れて僕達に襲い掛かった。

 「おのれ再生怪人の雑魚共、俺の邪魔をするな!」

 「嫌われてるな、アクダマン♪」

 僕達は仕方なく共闘する形となり、共に怪人軍団を撃破した。

 「邪魔が入った、覚えていろゼンダー!」

 悔しそうに去っていくアクダマンに、僕は何故か親しみを感じた。


 そして、ついに迎えたテロールの基地での最後の戦い。

 「ぐぁっはっはっは♪ 死ね、ゼンダー!」

 緑色のイカの怪物としか言えない敵の首領、キングテロールの触手が僕の四肢を締め上げる!

 「ぐはっ! まだだ、まだ僕は負けてない! ゼンダービーム!」

 スーツの胴体からビームを出して触手を切り落として着地する。

 「甘い、甘い、我の再生能力をなめるな♪」

 だが、キングテロールの触手は全く間に再生した。

 「……くそ、このままではキリがない!」

 ビームのせいで、こちらのエネルギーは残り半分だった。

 「甘いのは貴様だ、キングテロール! アクダマシンガン!」

 アクダマンが基地の壁をぶち破って現れ、マシンガンを乱射する。

 「おのれアクダマン、裏切ったか!」

 アクダマンの乱入に驚くキングテロール。

 「アクダマン、どうして?」

 僕は助けに来たアクダマンに問いかける。


 「あいつが気に食わんだけだ、これを受け取れ!」

 アクダマンが僕に黒い水晶を渡す。

 「これは一体、うわ~~っ!」

 水晶受け取った瞬間、僕の体を闇が覆い瞬時にエネルギーを回復させる。

 「これは、僕のスーツが変形した!」

 僕は自分のスーツが白と黒の半々になった事に気付いた。

 「奴を倒すには善と悪の混じった力が必要だ、俺の力を使え」

 「まさか、さっきのクリスタルは君のコアなのか!」

 僕は自分が受け取ったのが、アクダマンの命だと気付く。

 「……気にするな、お前はさっさと奴を倒せ!」

 そう言うとアクダマンは、僕とキングテロールの目の前で爆散した。

 「がっはっは、愚かなりアクダマン♪」

 アクダマンの死を笑うキングテロール。

 「彼を侮辱するな~~~っ!」

 僕の怒りが爆発すると、僕の手には白と黒の半々の刀身を持つ劍が生まれた。

 「アクダマン、奴を一緒に倒そう! 喰らえ僕達の必殺、ゼンアクセイバー!」

 僕はゼンアクセイバーから金色に輝く光を発して、剣を大上段に構えてからキングテロールへと向けて振り下ろす。

 「ぎゃ~~~~~っ!」

 断末魔の悲鳴を上げながら、キングテロールは滅びテロールの基地は爆発した。

 テロールの基地から脱出した僕は、変身を解いて呟く。

 「……やったよアクダマン、そしてさようなら友よ」

 荒野に背を向けて僕は立ち去る、アクダマンとの出会いと別れが僕に使命を果たさせてくれた。

 テロールは倒したけれど、僕はこれからも彼の力と一緒に戦い続ける。

 「なんとなく、アクダマンが戦えって言ってる気がするな」

 友の姿を思い浮かべ、僕は空を見上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

友よさらば ムネミツ @yukinosita

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ