第83話 青い折り畳み傘の下で



天気予報では

曇りのち雨


灰色の空から

突然に降り出した雨に

前髪を濡らしながら

用意しておいた折り畳み傘を取り出し

俯き加減で歩く

革のブーツを履いて来なくて良かったと思いつつ


アーケードの無い道を歩いていると

商店の前で雨宿りをしている少女を見掛ける


海老茶色の紅いランドセルと黄色い帽子

いつか来る母親を待っているのだろうか?

それとも共働きの両親

誰も迎えに来てくれない日の雨宿りか


確かに

それなら幼い頃の私に似ている


傘を差し伸べれば

それだけで犯罪になりそうな世の中

少女と目を合わさないように通り過れば


その背後で

待った?

と問いかける母親の声は優しい雨にも似ていて


私は拳を握り締め

空に向かって

微笑みを返す


激しくなり始めた

雨の歩道の小さな青の折り畳み傘の下

祈りにも似た拳を握り締めて

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