第3話 たまごとはくまいのであい

 

 箸で身体の奥をぐちゃぐちゃをかきまわされたたまごはもうふわふわにとろけていた。

 

 その身体は汚された証のように、少し黒みを帯びてしまっている。

  

「おねーさん……とっても良かったです……」はぁ、はぁ♥と息を弾ませながらたまごは言う。

 

「こちらこそ、たくさん反応してくれてかわいかったわ……つい、激しくまぜまぜしちゃった♥」おねーさんはやさしくはしでたまごの表面をなでなでしながら囁く。

  

「えへへ。でも、私……こんなとろとろにされちゃった……お嫁にもう行けない……」たまごは空気の詰まった気泡をしくしくとはじかせる。

 

「大丈夫よ。あなたをもらってくれる娘にこれから会えるわ……」

 

「え、おねーさん、私をもらってくれないの……」うるる、とたまごは悲しそうになる。

 

「私もできればそうしたいんだけどね……こんなにかわいい子、手放したくないわ。でも、あなたにぴったりな許嫁がいるのよ……それこそ相性抜群のね」少し悲しそうにはしは告げる。くちゅりと、少したまごをかきまぜながら。

 

「ぴいっん♥ い、いいなずけ……?」

 

「そ、あなたのお嫁さんよ。そろそろ、お別れね……また、会えるのを楽しみにしているわ……」はしはゆっくりと器から離れていった。

 

「え、おねーさん……いっちゃやだよよぉ……」たまごはえっぐえっぐと泣いてしまう。

 

 その瞬間、たまごを入れた器がゆっくりとかたむいていく。

 

「わわわ、なにがおこったの!?」たまごは慌てる。けれどたまごなのでふんばることもできずに、かたむいている方へ滑り落ちていってしまう。

 

「おっ、おちちゃうよ……」器の端っこが近づいてくる。

 

 ……ぴたり。たまごの体が端っこにさしかかり、落ちてしまうギリギリで器が平行になり、落ちずに済む。

 

「あ、あぶないよぉ」ふう、とたまごはほっとする。

 

「はじめまして!」下の方から声をかけられる。

 

 声は器に盛られたたくさんのしろい粒から聞こえていた。ほかほかと湯気があがっている。

 

「だ、だれ?」

 

「私たちははくまいだよ〜! まいちゃんって気軽に呼んでね!」にこにこっと、彼女たちは声を揃えて

 

「まいちゃん、おぼえた……あ、私はなまたまご!」とかえす。

 

「たまご……たまごおねーさんだね! よろしくおねがいします〜!」はくまいたちはぺこり、とする。

 

「おねーさん……えへへ、ちょっと照れるなぁ」

 

「そうそう、私達とたまごおねーさん、いいなずけなんだってさ、およめさん同士らしいよ」

 

「およめさん……? 私が?」

 

「そうだよ〜! これから私達とたまごおねーさんは一緒になるんだって! けっこん、っていうらしいよ」

 

「けっこん……いっしょになる……?」

 

「とりあえずこっちおいでよ〜。たまごおねーさんのことだっこしてあげるから!」

 

「だっこ……えへへ、わかった」ちょうど器がかたむき、たまごは落ちる。

 

 白いご飯の上に、たまごはとろぉぉん、と着地する。

 

 はくまいは湯気がたっていることからわかるようにとても暖かかった。

 

「すごぉい……ぽかぽかだょお♥」たまごはほわぁ、と緩みかけてしまう。

 

「たまごおねーさん、ふわふわだね〜♥ くっつくだけでこんなにやわらかい〜♥」はくまいもほわほわとゆるませる。

 

 なまたまごとはくまいはほわほわくっつきながら少しぼんやりした。

 

「そろそろ、けっこんしよっかぁ〜」しばらくしてからはくまいは話す。

 

「う、うん。けっこんってなにをするの?」

 

「うんとね、たまごおねーさんの中にいれさせてもらうね〜♥♥ それもぱんぱんになるまでいっぱい〜♥」はくまいはとっても嬉しそうに話す。

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